本を切るなんて自分にはできないと思っていた。しかし、今では平気でできる。人間、いざとなったら何でもできるのだ、きっと。
我が家の本が増えて困っていた。本棚を増やすのは難しい。本棚を買う金も足りないし、設置する壁も足りない。不要だと思った本はだいぶ処分したが、もう捨てる本はない。残された道はただ一つ、電子化である。本を切ってドキュメント・スキャナで読み込んで、本体を捨てるのだ。
できるのか、そんなことが。本を切るなんていうことが。まずは二冊持ってゐる本で練習してみよう。書棚からマイケル・ホワイト『ナルニア国の父 C・S・ルイス』(岩波書店/2005年)を持ってきた。カバーを外し、扉を開き、咽喉の部分にカッターナイフで切れ目を入れる。苦しい、痛い、本の叫びが聞こえるようだ。涙を拭き拭き作業を続ける。こんな感じになる。
こいつの中身をカッターナイフで切る。裁断機は持っていないのだ。まずいくつかの束に分割して、次に閉じてある部分に近いところで切断する。本に謝りながら、刃を滑らせる。切れたら、ScanSnap S1300で読み取る。最初、この1300は遅くて使えないと思った。しかし、スキャン中ずっと見守っている必要はないのだ。本でも読んでいればいい。もちろん、1500の方が速いけれども、高くて買えないこともある。
本文のスキャンはカラーモードは白黒、画質は「ファイン」か「スーパーファイン」がいいと思う。「ノーマル」は低すぎる。本の代わりに保存するものなのだ。高画質で取っておきたい。魂を吸い取るように。こんな感じである。
これを文字認識して検索できるようにしておこう。Acrobat 10で日本語縦書き文書の認識効率が高くなったことを期待しようではないか。こんな感じになる。
これはワープロソフトで縦書き表示にして、元の本と比べやすくしたものである。なかなかよい認識ではないか。私はそう思った。が、よくよく見ると、人名などのアルファベットの認識が極めて悪い。固有名詞で検索しようと思っていたのに。ちょっと残念。平仮名、片仮名と漢字はかなりよく認識できていると思う。アルファベットが入ると途端に判らなくなるようだ。
英語の文章ならもちろんかなり正確に認識できる。日本語も横書きなら精度はもっと高くなる。こうなったらどんどん本を電子化しよう。そして、書棚をがらがらにしよう。私はもう30年以上、書棚の本が増え続ける生活をしてきた。その間、減ったということはほとんど経験していない。常に増加する本に頭を悩ませてきた。それが今、減っていく。夢のような話である。毎日毎日本棚が空いていくのが楽しくて仕方がない。毎日毎日本を切り刻んでいる。最初は抵抗があったが、慣れれば平気である。どんどん切る。
いつの日か、本の姿がみえなくなったがらんとした部屋で呆然と佇むことになるのかも知れない。
その後の経過についてはまたご報告したい。