2009-06-17 08:03:43
中島義道の読み過ぎというわけではないが、駅がうるさくてかなわないと思う。朝の丸ノ内線に乗ろうとすると、駅員が叫んでいる。「次は×時×分発荻窪行きで〜す。発車までご乗車になってお待ちくださ〜い。駆け込み乗車はたいへん危険ですからご遠慮くださ〜い。丸の内線では×月からワンマン運転を行っておりま〜す。発車サイン音が鳴り終わりましたらドアが閉まりますのでご注意くださ〜い。」とまあこんなことを延々と繰り返している。本当に発車が近づくと一際大きな声で叫ぶ。気が散って本が読めない。しかも車内では別の女性の声のテープが同じようなことを云っている。
「発車までご乗車になってお待ちください」とは他の鉄道でもよく聞くのだが、そんなに外で待っている人で迷惑しているのだろうか。私の見ている限りではみんな乗車して待っている。わざわざ云う理由が判らない。大勢がホームで待っていて、発車の合図と同時に車内に飛び込んで危険な状況になるというのなら判るが、私は見たことがない。昔はよく扉のそばで待っていて、発車間際に乗り込んで扉近くの場所を確保しようとする人がいたものだが、時間によってはそういう人が多かったりするのだろうか。
発車の5分も前から「駆け込み乗車はたいへん危険ですからご遠慮ください」と叫んでいるが、駆け込んでいる人なんか誰もいない。駆け込もうというのはこのあとホームにやってくる人たちである。どうして車内で待っている人や次の電車を並んで待っている人にそんなことを繰り返し聞かせるのだろうか。
「ワンマン運転を行っております」のあとに必ず「発車サイン音が鳴り終わりましたらドアが閉まりますのでご注意ください」というのだけど、ワンマン運転になる前から発車サイン音が鳴り終わったらドアが閉まっていたはずだ。それに「発車サイン音が鳴り終わったらドアが閉まる」なんてことは誰でも知っているのではないだろうか。どうしてそんなことを毎日毎日いうのだろう。とにかくうるさくするためだけに叫んでいるとしか思えない。さっきも書いたが、車内でもホームでも録音テープが同じことを何度か放送されるのだ。その間を埋めるように叫び続ける意味がどこにあるのだ。
東武東上線でも「エレベータ設置工事のためたいへん通りにくくなっておりますので、ご注意ください」と係員がひとり立って拡声器で繰り返していたのだが、確かに階段の下が狭くなっているものの、気づかずにその工事中のエレベータに次々に利用客が激突してたいへんなことになる気配があるわけでもない。そんな係員がたまたまいないときでも、誰も問題なく通っていくのだ。何の意味があるというのだ。
発車間際までホームで待っていて、発車サイン音がなってからドアが閉まるまでの間に、駆け込み乗車をしてみようかと思ってしまうくらい毎朝うるさい。
iPod でも買って音楽を聴きなさいと云われそうだが、私は古い人間なので怖くてできないのだ。危ないじゃないか、外の音が聞こえないなんて。後ろから刃物を持った男がわけのわからないことを叫びながら次々に人を刺しながら走ってきたとしても、それが聞こえないかも知れないのだ。列車事故の放送とか、あるいは猛毒ガスが発生したから避難するようにと警告があっても逃げられないではないか。私は常に周囲の音が聞こえていないと嫌なのだ。
だが、いちど気になると不愉快な放送が頭の中に侵入してきて気になって仕方がなくなり、本が読めなくなる。みんな、あれが気にならないのだろうか。みんな本が読めるのか。私のように我慢しているのだろうか。それとも、音楽を聴きながら本を読んでいるのか。本が読めないと私は死んでしまうのだ。本当は死なないけど。