2009-12-15 23:17:35
蝋燭の炎の光で読む本の楽しみは格別であると書いてあった本が何だったのか思い出せない。ジェイムズ・P・ブレイロックだったか。誰もが書いていそうなことだから、探せばいろんな人が書いているような気もする。誰が書いたかはどうでもいいが、真夏の午後二時の直射日光で読むよりも、秋の黄昏の光とか、冬の蝋燭の光で読むと、エルフランドの光が本の中にきっと見えるに違いない。ただし、目にはあまりよくないような気もする(尤も、暗いところで本を読むと目に悪いというのは何の根拠もない言い伝えに過ぎないという話もこの頃はよく目にする)。
さて、私は目下、エルフランドの光が見えるかどうかということよりももっと現実的な問題に直面している。これから引っ越そうとしているマンションの壁面の照明は前の持ち主が全部持っていってしまったのだ。その人が取り付けたのなら、別に持っていってしまっても契約上は全然問題ない。天井の照明は、電球はほとんど切れてしまっているものの、概ね残ってゐる。
電球の切れた照明を暗くなっていく部屋で見つめていたとき、電球を取り付けてもあまり明るくない部屋のような気がしてきた。もちろん、明るければいいというものでもない。少し照明器具を買ったほうがいいだろうか。そう思ってカタログを眺めてみると、照明器具は意外に高い。特に壁面に取り付けるものは、高い。いろいろ出費の多く、照明を買う資金が足りない。どうしよう。暗闇で食事をするのか。書斎で食事をしなければならないのか。それでは新しい住まいに引っ越す意味がないのではないか。しかし、資金が湧いてくるわけでもない。
カーテンもない窓から暮れ行く黄昏の光を眺めていたときに、蝋燭の光で食事をすればいいのだと思いついた。何万円もする照明器具を買わなくてすむ。電気代もかからない(蝋燭代はかかるけど)。そうだ、蝋燭だ! 蝋燭の光はそんなに明るくないのは仕方がない。金がないのだから。
蝋燭の光を灯すには蝋燭と燭台が要る。いきなり食卓に蝋燭を立てるわけにはいかないから。燭台だ。そんなものを買ったことはなかったのだが、世の中便利になったもので、インターネットで検索すればいくらでも見つかるのだ。高級な銀の燭台なんかかって盗まれても不愉快だから(今どきそんな奴はいないか)、銀メッキか真鍮かそんなところだろう。あまり高く聳え立つのも恥ずかしいので、真鍮小物・雑貨のAlivioというところで、キャンドルホルダー3灯リリーを一つと、キャンドルホルダー1灯リリーを二つ註文してみた。蝋燭のことはよく判らなかったので、とりあえず一緒に5本買った。あとで気付いたのだが、5本では一度載せたら使い切ってしまう。50本くらい買っておけばよかった。
合計で約9千円。その金で安い照明器具を一つ買った方が良かったのではないかと思ってしまったのだが、いやいや、9千円で買える壁面照明器具は風呂の壁につけるようなものしかないからこれでいいのだ。