2009-08-24 08:35:46
『書物の敵』という本があって、ヴィクトリア朝時代のイギリスの話なので現代日本とはずいぶん状況が異なるのだが、書物の敵として、「火、水、ガスと熱気、埃、紙魚、害獣と害虫」といった自然要因に加えて、「無知、製本屋、蒐集家、召使いと子供」といった人間の要因も記している。今の日本で部屋を探すときにどういうことを考えたらいいだろうか。
火の心配は本があってもなくても注意しなければならないからあまり追求することもないと思う。ガスと熱気というのは本が手元にないから具体的に何を指しているのかよく判らない。やはり日本では「水」だろうか。水といっても漏水事故などは火と同様に蔵書とは関係なく注意することだ。本に関係あるのは湿気だろうか。湿気と埃の組合せで黴が発生する。本をたくさんお持ちの方はご存じだろうが、結露しやすい窓のそばの書棚の片隅で何年も埃を被っていた本は、ふと気がつくと大変なことになっていたりする。
かといって、日当たりよくしてやればいいかというと、今度は本が日に焼けてしまう。カバーの背の色は抜け、紙は茶色になってしまう。直射日光に当てずに風通しよくしなければならない。これが難しい。
一般的に住居は南側が好まれる。前に高層建築物が建っていなくて、日当たりがいいことが好条件として強調される。
神田の書店街を見ると、靖国通りの南側に古書店が並び、店を北に向かって開けている。本を置く部屋は北向きがいいのだ。部屋探しも北向きを探したいところだが、一人で住んでいるわけでもないので、それは難しい。書棚の前に遮光カーテンを掛けるとか、資金に余裕があれば扉付きの棚にしてもいい。
ただ扉やカーテンをつけると、本の背が見えなくなる。本当は本の姿を眺めながら暮らしたい。本の背を眺めるのは単に楽しみだけでなく、本の所在を確認するという効果もある。長年眺めているとどの本がどの棚にあるのか自然に頭に入ってくる。だから、蔵書データベースを作ったりしなくても、本の所在はすべて頭の中に入っているというわけだ。ところが、眺められないと、特に箱に詰めてしまったりするともう全く判らなくなる。それでも記憶できる人もいるのかも知れないが、私は無理だ。
直射日光が当たらないけれども、湿気のたまらない部屋が理想である。年中空調管理で一定環境を保つという手もあるが、それもまた資金面でなかなか難しい。何もかも難しい。