2008-10-04 19:56:48
私は健康にいいことが大嫌いである。健康にいいことは一切したくないので、スポーツ・運動の類はまったくしない。スポーツは嫌いなので、観戦もしない。大競技場なんてパンとサーカスの香りがするではないか。スポーツ観戦は危険だと思う。話は変わるが私が子供の頃は「健康優良児」なんて不気味なものが学校で表彰されたりした。30年くらい前になくなったようだが。高井昌吏・古賀篤『健康優良児とその時代―健康というメディア・イベント』(1680円/青弓社)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books]という本が今年の6月に出ていて、気になっているのだが、財布の中身と本の収納空間が厳しい状況なのでまだ買えない。ああ、ラジオ体操も大嫌いだった。学校に関係することは嫌な思い出が多くなるので、もう思い出すのはやめよう。
健康によさそうなのであまり云いたくないのだが、私は毎日片道40分近く歩いて地下鉄の駅まで行って通勤している。しつこいようだが、健康にいいから歩いているのではない。バスが怖いからだ。バスに乗ると結構楽に通勤できるらしい。でも、私はバスが怖いのだ。本が読めないから嫌いだというのもあるが、それ以上にバスは怖い。どこか知らないところに連れて行かれてしまうのではないかという恐怖を抱いてしまうから。夜に乗ったバスの乗客が一人だったら、ほぼ間違いなくそのバスは妖怪の国か地獄へと直行すると昔から決まっている。その点、鉄道は安心である。線路から外れてどこかへ行くことはない。存在しない駅に止まる列車の話は、まあないわけではないのだが、異界へ走っていくバスに比べれば少ないはずだ。きっと。だから、私は一人でバスには乗れない。
どれくらい怖いものかというと、バスに乗り間違えて25年間迷子になってしまった人がいるくらいなのだ。本当にあったタイの話である。元のニュース記事はすべてリンク切れなので、引用記事を引用しておくが、とにかく、私も言葉の通じないところへ連れて行かれてしまって、25年くらい帰れなくなったら大変なので、バスには極力乗らないようにしているという訳だ。
だから毎日毎日歩く。歩くと靴底がすり減る。今履いている靴は底がすり減ると、ゴムの部分がなくなって固い部分が露出し、かつかつかつと跫音が響くようになる。早朝の人の少ない地下道なんか恥ずかしいくらいである。尤も、ひと頃か〜んか〜んか〜んと駅の階段で鋭い音を響かせていたカスタネット娘(カンカン女ともいう)たちほどではないが。そういえば、もうあのミュールっていう履き物はすたれたのか、消音テープが普及したのかは知らないが、街が静かになってよかった。いやいや、その静かになった地下道で妙にかつかつと音を鳴らして歩いてしまうのが私なのだ。はやく新しい靴を買わなければ。
バスに怖くて乗れないから、はやく靴を買わなければならないという話である。