2009-07-20 11:10:01
iPod touchを買ってからそろそろ4週間になるが、まだほとんど活用していない。何しろ起きている時間の大半をパソコンの前で作業しているから、iPod touchを使う暇がないのだ。電車に乗っているときや歩いているときは、危険が察知できなくなるので音楽を聴くのは嫌だし、電車内は貴重な読書時間なのでやはりiPod touchを使う時間はない。
私にも使える魅力的なアプリケーションはないかと思って痛い頭を抱えながらネット世界を彷徨っていたら、Atom in a Boxというのを見つけた。原子軌道(原子を取り巻く電子の軌道)の電子雲を動画で示してくれるのだ。電子の軌道は、太陽の周りの地球の軌道とは違って、確率分布で示される実に判りにくいものである。量子数n,l,mの組み合わせを変えていろいろ表示させることができる。これは面白い! と思ったのだが、これをiPhone/iPod touchで使う理由があるのだろうか。こういうことは机の前に座っているときにすればいいのではないか。電車の中で原子軌道の姿を確認したくなったことは今まで生きてきた年月の間に一度もない。
Moleculesも分子構造を示してくれる素敵なアプリケーションだが、これはパソコン上で観ればいいのではないか。歩いているときに、DNAの立体構造を今すぐ観たい! もう我慢できない! と思ったことは一度もない。
これと同じところで作っているPi Cubedは、超高機能計算アプリケーションで、これならiPhone/iPod touchで使う場面が想像できなくもない。もともと入っている電卓機能も横向きにすれば科学計算もいろいろできるのだけど、複雑な式を表示させたり編集したり、あるいは式を保存するといったことはできない(と思う)。これなら、いつでもどこでも複雑な計算が可能だし、過去に使った式を呼び出して使うこともできる。でも、そんなに複雑な計算式をパソコンから離れたところでどれほど頻繁に使いたくなるかはわからないが。私にはあまり訪れない状況だと思う(でも、LaTeX形式で出力できるところはちょっと気になる)。
今はiPhone/iPod touchで長い文章を書いたり、難しい解析をしたりすることはないだろうが、これがもう少し大きくなって、いわゆるNetBookに近づいたらどうだろう。つまり、このごろ噂になっているAppleタブレットである(TechCrunch Japan, Wired Vision)。これならそういう作業もできそうな気がする。ひとつ気になるのは、もしも本当にこういう機種が出たときに、使用者がどれくらい自由にアプリケーションを動かせるのかということである。今はiPhone/iPod touchは、Appleが認定したアプリケーションしかインストールして動かせないことになっているし、使える領域は限られている。一方、Macの方はいろいろなアプリケーションをインストールできるし、自分でプログラムを作ったりスクリプトで自動操作を指示したりすることもできる。Appleタブレットが、iPhone/iPod touchのように勝手にアプリケーションをインストールしたりプログラムを作ったりできないものになったら、『インターネットが死ぬ日』(井口耕二訳/1400円+税/ハヤカワ新書Juice)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books]で指摘されていたような、自由度の少ないネット機器ばかりになっていく兆候なのかも知れない。私はあまりそういう世界は歓迎できない。安全かも知れないが、完全に管理された世界は面白くない。
そんなわけで、ほとんど活用していないiPod touchをつついたりひっくり返したりしながら、Appleタブレットの続報を気にしている今日この頃なのだ。