2008-09-11 22:00:12
家庭の事情で二年半ほど朝晩の食事と娘の弁当を作らなくてはならなくなった時期があった。今はもう毎日の食事の準備を免れてゐるが、最初は料理などほどんとしたことがなかったので、どうしようかと思った。そんなに悩んだ訳でもないけれども、ちょっと戸惑った。自分だけならどうとでもなると思ったが、中学生の娘がゐたから、あまりひどい食事を続けるわけにもいかない。魚が嫌ひだといふことと、仕事から帰ってきてから食事を作る時間がほとんどないといふことから、肉を煮込むことにした。翌日の夕食を前の日の夜に作るのである。
よく作ったのが牛頬肉の赤ワイン煮。料理をほとんどしたことのない者でも、長時間煮込んでゐればそれなりのものができあがるので安心なのだが、どうも納得できる味でなかった。その後、毎日の食事を作らなくていいやうになってもときどき作ってゐて、やうやく思ふやうな味になった。何か酸っぱいやうな味が混ざってくるのがやうやくなくなったのである。
牛頬肉を300グラムくらゐ適当な大きさに切って、鍋に入れて表面を焼く。小麦粉を付けるとかいふ人もゐるけれども、付けても付けなくてもあまり変はらなかったやうな気がする。私はこの頃バターで焼いてゐる。表面が焼けたら、肉が浸るくらゐ赤ワインを注ぎ込む。そして1時間ほど弱火で煮る。暇だったらあくを取ったりしてもいい。一時間を過ぎると水分が減ってゐると思ふので、水を足して、ローリエの葉などの香草を入れる。私はお茶用の袋にローリエ、ローズマリー、タイム、キャラウェイなどそのときの気分で入れて鍋に投入してゐる。4つくらゐに切った玉葱、適当に切ったトマト(その日の都合で缶詰の場合もある)、そして固形スープの素(料理には疎いので微妙な味の調整などそもそもできないから、これでいいのだ)を入れて5時間くらゐ煮続ける。分量はすべてそのときの気分。秤量してゐないから、記せないのだ。大蒜やセロリとか人参とか入れてみたこともあるけれども、面倒くさくなって肉と玉葱とトマトだけになった。前と何が違ふのかといふと、最初の一時間は肉だけ煮るといふところである。最初は全部一緒に投入してゐた。何と何の組合はせがいけないのかは調べてゐないのだけど、かういふ順に入れれば、少なくとも私の口に合ふ味にはなる。これを参考にして失敗しても私は責任をとれないので、あまり信用しないやうにお願ひする。
写真はない。かういふ調理法を記したページでは得意げに写真を掲載するのが常だが、私には恥づかしくてそんなことはできない。代りにブリューゲルの「農夫の婚礼」でも載せておかう。牛頬肉は食べてゐないやうだけど。
あ、いつもの癖で歴史的仮名遣ひで書いてしまった。直すのが大変だから、このまま載せてしまはう。