2009-06-09 18:02:26
Journal of Molecular Cell Biologyに、Generation of Pig-Induced Pluripotent Stem Cells with a Drug-Inducible Systemという論文が発表された。今回も最初に読んだのはtechnobahnの「移植用臓器確保で画期的手法、ブタを使ってヒトの臓器を大量生産」という記事である。前から豚は人に体の大きさが近いので、内臓の大きさも近く、移植用にちょうどいいという話はあった。もちろん、そのまま人の体に入れたりしたら免疫系が異物として排除しようする。この論文では拒絶反応が出ないであろう幹細胞を作り出せたということで、移植用の豚ができたわけではなさそうだ。難しいことは判らないのだが、これは誰にでも使えるんだろうか。それとも、自分用の豚を用意しておいた方がいいんだろうか。そうなると金持ちだけが自分の免疫系に最適化された豚を臓器の予備として常に用意しておけるなんてことになりそうだ。病気のときでなく、歳を取って内臓が弱ってきたら、交換できるということになるだろうか。何れそうなるとは思う。そこで、経済力の差が出てくるとは思うけれども。
豚の内臓でどんどん体の臓器を置き換えていったという設定の小説を読んだことがある。小林泰三「パッチワーク・ガール」(『人獣細工』[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books]所収)である。技術的にはそういうことが可能な時代が近づいてきたということなのだろう。
豚の内臓で自分の体の臓器を置き換えることに、どれくらいの人が抵抗を感じるだろうか。私は全然気にならない。それで健康が恢復できるのならば。遺伝組み換えに抵抗感を持つ人はやはり駄目なんだろう。穀物を食べるだけでも不健康だと思っているのだから、遺伝子組み換え豚の内臓を自分の体内に入れるなんて! 私は適切に開発された遺伝子組み換え作物ならば抵抗なく食べられるし、遺伝子組み換え豚だって食べてもいい。もちろん、きちんと検証せずに放り込まれたりしたら嫌だが、ある程度の確実性をもって使えると判っているなら、移植せずに来年死ぬよりも移植して10年生きる方を選ぶ。いや、5年でも3年でも。全身豚由来の体になっても頭が私なら私は私だ。
でも、これで違法な臓器売買がなくなれば素晴らしいことではないか。大金持ちが自分の臓器の予備としてクローンを作って育てたりする心配もなくなるだろうし。