八月三一日(金)


 『独逸怪奇小説集成』bk1から届く。外見も美しく、目次も魅惑的である。勿体ないので少しづつ読むことにしよう。しかし、さう思って少しづつ読まうとして結局読まなくなってしまったことが何度もあるので、気を附けねば。

 歴史的仮名遣ひで書くことにして一ヶ月。悪い評判は聞かない(特によい評判も聞かないが)ので、今後もこのままの仮名遣ひで書くことにする。


八月三〇日(木)


 SFマガジンのファンタジイ評を書いて七年くらゐになるが、私の担当も今年で終はりになりさうだ。ほっとすると同時に少々寂しいやうな。中学生の頃から買ってゐたSFマガジンはやはり私にとって特別な存在だから。


八月二七日〜二九日(月〜水)


 マイケル・マーシャル・スミス『オンリー・フォワード』を読み終へる。悪夢と現実の交錯するディック的雰囲気を漂はせる作品で実に楽しかったのだが、結末は何だか呆気なく物足りないやうな気がする。


八月二六日(日)


 ダウランドの「流れよ我が涙」を聴きながらSFマガジン十一月号のファンタジイ評の原稿を書いて送信。うっかり歴史的仮名遣ひで書いてしまひさうになる。

 東京創元社からロバート・ルイス・スティーヴンスン『ジキル博士とハイド氏』(夏来健次訳/四〇〇円/創元推理文庫)が届く。「ジキル&ハイド」とかいふミュージカルが上演されるらしいので、それに合はせての刊行なのだらう。

 原稿を送信したので少し休息。曇天であまり暑くないので食虫植物の植ゑ変へなどしてみる。その後、マイケル・マーシャル・スミス『オンリー・フォワード』を読めるところまで読んで就寝。面白いので最後まで読まうと思ったのだが、眠くなってしまった。


八月二五日(土)


 SFマガジン十月号が届く。

 エミリー・ロッダ『ローワンと魔法の地図』『ローワンと黄金の谷の謎』を読む。すらすら読める子供の本。前者の方は不思議な地図に導かれて村を救ふために川の水源を目指す旅と冒険を描いた作品。後者は実に説教臭い話に仕上がってゐて愉しめない。

 このところ沈んだ日々が続いてゐるので、ダウランドばかり聴いてゐる。聴いてゐないときでも、頭の中で「流れよ我が涙」が絶えず流れてゐる状態である。気分の晴れることはないものか。


八月二一〜二四日(火〜金)


 気がつくと四日が経過してゐた。別に夏季休暇を取ってゐた訳ではなく、休みを取る暇もないほど忙しかったといふか疲れてゐたといふか。疲れながらも、カマ・カマンダ『漆黒の王子 アフリカの吟遊詩人=グリオ36の物語』を読み終へ、次にO・R・メリング『夏の王』を読む。『妖精王の月』の後日譚といふやうな話。前作よりも暗く苦しい話だが何か軽い。

 bk1に本を註文。
『独逸怪奇小説集成』(前川道介訳/四八〇〇円/国書刊行会)
マイケル・マーシャル・スミス『オンリー・フォワード』(嶋田洋一訳/二〇〇〇円/ソニー・マガジンズ)
小田光雄『図書館逍遥』(編書房/一九〇〇円)
以上三冊。このところ本を買ひすぎたやうなので、少々控へ目。

 MacOS 9.2.1が出てゐたので、早速インストール。何が変ったのか全く解らない。それでもインストールしないと気が済まないのである。


八月二〇日(月)


 カマ・カマンダ『漆黒の王子 アフリカの吟遊詩人=グリオ36の物語』を読みながら出勤。面白いのだが、意外に捗らない。

 世の中には歴史的仮名遣ひ専用の仮名漢字変換ソフトがあることを知る。その名も「契沖」。しかし、マッキントッシュでは使へないのであった。

 颱風の接近を恐れてゐたが、進路が東よりになって九州北部は殆ど影響がなささう。しかし、今度は埼玉の実家の本が心配に。


八月十九日(日)


 日曜なのに午後から出勤してしまひ、帰りに紀伊國屋書店で本を購入。幻想文学六十一号(アトリエOCTA /一五〇〇円)と小鷹信光『翻訳という仕事』(ちくま文庫/七四〇円)の二冊。前者は百物語の特集。旧仮名遣ひの文章が沢山あって嬉しくなる。


八月十八日(土)


 十七日は省略。今日は娘のヴァイオリンのコンクールなので、午前中はそれを聴きに出かける。駅を降りて二キロ歩いて会場へ。私はバスが嫌ひだから歩いてしまふのである。コンクールといっても小さな町の小さなコンクールなので、数百人も入るホールに数十人しか人がゐないといふ実に閑散とした雰囲気で行はれる。私の娘はバッハを弾くが、他の演奏は私が好きでもなんでもないヴァイオリン曲ばかり。娘の番が終はるとさっさとまた二キロ歩いて帰ってくる。ダウランドを聴いて耳を洗ひ流す。このところバッハではなくダウランドを聴いてゐるのだった。

 午後からは本を読む。まづは、テリー・グッドカインド『魔道士の掟1 探究者の誓い』。これも大河ファンタジイを分冊形式で毎月刊行するハヤカワ文庫FT。本国での第一巻を五分冊で刊行。期待せずに読み始めるとこれが意外に読みやすい。話がちゃんと進んで行くのである。意外な展開はないが、冗長な会話にうんざりすることもない。続けてロバート・ジョーダン『竜王戴冠4 青アジャの砦』を読む。こちらは予想通りの展開といふか何がどう展開してゐるのかよく解らなくなってしまったといふか。さらに、ジョン・ベレアーズ『闇にひそむ影』を読む。子供向けなのであっさり読み終わってしまふものの、子供らしい恐怖と緊迫感に満ちてゐて楽しい。只、結末の謎の男の正体には些かがっかり。


八月十五・十六日(水・木)


 bk1からG・ガルシア=マルケス『百年の孤独』が届く。

 このところ通勤時間に読んでゐるCharlaine Harris Dead Until Darkはなかなか面白いのだが、そろそろ日本語の本を片づけなければならない時期に。明日からグッドカインドあたりから読み始めようか。


八月十一〜十四日


 忙しくて日記の更新ができなかった。もういつなにがあったのか思ひ出せないので、まとめて記すことに。

 早川書房からロバート・ジョーダン『竜王戴冠4 青アジャの砦』(斉藤伯好訳/六二〇円/ハヤカワ文庫FT)とテリー・グッドカインド『魔道士の掟1 探究者の誓い』(佐田千織訳/六六〇円/ハヤカワ文庫FT)が届く。分冊形式の大河ファンタジイ第二弾が愈々刊行開始となった。百けんばかり読んでゐる場合ではない。

 YahooのADSLに申し込んでしまった。「電話番号が変るなら申し込まない」といふ項目を選んでゐるので、もしかしたら取り消しになるかもしれないが。


八月十日(金)


 bk1から本が届いた。
 『幸田文全集〈第一巻〉父・こんなこと』と、カマ・カマンダ『漆黒の王子 アフリカの吟遊詩人=グリオ36の物語』である。先月註文した本。『幸田文』の方は、旧仮名だが、一部新仮名も。時代的に仮名遣ひの移行期だからさうなるのは当然であらう。この全集はほぼ発表年代順に収録されてゐるので、後の巻ほど新仮名になるに違ひない。だから、二巻以降を買ふかどうかは解らない。


八月九日(木)


 Encyclopaedia Britannicaのインストール用CDを見つけ、職場のPowerMac 9500にインストールする。PowerBook G3の方には、Mac OS X用のNetscape 6.1がやっと出たのインストールする。メニュー項目も各国語用補助ファイルのやうなものをダウンロードすると、いろいろと変更できる。私は早速ドイツ語版に。すると設定項目などがさっぱり理解できなくなった。Internet Explorerとは違ひ、ドイツ語表示でもブックマークなどの日本語が文字化けしないのが嬉しい。しかし、銀行などの利用がほとんど出来ず、これでは困る。


八月八日(水)


 出勤したものの朝から腹が痛い。一日気分が悪く、いつもより早く帰宅するとSF情報誌Locus八月号が届いてゐた。また買いたくなるやうな本の紹介が載ってゐる。

 1999年版Encyclopaedia Britannicaを職場においてあるPowerMac 9500にインストールしようとしたら、インストール用CDが見つからない。なんといふことだ。


八月七日(火)


 Charlaine Harris Dead Until Darkを手に取って出勤。久しぶりに読む英語の本のやうな気がする。

 帰宅して風呂に入ってから夕食を前に寛いでゐたら、宅配便が。bk1から本が届いた。
 小包みに入ってゐたのは、O・R・メリング『夏の王』、リチャード・ゴードン・スミス『ゴードン・スミスの日本怪談集』、スティーヴン・バクスター『マンモス 反逆のシルヴァーヘア』、ウィリアム・モリス『アイスランドへの旅』、金井美恵子『ノミ、サーカスへゆく』、野々山真輝帆編『ラテンアメリカ短編集』、エミリー・ロッダ『ローワンと魔法の地図』『ローワンと黄金の谷の謎』である。読まなければならない本、読みたい本がまた増えてしまった。


八月六日(月)


 相変はらず百けんなど読んでゐて、新刊書が全然読めない。仮名漢字変換の旧仮名辞書は少しづつ充実してきてゐるものの、ハ行四段動詞の未然形の活用がなかなかうまく変換されないのが、文章を打ってゐて苛々させられる。旧仮名しか打てない仮名漢字変換ソフトがあったら私は絶対に買ふが、恐らく日本で千個くらゐしか売れないだらうから、絶対に商品にはなるまい。


八月五日(日)


 娘と一緒に映画を観に行く。A. I.である。一部どうも納得できない話の展開や理屈もあるが、涙を誘ふ場面の多い、暗く悲しい映画であった。娘にはよく解らない部分があるやうだが、悲しい場面では涙を流してゐた。帰宅してから、一緒に行かなかった妻に映画の内容を解説してゐたら、再び娘は涙を流し、どうしてお父さんは平気で笑ってゐられるのかと責められた。粗筋紹介をしながら涙を流してどうする。私の粗筋紹介を聞いて妻も涙ぐんでゐる。粗筋紹介の腕が上がってきたのかも。私の書く原稿の八割は粗筋紹介だから、何年も続けてきて少しは上達したのだらうか。それとも、妻がただ涙脆い奴だといふだけか。


八月四日(土)


 恩田陸『ドミノ』(角川書店/一四〇〇円)を読む。面白く、一気に最後まで読んでしまふ。

 bk1から『柳田国男全集2 遠野物語 時代ト農政 山島民譚集』が届く。手に取ってぱらぱらと頁を捲ったりしてみる。歴史的仮名遣ひなのでほっとする。しかし、これを読むことはないのではなからうかと思ったりするのであった。

 読む本を買はうと思ひ、bk1に本を註文。

O・R・メリング『夏の王』(井辻朱美訳/一五〇〇円/講談社)
リチャード・ゴードン・スミス『ゴードン・スミスの日本怪談集』(荒俣宏編訳/一九〇〇円/角川書店)
スティーヴン・バクスター『マンモス 反逆のシルヴァーヘア』(中村融訳/二四〇〇円/早川書房)
ウィリアム・モリス『アイスランドへの旅』(大塚光子訳/二四〇〇円/晶文社)
金井美恵子『ノミ、サーカスへゆく』(二〇〇〇円/角川春樹事務所)
野々山真輝帆編『ラテンアメリカ短編集』(日比野和幸ほか訳/二二〇〇円/彩流社)
G・ガルシア=マルケス『百年の孤独』(鼓直訳/二八〇〇円/新潮社)
エミリー・ロッダ『ローワンと魔法の地図』(さくまゆみこ訳/一三〇〇円/あすなろ書房)
エミリー・ロッダ『ローワンと黄金の谷の謎』(さくまゆみこ訳/一三〇〇円/あすなろ書房)
パミラ・リンド・トラヴァース『とびらをあけるメアリー・ポピンズ』(林容吉訳/五五〇円/岩波書店)
パミラ・リンド・トラヴァース『公園のメアリー・ポピンズ』(林容吉訳/五五〇円/岩波書店)

以上、消費税を含めて19844円。買ひ過ぎたか。最後の二冊は岩波書店のホームページで検索しても出てこないので恐らく購入できないであらう。と解ってはゐるものの、娘に続きを註文してくれと云はれるので一応註文してみせるといふ訳だ。


八月三日(金)


 『百?全集』を撫でたり擦ったりしながら、一日を過ごす(嘘)。


八月二日(木)


 今井書店から『内田百?全集』が届く。かなり大きな荷物である。昭和四八年頃、講談社から全十巻で刊行されたもの。それから十五年くらゐ後に福武書店から全二十巻の全集が刊行されてゐるが、こちらは古書店での価格が十万円前後で、私にはちょっと買へない。私にはこちらの全十巻で十分である。今回届いたのは値段が安いにも関わらず、なかなか綺麗で汚れは殆どない。頁を開いても、前の一度読んだ本ではないやうに見受けられる。これから、毎日少しづつ読むことにしよう。

 もう一つ小さな小包みがAmazon.co.jpから届く。

Meredith Ann Pierce Treasure at the Heart of the Tanglewood (¥1,991, Viking Children's Books)
Ray Vukcevich Meet Me in the Moon Room (¥1,883, Small Beer Press)
Kelly Link Stranger Things Happen (¥1,883, Small Beer Press)
Hugh Nissenson The Song of the Earth (¥2,781, Algonquin Books of Chapel Hill)
Charlaine Harris Dead Until Dark (¥705, Ace Books)

以上五冊。どれも面白さうだが、『百?全集』と一緒に届くと印象が薄くなってしまふのは止むを得まい。


八月一日(水)


 今日から歴史的仮名遣ひで書くといふことにしてゐたのだが、実はまだ少し迷ってゐる。歴史的仮名遣ひは極めて個人的な私信にのみ用ゐたいやうな気持ちがある。理由はうまく説明できないのだが。でも、一度はすると書いたので、試しに少なくとも一週間はこれで書いてみよう。

 これを機会にEGBRIDGE用旧仮名ユーザ辞書を充実させようと思ったが、作業は一向に進まない。


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