2009-07-08 00:08:34
蝙蝠は「コウモリ」と読む。ほとんどの人は読めるだろうけど、念のため。蝙蝠人間になるといっても、満月の夜に変身して夜空を飛んだりできる話ではない。
蝙蝠は目がほとんど見えないが、超音波を発して、その反射を聴き取り、障害物を察知して暗闇の中でも自由に飛び回れる。人間もそんなことができればいいのにと思ったことはないだろうか。私は暗闇に目が慣れるのに普通の人より時間がかかるようで、昔、現像室に仕事の都合で入ったときには苦労した覚えがある。みんな自由に動き回れるのに、私は闇の中に取り残されてしばらく何もできないのである。蝙蝠のように、音で周囲の障害物を感知できればどんなにいいことかと思ったものである。
それが、人間でもできるらしいのだ。
ナショナルジオグラフィック ニュースに「反響定位、人間でも訓練で可能に」という記事が載っていた。舌打ち音が最も効果的な音だという。その音を使って、数日訓練するだけで、基本的な蝙蝠人間になれるらしい。
暗闇でも書棚にぶつからずに歩けるのだ。そうはいっても、暗闇で書名は読めない。いや、そんなことはいいのだ。書名など読む必要はない。どの棚のどの位置に何の本を置いたかは覚えればいいのである。『薔薇の名前』のホルヘを見よ、『新しい太陽の書』のウルタン師を見よ。本の位置と本の内容を覚えていれば、あとは舌打ち音を響かせながら書棚の位置を音で察知すればいいだけである。それが正しい図書館長の姿になる日はそう遠くはないだろう。