2009-04-05 16:12:21
イギリスのSF専門店Fantasy Centreが今度の6月で閉店するとLocusが報じている。1971年に開業したらしいので、38年ほどで閉店ということになる。
私がこの書店を知ったのは、多分、奇想天外に掲載されていた「BOOKWORM(大瀧啓裕)」だったと思うが自信はない。あまり高い評価は得ていなかったと思うが、SF、ファンタジイ、怪奇小説など幅広い分野の本が比較的安価に提供されていた(値段の高い稀覯本などは扱っていなかったとも云えるのかも知れない)。イギリスの怪奇小説などはこの書店でほとんど買っていた。Ash-Tree Pressの本もずっとここから買っていた。この書店を知らなかったら、私の英語の蔵書の中身はずいぶん変わっていただろうと思う。
大学院を出て、テキサスに二年間いたのだが、その間にカタログが来なくなってしまった。最初は来ていたのだけど、来なくなった理由は判らない。それから日本に戻るときに、わざわざロンドン経由にして、Fantasy Centreを探して行ってみた(それがロンドンに行った目的ではないのだけど)。近くまで行っても場所が判らず近くの人に訊いて教えてもらった。今ではGoogleで簡単に確認できる。
何か探しているのかと声を掛けられたので、ブレイロックの本が欲しいのだと答えると、そこにあるよと教えてくれたがそれは全部持っていたので、The Magic Spectaclesを探していると云ったら、それだけはないんだと云われたことを覚えている。この本は後にオンライン書店で手に入れた。
日本にいたときはカタログをお願いしていたのだけど、テキサスにいる間に来なくなってしまったと云って、日本にまたカタログを送ってもらうように頼んで帰国した。その数年はまたFantasy Centreから本を買うようになった。Ash-Tree Pressの本を買ったのは、この後の数年間である。1994年から始まった出版社だから。この頃、怪奇小説アンソロジーを作っていた西崎憲氏から電話がかかってきて、今度のFantasy Centreのカタログに載っている××買う? なんて訊かれたりしたこともあった。イギリスからの航空便は福岡は東京よりも一日遅く届くので、まだ来ていないと悔しい思いをすることもあった。
やがてインターネットが普及すると私はほとんどの本をオンライン書店から買うようになってしまった。あんなに大好きだったFantasy Centreのカタログを心待ちにすることもなくなっていった。そのうちに、Fantasy Centreもオンライン註文ができるようになったのだけど、世界中の古書店の在庫を検索して註文できる状況でFantasy Centreから買う特別の理由がなくなっていつしか疎遠になってしまっていた。
Amazon.comがなくても私の人生はそんなに大きく変わっていなかっただろうと思うのだが(生活は変わっていたと思うけど)、Fantasy Centreがなかったら人生が大きく変わっていたのではないかという気はするのである。