5月31日(月)

 26日に「旧型マックに対する情熱は最早消えている」と書いておきながら、品切れと云われると買いたくなってしまうのが私の悪いところだ。紀伊國屋書店
『Macintosh改造テクニック』(ナツメ社/2000円)
『Mycomムック はぐれMac fan改造派』(毎日コミュニケ−ションズ/値段忘れた)
を註文してしまったのだ。やれやれ。

 昨日の運動会で直射日光に当たった腕がすっかり赤黒くなっている。まるで海にでも行ったかのようだ。職場では、「おや、どうしたんですか?!」と皆に訊かれる。「実は娘の運動会で」と答えると納得してくれる。何だか、陽の光の下で明るく健康的にスポーツをしたかのようで嫌な感じである。私は暗い部屋の中でじっと不健康に生きていくのが好きなのに。

 献血をする。これまでも血液検査代わりにと年に一回くらい献血をしていたのだが、実は今日健康診断があって、35歳以上になると健康診断で血液検査をしてくれるということを知った。献血をするからいいやと思って今回の血液検査は断ったのだが、後で後悔することとなった。血が出るのが遅いのである。早い人は五分くらいで済ませてさっさと献血車を出ていくのだが、私は今日はいつにも増して遅く20分くらいかかっただろうか。ああ、本を持ってくればよかった、という気持ちを抑えることが出来ない。でも、本を読みながら献血している奴なんか見たことないので些か恥ずかしいのではあるが。

 帰宅すると「季刊・本とコンピュータ」からアンケート原稿の校正ゲラがファックスで届いていた。アンケートの文章の校正は初めてだ。随分、丁寧に作っているところなのだろう。血を抜いて疲れているので、自分の文章を読みかえす元気はなく、今日はもう寝ることにする。


5月30日(日)

 前に私が持っているAdobe Acrobat 4.0(英語版)では日本語の文字列の検索ができないと記したが、日本語版ではどうなのだろうか。そのために日本語版を買う余裕はないのだが、MacOS 8.6の検索機能で日本語が検索できることが解った。自分の検索したいpdf形式のファイルの入ったフォルダを選択して、先ず索引を作製する。そうすれば、日本語でも簡単に検索できるという訳だ。8.6にした甲斐があったというものだ(恐らく8.5以前ではpdfの中身から索引をつくることは出来ない)。しかし、縦書きにしたファイルの文字列は認識してくれないのだった。がっかり。

 今日は娘の学校の運動会である。私が小学生の頃は頼むから来ないでくれと親に云ったものだが、娘は是非来てくれと云うので仕方なく出かける。この頃、視力が衰えてきており、自分の娘の姿を識別するのが困難になってきている。何しろ学校には似たような小さな奴らがいっぱいいるのだ。甲高い声を上げて走り回る(競技のことではなく、そこらを走り回る奴らのことだ)子供たちは見ていて楽しいものではない。もっと不愉快なのがビデオカメラを持って走り回る親たちだ。でも、私もあまり偉そうなことは云えない。妻もビデオカメラを持って娘を撮影していたのだから。
 自分の子供が出ていない時に、他所の子を見ていても面白くも何ともないので当然本を読む。私が本を持っていくと妻は嫌な顔をするが、本を持って行かなかったら一体何をすればいいというのか。それに、仮令、読まないとしても本を持っていないと私は不安で仕方がないのである。珍しく直射日光に当たってぐったりしてきたので、木陰に入ってジョナサン・キャロルの本を読む。ところが、忽ち眠気が襲ってきて殆ど読めない。結局、四頁しか読めなかった。やれやれ、一体何しに行ったんだか、と思ったが、別に本を読みに行ったのではなかったことを思い出した。


5月29日(土)

 Amazon.com Booksに本を註文する。リサ・ゴールドスタインのDARK CITIES UNDERGROUND (Tor Books, June 1999)のみ。$13.77(四割引である)と送料$5.95、合わせて$19.72。この頃、少々本を買いすぎているような気がするので、これだけで我慢しておく。

 芽が出てきた朝顔を植え替える。今年からは数を減らして丁寧に世話をすることにした。どうせ沢山蒔いても猫に荒らされるに決まっているからだ。今年は茶色の曜白の新種があるのが楽しみ。

 久し振りに翻訳をやろうと思って机に向かったが、突然激しい眠気に襲われる。必死で目を覚まそうとするが、一分も続かない。床に倒れて寝る。十分ほど眠ってから、寝室まで這って行き、寝る。結局夕方まで寝てしまう。でも、明日は早起きできそうだ。


5月28日(金)

 図書館流通センターに本を註文。
ウンベルト・エーコ『前日島』(藤村昌昭訳/文藝春秋/2286円)
藤井慶『猫たちの夜』(文芸社/1200円)
『書物の王国 18 妖怪』(国書刊行会/2500円)
ペーター・クリステン・アスビョルンセン&ヨーレン・モー『ノルウェーの民話』(米原まり子訳/青土社/2600円)
パトリック・シャモワゾー『クレオールの民話』(吉田加南子訳/青土社/2200円)
以上五冊。
『国語に関する世論調査 平成10年度』や岩崎書店の『恐怖と怪奇名作集7〜10』も欲しかったのだが、今回はやめておく。

 国書刊行会の<魔法の本棚>が本当に完結するらしい。

 ユーロが安くなっている。が、私はまだユーロで本を買ったことはないので、関係ない。ということで、ユーロで本を買った人の情報を募集中です。1米ドル120円はまあ仕方がないとしても、1英ポンドが195円はちょっと辛い。もちろん、私が始めてイギリスから本を買った頃はこの倍以上したので、それに比べればずっといいのだが。


5月27日(木)

 特に何事もない一日。嫌なことのいろいろあった五月も終りに近付き、私の心にも少し平安が戻ってきたようだ。朝も四時過ぎまでゆっくり寝たので何も出来なかったということもある。そろそろ書店リンク集の方に手を入れねば。


5月26日(水)

『キリンヤガ』を読み終える。素晴らしい。特に「空にふれた少女」は傑作以外の何物でもない。実は私は頑固な爺になることを目指しているので、語り手の行動と言葉は多いに参考になった。これでまた一歩頑固爺に近づけるような気がする。私の文章はかなり頑固爺らしくなっているらしいが、姿がそれに相応しいものになっていないようだ。私の文章しか読んだことのない人に初めて会うときは大抵文章から想像していた容姿よりも××だと云われる。まあ、姿は歳をとれば否が応でも爺らしくなるだろう。

 SFマガジン七月号が届く。

 図書館流通センターから本が届く。サイモン・ウィンチェスター『博士と狂人 世界最高の辞書OEDの誕生秘話』、米田裕編『Doping Mac 「旧型マック」スーパー改良術!!』、塚原誠・柴山幸夫編『Old Mac超蘇生マニュアル』の三冊。『Macintosh改造テクニック』(ナツメ社)は品切れだった。私はかなり熱しやすく冷めやすい性格なので、十日ほど前にSE/30を手に入れた時の旧型マックに対する情熱は最早消えているのだった。ぱらぱらと頁を捲ってみてから書棚に収めてしまう。またいつか役立つ日も来るだろう。やはり何と云ってもウィンチェスター『博士と狂人』が面白そうだ。しかし、読む時間があるだろうか。今日からジョナサン・キャロルのMARRIAGE OF STICKSを読みながら通勤している。『博士と狂人』は、それを読み終えてからになるだろう。


5月25日(火)

 前日は8時半頃に寝、11時半頃起きる。ちょっと早過ぎるようにも思ったが、とりあえずSFマガジンの締切りが今日だから書き終えておこうと机に向かう。この一ヶ月は翻訳ファンタジイが殆どなかったので、ハリイ・タートルダヴ『精霊がいっぱい!(上・下)』(佐田千織訳/各640円/ハヤカワ文庫FT259/260)、平野啓一郎『一月物語』(新潮社/1300円)、清水義範『蛙男』(幻冬社/1600円)の三冊。『一月物語』はちょっと古いから七月号で既に紹介済みかも知れない。そうだとちょっと困る。二時半頃書き終え、送信。その後、机の上を片づけたり、『キリンヤガ』を少し読んだりするともう三時半。一時間半だけ眠ってみようかとも思ったが、寝坊してはいけないので、起きていることにする。五時から食事を摂って出勤。

 タキイ種苗から食虫植物の苗が届く。Dionaea muscipula(所謂ハエジゴクというやつだ)とByblis linifloraである。小学生の頃、熱心に食虫植物を育てたものだが、ここ数年の間に「蝿地獄」を二度入手して育てようとしたが失敗に終わっている。一回目は、アメリカのオンライン食虫植物店から種を購入したとき。種蒔きが八月後半だったので、発芽はしたものの、極めて小さいうちに冬になってしまい、その冬を越せずに枯れてしまった。二回目は、何故か生協のカタログに載っていたので苗を買ったのだが、缶詰めのような容器の中に実に貧弱な苗が入っており、一月ほどで枯れてしまった。小学生の時には結構うまく育ったものだが、どうして大人になってからは育ててやることが出来ないのだろうと悩んだ。情熱が足りないのか。小学生の時投げやりな態度で育てた朝顔よりも立派な花を今なら咲かせることができるのと同じように、もっと情熱と愛を注いでやれば元気に育てることが可能なのかも知れない。今回届いたのは、前回とは比べ物にならないほど立派な苗である。やはりプロは違うと感心する。これなら元気に育つだろう。これで駄目なら私はもう一生食虫植物の栽培は諦めよう。苗を鉢に植え替えた後、一月にAmazon.com Booksから購入したTHE SAVAGE GARDEN by Peter D'Amato (Ten Speed Press, 1998)の頁を捲って夢を膨らませる。食虫植物の本を買いたくなってきた。何かあると直ぐに本を買いたくなってしまうのが私の困ったところだ。


5月24日(月)

 今日は朝から雨。書き忘れたが、昨日朝顔の種を蒔いたので、丁度よかったのかも知れない。明日から晴れて気温が上がればすぐに発芽してすくすく育つに違いない。何しろ今年は五月上旬に嫌なことがいろいろあったので、朝顔の種を蒔く気分にならず、種まきが随分遅れてしまった。

 清水義範『蛙男』(幻冬社/1600円)(借りた本)を読み終える。全然期待せずに読んだらこれが面白い。結末は少し悲しく少し怖い。今どき人が蛙に変身する話でろくなものが書ける筈がないと思っていた私は愚かであった。清水義範を侮ってはならない。

 図書館流通センターに本を註文。昨日註文できなかったのは私の方の問題ではなく、あちらのシステムの方の異常だったらしい。註文した本は、
ペネロピ・ライヴリーほか『幽霊がいっぱい<古今英米幽霊事情2>』(山内照子編/新風舎/1800円)
清水義範『蛙男』(幻冬社/1600円)
トマス・J・スタンリー『となりの億万長者』(斎藤聖美訳/早川書房/2000円)
『恐怖と怪奇名作集5 監視者』(岩崎書店/1300円)
である。『幽霊がいっぱい』は昨年出た『化けて出てやる』に続く幽霊物語アンソロジー第二弾。『蛙男』は今朝読み終えた本である。その次のは、ちょっと億万長者になることにしたので読んでみることにしたもの。億万長者になる方法は秘密である。どうでもいいことだが、もし、あなたの近くに億万長者になる方法を知っているという人がいたら、そいつは狂人か詐欺師だから気をつけた方がいいと思う。最後のは子供向け怪奇小説アンソロジー。現在第十巻まで出ている。一回の註文代金を七千円以上にして送料を無料にするために、少しずつ買っている。計算の得意な方はお気づきかも知れないが、上記四冊の代金を足しても七千円を越えていない。私は買った本を総てここに記している訳ではないということである。

 マイク・レズニック『キリンヤガ』を読み始める。まだ百ページくらいしか読んでいないがこれは傑作である。第二話「空にふれた少女」には泣きそうになった。私は本を読んで涙を流すことができないので実際に泣いた訳ではないが、これは今年一番の本になるに違いないと確信する。確信といえば、先日「自信が確信に変わりました」とか云ったプロ野球選手の若造がいたので、この二語を使うのが躊躇われるようになってしまった。全く不愉快なことをしてくれたものだ(私はプロ野球に殆ど関心がないので、この発言をした男の野球選手としての資質には何の意見も持っていない。念のため記しておく)。


5月23日(日)

 マイク・レズニック『キリンヤガ』(内田昌之訳/ハヤカワ文庫SF1272/820円)が届く。内田さん、どうもありがとうございます。これは原書を持っているのだが、読んでいなかった。今すぐ読みたい。しかし、SFマガジンの原稿を終わらせてるまで待たねばなるまい。

『精霊がいっぱい!(下)』を読み終える。なかなか面白いのだが、どうもしっくり来ない。文体のせいだろうか。

 平野啓一郎『一月物語』を読み終える。殆ど期待せずに読んだせいか、好印象をもって読み終えることができた。見慣れない言葉や漢字が出てくるがさほど気にならない。受賞作も読んでみようかなという気になる。しかし、これはどうみても泉鏡花の真似事ではないかと思うのだが。

 図書館流通センターに本を註文、しようとしたらエラーが出てしまって註文できない。何故だ。エラー番号と指示に従ってNetscapeCommunicatorの設定など確認してみるが、先週まで註文できていたのだから間違っている筈もない。前にもエラーが出たときに報告メールを送ってみたことがあるのだが、NetscapeCommunicatorの設定を確認せよという返事しか来ないのでもう訊ねる気にはならない。向こうだって返事のしようがないのだろう。でも、ちょっと冷たい感じの返事である。そういえば、以前図書館流通センターの人にいろいろ教えてもらったことがあった。図書館流通センターがホームページを開設したばかりの頃、私がインターネットといえばEudora1385Jでメールの送受信くらいしか使ったことのなかった頃、WWWはMosaic(という名前だっただろうか)で英語圏のページを覗いてはアメリカにはオンライン書店があるのかと感心していた頃、もっと沢山オンライン書店があればいいのに古本屋もあればいいのにヨーロッパにもあればいいのにと思っていた頃、Netscapeというブラウザが登場してこれが日本語の表示も出来るらしいと聞いて驚いていた頃のことである。私は図書館流通センターがオンライン書籍販売を始めるというので早速登録をしたものの、ブラウザの日本語表示の設定方法が解らず困った揚げ句、図書館流通センターの人に訊ねたのだった。本を註文したいのですが日本語表示の方法が解らず困っていますと。すると、私はMacintoshのことは全然解らないが近くにちょうどMacintoshでNetscapeを使っている者がいたので設定方法を聞いてみました、という丁寧なメールが返ってきたのであった。その時の対応に感激した私は、新刊図書は図書館流通センターに註文することにしたのだ。


5月22日(土)

 近所の積文館書店に娘を連れて本を買いに行く。
平野啓一郎『一月物語』(新潮社/1300円)
篠田節子『カノン』(文春文庫/532円)
小林千草『ことばの歴史学』(丸善ライブラリー/780円)
財部誠一『シティバンクとメリルリンチ』(講談社現代新書/640円)
を購入。何でこんなものを買ってしまったのだろうという本も入っている。それがどれかは秘密。

『精霊がいっぱい!(上)』を読み終える。現代の科学技術が殆ど魔法で置き換えられている世界での魔法廃棄物事件を追う調査官が主人公で、設定を考えるとこれが面白くない筈がないのに、どうも期待したほど楽しくないのだ。この主人公が中途半端な性格だからではなかろうか。現実離れした世界で事件を追う主人公は、徹底的に厳しいハードボイルドの男か、ひょんなことから事件に巻き込まれてしまってどたばたしているうちにいつのまにか事件を解決に導いてしまう軽い男、というのが話が面白くなる状況だと私は思うのだが、本書の主人公はしかるべき機関に所属する調査官で事件を担当するのは当然で、仕事振りはごく普通で生活習慣も真っ当な男だ。その辺が私にとって今一つ心からこの話を楽しめない理由なのではないかと睨んでいる。とにかく、早く下巻も読み終えなければ。


5月21日(金)

 Sean StewartのMOCKINGBIRDを読み終える。主人公は31歳の女性(独身)で母を亡くしたばかり。彼女は母親が大嫌いだった。憎んでいた。魔法を使い、未来を視、ときどき六人いる「神」に乗り移られてしまう母親が嫌いだった。が、その魔術的な跡取りに指名されたのは、それを望んでいた妹ではなく自分だった。というところから、否応なく魔術的な世界に引き込まれていくので、これは面白そうだと冒頭では思ったのだが、その魔術的な香りがそれほど強まることはなく、主人公の恐怖の対象は破産だったり出産だったりするのであった。主人公の日常のちまちまとした心の動きなんかが丁寧に描かれていて、私があまり好まない方向へ話は進んでいく。ただ、本書はヒューストンが舞台なので、テキサスにあった安売り店の名前とか郊外の町の名前なんかが出てくると懐かしさが心に満ち溢れてしまうという個人的な事情があってそれなりに楽しく読み進めてしまうのだった。結末は妹の結婚式と自分の出産とハリケーン襲来が重なって大騒ぎとなった後、魔術的な落ちもついてなかなかいいのであった。続いて同じ作者のTHE NIGHT WATCHを読もうか、それとも先にジョナサン・キャロルのMARRIAGE OF STICKSを読もうか迷ったが、そろそろSFマガジンのファンタジイ評のための本を読まねばならない時期になったので、明日からハリイ・タートルダヴの『精霊がいっぱい!』を読むことにする。


5月20日(木)

 図書館流通センターから『バッハ全集5 教会カンタータ5』(小学館/27143円)が届く。本の中では小池寿子「死の音色」が興味深く読めた。<死の舞踏>と音楽に関するもの。バッハとはあまり関係なかったが。カンタータ第四番に出てくる「死の足音」の話などもあるのではないかとちょっと期待していたのであった。この「バッハ全集」も次回配本『第15巻 バッハとその周辺』でおしまいである。やっと終わる。私はこの全集が終わるまで他の音楽CDを買わないという誓いを立てていたので、これで他のものもまた買えるようになるという訳だ。どうせバッハしか買わないだろうが。


5月19日(水)

 The Internet Bookshopからジョナサン・キャロルのMARRIAGE OF STICKSが届く。前作KISSING THE BEEHIVEでは何も不思議なことが起こらず少々がっかりしたものだが、本書はちゃんと不思議な事件が起こるようだ。今読んでいるSean StewartのMOCKINGBIRDを読み終えたら早速取り掛かりたい。

 書店リンク集の方でLivre-en-Ligneというフランスの書店のホームページが空白になってしまっているということに関して何か御存知の方がいらっしゃったらお教え下さいと記しておいたら、実践女子大学図書館の伊藤さんから、どうやらこの書店は営業を停止してしまったようだということを教えていただいた。伊藤さんはalapage.comにLivre-en-Ligneの消息を訊ねたそうである。すると、先週フランスの新聞にLivre-en-Ligneが営業を停止するという記事が載っていましたよ、という返事が届いたということで、商売敵に訊ねるなんて私には思いつきませんでした。


5月18日(火)

 昨日の日本経済新聞にAmazon.comに関する記事が載っていた。同社が音楽CD、ペット用品、医薬品といった分野のネット販売に買収・提携で攻勢をかけているという話題だ。Amazon.comが参入するとその分野でたちまち再編劇を引き起こし、「次はどの業界が<アマゾン>されるか」などと、ネット企業が既存の業界に殴り込みをかけるという意味の動詞で社名が用いられるほどだという。ただ、売上高は急増しているが、純損失は6000万ドルと赤字幅が拡大しているらしい。そういえば先月29日に、NetscapeのニュースページにAmazon.comの経営についての記事があるがちゃんと読む元気がない、ということをここで書いたのだが、どうも今回の日経の記事の内容はその時のものにほぼ等しいようだ。


5月17日(月)

 心の重荷になっていた実習が終わってほっとする。世界各国から来た人に英語で説明しなければならないのだ。もちろん、その中で一番英語を話せないのはこの私だ。日本語でも話すのが苦手な私は人に何かを説明したり教えたりするのが嫌いである。そんな奴が大学の教員をしていていいのかと云われることがあるが、私は研究のために大学にいるのだから仕方がない。

 昨日のwordlyという単語のことが気になって仕方がない。ひょっとしてworldlyの誤植じゃないのかという気がしてきたのである。多分そんなことはないと思うのだが。いや、そうかも知れない。

 Pink Marionetという怪しいところ(私にはそう見える)からバナー広告依頼のメールが来た。私のところのようにアクセス数の少ないところに貼り付けても仕方がなかろう。それに私のところを見に来る人が関心を抱くような内容なのか。とにかくホームページの雰囲気が乱れそうなので断っておくことにする。


5月16日(日)

 図書館流通センターから本が届く。
村上春樹『スプートニクの恋人』講談社/1600円
『岩波講座言語の科学7 談話と文脈』岩波書店/3400円
『恐怖と怪奇名作集6 猫の影』岩崎書店/1300円
の三冊。恩田陸『不安な童話』祥伝社文庫と篠田節子『カノン』文春文庫は品切れ。文庫本は品切れになる確率が高い。しかし、これは別に図書館流通センターが悪い訳ではない。『岩波講座言語の科学』はこれで全巻揃ったのだが、まだ二冊くらいしか読んでいない。今後も読まないのではないかという密かな不安を抱きながら全11巻を眺める。

 図書館流通センターに本を註文。
サイモン・ウィンチェスター『博士と狂人 世界最高の辞書OEDの誕生秘話』(鈴木主税訳/1800円/早川書房)
米田裕編『Doping Mac 「旧型マック」スーパー改良術!!』(ぶんか社/1950円)
塚原誠・柴山幸夫編『Old Mac超蘇生マニュアル』(日本文芸社/1800円)
『Macintosh改造テクニック』(ナツメ社/2000円)
の四冊。OEDの本は先週註文し忘れていたもの。他の三冊は先日SE30を拾ったので、今後いろいろ参考にしようという資料だ。何だか自分が怪しい方向に進みつつあるような気がする。

 Oxford English Dictionaryといえば、今日初めて「リーダーズ英和辞典」にも「リーダーズ・プラス」にも「ランダムハウス英語辞典」にも載っていないのに、OEDには載っているという単語に出会った。「wordly」という語である。意味は想像した通りだったのでOEDがなかったらどうにもならなかったという訳ではないが、一応辞書を引くと安心するのであった。

 NetscapeCommunicatorをversion 4.6にする。4.5のときと比べてどこが変わったのか使っている分には全く判らない。話は変わるがこの頃Macintosh版が出た漢字職人という外字作成ソフトが欲しくなってきた。今はMacintoshで書けない(と思う)内田百けんのけん(門構えに月)とか、森鴎外の鴎(區に鳥)とか、掴む(手偏に國)などを書きたいからだ。まあ、これで根本的な解決にはならない訳だが、当座凌ぎには使えそうだ。

 眠いので午後7時半に寝てしまう。早すぎて眠れないのではいかと思ったが、8時頃には寝入ったようだ。ということで、翌日は1時50分に起きてしまうのだがそれはまた明日の話。


5月15日(土)

 書くのを忘れていたが、昨日、早川書房からロバート・ジョーダン『神竜光臨1 魔人襲来!』(斉藤伯好訳/ハヤカワ文庫FT261/600円)が届いたのだった。解説:野田昌宏。今月読もうか、後で五冊纏めて読もうか迷うところだ。

 SE30も漢字Talk 7.1で落ち着きを取り戻し、電子メールの送受信ができるようになった。文章も書ける(システムソフトエディタとNisus Compact)し、辞書もある(岩波国語辞典と小学館類語辞典、American Heritage English Dictionary、それにマイペディアの古い電子ブック版)。こいつを埼玉の実家の方へ置いておけば、帰省中にも原稿を書いて送ることができるという訳だ。尤も、私にはそんなに文章を書く仕事はないのだが。問題は埼玉の家の方にモデムがないということと、今回拾ったSE30にはキーボードとマウスがついていないということである。ISDNに回線を変えてくれれば余っているターミナルアダプタがあるのに。

 今日と明日は職場の旅行がある(医局旅行と呼ばれている)。今年も私は嫌だからと云って不参加を決めている。不参加だと旅行積立金も戻ってきて、本も買えるのだ。この頃、職場の誰も私を宴会と旅行には誘わなくなった。いいことである。


5月14日(金)

 特に変わったこともない一日。図書館流通センターから商品発送の電子メールが来たが、何と本文が空欄になっていて何が発送されたのか解らない。明後日届く筈の箱を開けるときどきどきしそうだ。偶然Macintosh SE30を入手する。これにドイツ語版System7.0.1をインストールして日本語表示可能なものに改変しようとしたが、失敗する。7.5.3でなら出来そうだがちょっとそんな元気はないのだった。


5月13日(木)

『季刊・本とコンピュータ』1999年夏号アンケート特集「読みたい本、わたしはこうやって入手している」というものの依頼が来ていることを思い出し、書いてみる。四百字なので、何を書いたらいいのかと少々悩み、インターネットで検索して註文というのも便利だが、定期的に遠く海外から送られてくる紙のカタログには抗い難い魅力があるというような話を書いて送る。数時間後に、それでよいという返事が来てほっとした。


5月12日(水)

 アメリカのSF情報誌LOCUS5月号が届く。リサ・ゴールドスタインのインタビューが載っている。歳をとって太ったようだ。月日が流れるのははやいものである。六月に出るDARK CITIES UNDERGROUNDはおもしろそう。早く読みたい。

 嫌な「合宿研修」が終わったから晴れやかな気分になってもよさそうなものなのに、激しく憂鬱な気分になってくる。理由はわからない。よくない精神状態だと思いながらもどうにもならないのである。まあ、そのうち元に戻るだろうが。憂鬱な気分も吹き払うために本でも買おうかな。


5月11日(火)

 MacOSを8.6にする。昼間職場のを8.6にしたので、その時に使ったファイルを持って帰ってインストールすることにした。ダウンロードするのに電話代がかかるから。私はMOを読み書きする装置を持っていないので職場のものを一晩拝借することにした。ところが、持って帰ってきたMOディスクにファイルを入れてくるのを忘れていたのだった。何という愚かなことをしてしまったのだろう。一日待って明日もう一度持ってくればいいのだが、その一日が待てない私は家でもやはりダウンロードしてしまった訳だ。三時間かかった。そうしてインストールしたものの、使う分には変化は感じられない。この頃、インターネットに接続するとき、二度目以降に異常に時間がかかるのが改善されたようで、それはよかった。システムフォルダに「Language & Region Support」という見慣れぬフォルダと機能拡張フォルダの中に**Sprocket***という名のファイルが沢山現れた。その中にInputSprocket NoHandsMouseというのがあるではないか。NoHandsMouseが間違いなく使えるということのようだ。NoHandsMouse、買ってみたいものだ。


5月10日(月)

 嫌なことが終り、晴れやかな気分で出勤する。土曜日に「合宿研修」に出かける前に会った大学院生は、土曜日は本当に怖い顔をしていて挨拶してもじろりと睨みつけられただけだったと云っていた。申し訳ないことをした。

 Amazon.com Booksに本を註文する。
Dog Eat Dog by Jerry Jay Carroll, $9.60, Ace Book (February 1999)
Silver Birch, Blood Moon ed. by Ellen Datlow and Terri Windling, $10.80, Avon (March 1999)
Wrapt in Crystal by Sharon Shinn, $11.16, Ace Books (May 1999)
の三冊のみ。$31.56(割引価格)と送料が$9.85。Sharon Shinnのは別世界の剣と魔法の物語ふうの表紙なのであまり期待できない。

 The Internet Bookshopからジョナサン・キャロルのMarriage of Sticksを発送したという連絡があった。楽しみである。メールの差出人がWHSmith Onlineという名前に変わったので、始めは何の連絡なのか解らず戸惑った。

 Weinberg Booksからカタログが届く。この書店からはもう本を買わないことにしたのだった。

 私のコンピュータにはスピーカが付いていないので、バッハを聴くために一つスピーカを買おうと思いついた。しかし、あまり資金はない。そもそも私は午前三時頃から原稿を書きながらバッハを聴くことが多いので、家族を起こさないようにこっそりヘッドホンで聴くことになり、スピーカなど要らないのではないかという気すらする。そこでPC ParkというところにヤマハのYST-M8(B)マルチメデイアパワードスピーカ(\5,390)というのと、YST-MSW8(W)マルチメデイアパワードサブウーフアー(\7,130)というのを註文してみる。どんな音が出るのかはよく解らない。この店は送料が無料で、銀行振込だと消費税分も割引になるので、\12,520だけ送金すればいいというのが嬉しい。振込手数料420円だけ負担すればいいという訳だ。


5月9日(日)

 嫌な嫌な「合宿研修」は終わった。じっと時が過ぎるのを待てば何でもいつかは終わるものだ。とにかく私は終始不機嫌で、夜の宴会でも学生と殆ど話をしなかった。どんな嫌なことでもやらざるを得ない状況になってしまえば、一緒に働く人たちと可能なかぎり気持ち良く職務を果たそうと努めるのが大人の態度というものだ。だが、私は我儘で大人げないので、そんなことはしない。嫌だけど仕事だから来ましたよという態度をあからさまにして、宴会では一時間もしないうちに自室に引き上げ本を読んでいた。全くしょうがない奴だと自分でも思うがこればかりはどうしようもないのだ。

 図書館流通センターに本を註文。
恩田陸『不安な童話』祥伝社文庫/552円
村上春樹『スプートニクの恋人』講談社/1600円
篠田節子『カノン』文春文庫/552円
『岩波講座言語の科学7 談話と文脈』岩波書店/3400円
『恐怖と怪奇名作集6 猫の影』岩崎書店/1300円
以上五冊で、7404円 。これに消費税が加わる。註文してからサイモン・ウィンチェスター『博士と狂人 世界最高の辞書OEDの誕生秘話』(早川書房/1800円)を註文し忘れたことに気が付いた。一番欲しかったのはそれなのに。ああ、またあまり読みそうにないものばかり買ってしまった。バッハの曲が出てくるのでずっと気になっていた『カノン』が文庫になったので、これは読むかも知れない。


5月8日(土)早朝

 今日は今の職場に来てから最も嫌な日となるだろう。学生を連れて「合宿研修」というのに行かねばならないのだ。学生56人、教員6人。私は旅行と宴会とカラオケが(それから10人以上の集団の学生も)が大嫌いなので、私の大嫌いなものが勢揃いしている訳だ。数年前にはカラオケ付きバスで歌い通しだったという話なので、今年もそういうことになったら目的地に着いた時の自分の正気は保証できない。宿泊する部屋が個室じゃないので、頭痛が酷くなったときに一人でゆっくり苦しめないのも嫌だ。前に大学院生だった頃、学会で出かけるときに宿泊費節約のために二人部屋にしたら、私が頭痛で苦しむ姿を見て同室の奴がすっかり怯えてしまったので、それ以来、極力個室を取ることにしているのだが。勿論、妻や娘は馴れているから平気だ。やれやれまたか、という顔をするだけである。まったく、本も読めないだろうし(一応持っては行くが)、どうして大学でこんな小学校の遠足と会社の社員旅行の嫌なところをくっつけたようなものをしなけりゃならないんだ。


5月7日(金)

 Fantasy Centreからの荷物を受けとる。郵便局で巨大な黄色の袋を渡されたときには驚いた。中にはいつもの小包みが入っていたのだが。あれは普通郵便局で出してから小包みだけ配達するのではないか。ちょうど一ヶ月前に註文した
T. G. Jackson SIX GHOST STORIES Ash-Tree Press £23.50
Jack Adrian (ed) ANNUAL MACABRE: 1998 Ash-Tree Press £19.00
Richard Dalby (ed) THE MAMMOTH BOOK OF VICTORIAN AND EDWARDIAN Robindon (1995) £6.00
の三冊である。THE MAMMOTH BOOK OF VICTORIAN AND EDWARDIANはちょっと汚いのが残念。収録作品を見ると、聞いたことのない作家の名前も多く、古い怪奇小説をもうちょっと真面目に読もうかなという気分になる。Ash-Tree Pressなんか全然読んでいないし。この本の目次を眺めていて初めて気が付いたのだが、Ash-Tree Pressという名前はM・R・ジェイムズのThe Ash-Treeという作品名からとったものだったのか。

 日本経済新聞の記事によると、日本の古書店最大手のブックオフというのが今年末までにニューヨークに直営店を出すらしい。定価の一割引で販売するそうで、全然安くないと思う方もいらっしゃるかも知れないが、普通海外では日本の新刊図書は国内定価の二−三倍であることを考えればこれでも結構安いことになるだろう。ただ、本の内容は漫画単行本とビジネス書だということで、小説好きの人にはあまり関係ないかも知れない。場所はマンハッタンのグランドセントラル駅の近くだということなので、近所にお住まいの方は見に行ってみては如何であろうか。来年にはロサンゼルスにも出店予定だという。


5月6日(木)

 Fantasy Centreからのものと思しき小包みが届いたが、その時我が家には誰もおらず、不在連絡票が残されただけ。明日必ず受け取りに行くからもう少し待っていてくれと、心の中で郵便局の小包み置き場で寂しく一夜を過ごす本にむかって叫ぶ。


5月5日(水)

 3日の日本経済新聞に主婦の友社が、通信販売専門会社を設立し、主婦の友社の書籍雑誌育児用品のみならず、小学館や角川書店の書籍も販売するそうだ。主婦の友社では初年度55億円、三年後に70億円の販売を目指しているという。私は主婦の友社の本を買うことは殆どないので、あまり関係ない。


5月4日(火)

 図書館流通センターに本を註文。『バッハ全集 第5巻 教会カンタータ』(小学館/27143円)一冊だけである。註文受付は連休明けになるだろう。

 Ash-Tree Pressの本を一通り買っておこうと思い立ち、Bookfinder.comで検索してSpeculative Fictionという店に、
Metcalfe, John : NIGHTMARE JACK AND OTHER TALES: THE BEST MACABRE SHORT STORIES OF JOHN METCALFE. Ashcroft: Ash-Tree Press, 1998. 1st edition. One of 500 unnumbered copies. Edited and introduced by Richard Dalby. Afterword by Alexis Lykiard. Collects 17 tales. US$ 37.00
Chambers, Robert W. : OUT OF THE DARK, VOLUME 1: ORIGINS. Ashcroft: Ash-Tree Press, 1998. 1st edition. One of 500 unnumbered copies. Editing and Introduction by Hugh Lamb. Collects 9 tales. US$ 42.00
の二冊を註文する。ここから二割引してくれるということで、喜んでいたのだが、ここはクレジット・カードは受け付けないということを発見してしまった。私はクレジットカードが使えない外国の店からはもう本を買わないことにしているので、直ぐに註文取り消しのメールを送る。もう一度検索しなおして、Mythos Booksという店に、メトカーフを$39.50、チェインバースを$38.50で註文する。船便で送ってもらうので送料は$3.90である。註文の電子メールを出して数時間後に返事が来た。数日中に発送する由。夜の11時に働いている本屋さんのようだ。

 昨日、中島晶也、西崎憲の両氏に指摘されたのだが、先日試しに作ってみた縦書きページは、表示(画面のスクロール)が極端に遅く、自分の環境ではとても読むに堪えない速度であるということであった。私のところではあのページは困難なく動いていくのですがね。しかし、Locusの一ページをPDFファイルにしてみたときには流石に動きがぎこちなくちょっと読むに堪えないなと思ったから、あんなものなのだろう。ということで、日記の縦書きPDF化は取りやめにして、洋書紹介のところだけテキスト・PDF併用で検討してみようかなというところ。私のページは文字だけでなかなか良いと褒められたので、これからも極力文字だけで構成していくつもりである。そういえば、東京創元社のページは殆どが画像形式で構成されていて、テキストのみの環境で読もうとすると全く読めないと不評であった。私はなかなか暗くていい感じだと思っていたのだが。早川書房も来月からホームページを開設するらしい。

 ロバート・チャールズ・ウィルスンのDARWINIAが、ヒューゴー賞の候補となったと聞いたので、SFマガジンのSF Scannerの原稿を書いて送信する。先週も一つ書いて送ったばかり。ちょっと送り過ぎか。しかし、DARWINIAは面白いので是非邦訳を出してもらいたいものだ。ヒューゴー賞を受賞するということはないんじゃないかと思うのだが(別に何の根拠もない)、今回候補になったことで邦訳を出すきっかけになってくれればいいのだがどうだろう。東京創元社から出た『世界の秘密の扉』は全然売れなくて、もうこの作者の本を日本出だすのは無理だろうと云われていたのだった。あれは表紙が悪かったのではないかと私は思うのですが。


5月2〜3日(日・月)

 SFセミナーという怪しい集まりがあるので、水道橋の会場へ。会場でどうでもいい文庫本を十冊(自分で持っているかどうか解らないので、あまり見覚えのない表紙のを十冊攫んでみた)購入した後、古典SF研究会員の藤元直樹さんから貴重な本を二冊譲っていただいた。アーネスト・ブラマーのKAI LUNG'S GOLDEN HOURSKAI LUNG UNROLLS HIS MATである。それぞれGeorge H. Doran Co./1923とDoubleday, Doran & Co./1928の版。何とこれを各々五百円という値段で譲ってもらってしまったのだから、何度お礼を云っても足りない。このシリーズはもう一冊THE WALLET OF KAI LUNGというのもあるのだが、まだ一度も眼にしたことがないのだった。
 夜の部では怪奇小説の人たちに会うが、企画はモダンホラーに全く関心のない私にはさっぱり解らない話であった。本当は、ファンタジイとも多少は絡んでくるので、関心がないではすまされないことではあるのだが。一晩中SFの人たちとだらだら話した後、地下鉄が動き始めると話をしていた人たちが皆帰ってしまい一人になったので一・二時間眠る。七時頃孤独になっていたが怪奇小説の人たちと少し話をしてから会場を出る。しかし、猫嫌いの私にとって倉阪鬼一郎氏の黒猫ほど恐ろしく不気味で近寄りがたいものはないのに、また写真を撮られるのが猫よりも嫌いなのに、「写真を取りますから猫を抱いて下さい」と中島晶也氏に云われ、初めて会った日にここで逆らってはもう怪奇小説の人たちと話ができなくなってしまうかも知れないと思い、じっと堪えて引きつった笑いを浮かべつつ写真を撮られる。が、こういう時、引きつった笑いを浮かべていたつもりであっても、後で写真を見ると思いっきり不機嫌な顔をして写っているのが常である。
 八時半頃会場を出て、ちょっとだけ西崎憲氏に会ってから帰る。とにかく眠いので本を読もうと思っても三行ほど進むと夢の世界を漂っている。今日は本を読むのを諦め、帰ってから食事をして風呂に入って六時半に寝る。しかし、このSFセミナーというのは煙草の煙で気分が悪くなるのが最大の欠点だ。


5月1日(土)

 ピーター・アクロイドのTHE PLATO PAPERSを読み終える。これは変な本だった。最後の方は、もう数百年も前に滅んでしまったと思われていた、Mouldwarp時代の人類、つまり我々と同じ人類のことだが、この人間たちの世界をプラトンが訪れるのだ。地下に降りて行って見つけるのだが、それが実際に地下の作った空間なのか、別の次元なのか、あるいはプラトンの夢なのかははっきりしない。プラトンはそういう変なことを喋りまくるのでとうとう告発されてしまう。子供たちに危険な考えを吹き込んだというのが理由だった。物事や世界の成り立ちを疑うということを教えたものだから、皆が混乱しているというのだ。プラトンは裁判では無罪になるが、古代人の思想と人間たちに惹かれて町を出て、旅立つという結末だ。もし、プラトンの著作が下敷きになっているのなら、私にはさっぱり解らなくて当然である。19世紀文学の解説は実に面白いのだが。


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