2009-01-20 23:47:49
Technobahnに「薬指の長い人は経済的に成功する、ケンブリッジ大が研究発表」なんていう記事が出ていたのは、もう一週間前のことだったろうか。ちょっと忘れてしまっていたのだが、思い出して原著論文(Proceedings of the National Academy of Sciences [2009] 106: 623 - 628)をダウンロードしてみたのが今日のことである。どんなに胡散臭い内容だらうと思ったが、読んでみればそれほどでもない。結構、世界的に権威のある学術誌なので、あまりひどいものは載せてもらへないのではないだらうか。
どうやら、生まれる前のアンドロゲンに曝される濃度が高いほど、脳の発達を促す効果があって、なぜか人差し指と薬指の長さの比はアンドロゲンの濃度に強い相関があることが知られているらしい。それで、間接的に指の長さの比と脳の発達との間に相関を見出せるという話のようだ。頭の発達は、どういう理由かはよくわからないが、金融トレーダーの成績(利益)の比較で行っている。
本当に人差し指と薬指の長さの比が、人の能力と相関があったとしても、それで人の能力を予測したり、その予測に基づいて人の採用を決めたりする時代にはなってほしくない。人の能力は本人の能力を直接測って判断してほしいものだ。血液型とか肌の色とかで人の能力を予測するのと同じやうなものだと思う。入学試験だって、指の長さの比で上から採用すればいいことになる。そんなのは嫌だ。試験は思いがけない結果が出ることもあるから、意外な人が入学できたり、意外な人が落ちたりする。そういう意外な運命に左右されるから面白いのではないだろうか。その人が持って生まれた情報のみで判断するなら、生まれてすぐ遺伝子解析でもして、その人の一生の能力を決めてしまえばいいのだ。そうすると生まれたときにもう人生が決まってしまうことになるではないか。つまらない。そんな世の中はつまらない。予測できない意外な番狂わせなんかがあるから面白いのではないか。
ちなみにこれが私の右手である。測定基準が論文を読んでもはっきり解らなかったので、測れないのだが、別に長くも短くもないような気がする。どうでもいいではないか、指の長さなんて。