ゴードン・マカルパイン『青鉛筆の女』（古賀弥生訳／創元推理文庫）を読み終へた。三つの話の流れが絡み合ひながら巧みに一つの物語が作り上げられて行くのを楽しめる。反日感情の強いアメリカで生きる日系人の話を日本人が日本語で読むのも不思議な味はひ。そして、編集者怖い。
ピーター・ワッツ『エコープラクシア 反響動作』（嶋田洋一訳／創元ＳＦ文庫）を読み終へた。難しかった。「自由意志」はないといふのは面白いのだが、話の中でなされる膨大なさまざまな説明が理解できずに戸惑ってゐる時間が長すぎて。「エントロピーが移動する」とはどういふことかとか、576塩基の配列なら140ではなく192個のコドンではないかとか。参考文献112はξにゼータと振り仮名が振られてゐるが、元の論文を見たらちゃんとζとなってゐたから間違へてゐるのは振り仮名ではなくギリシャ文字の方だとか、話の流れと関係ないところが気になってしまふ。でも、「後記」と「参考文献」は特に面白い。
そして、ヨーロッパを中心にした西洋の人が「存在」とか「意志」とか「意識」とか「時間」とか難しいことを考へ始めるとどうして皆「神」の話をしないと先に進めないのかと思ふ（皆ではないのかも知れないけど私はその分野に疎いのでそんな感じがする）。と同時に、結局、さういふキリスト教に立脚した世界観を私は本質的に理解できないのではないかと思ふ。何しろ、神が判らないのだから。
「後記」で神（宗教）については適応利益を与へるものとして若干の解説があるが、それはまあさうなんだらうと思ふ（私は適応価値を得るのに失敗したやうだ）。そして「科学も同じではないかということだった」と書いてゐるが私はさうは思はない。科学は信じるものではなくて、寧ろ疑ふ手順のやうなものだと思ってゐるから。
今週買った本。
○Gordon McAlpine Joy in Mudville (Dutton, 1989) [kindle版]
●塚本昌則・鈴木雅雄編『声と文学』（平凡社）
今週買った本、これだけか。
今週買った本。
●藤井光編『文芸翻訳入門』（フィルムアート社）
●Ｃ・Ｓ・ルイス『馬と少年』（土屋京子訳／光文社古典新訳文庫）
●イタロ・カルヴィーノ『不在の騎士』（米川良夫訳／白水社）
●ウィル・ワイルズ『時間のないホテル』（茂木健訳／東京創元社）
●高原英理『怪談生活』（立東舎）
●梵寿綱・羽深隆雄『生命の讃歌』（美術出版社）
クラーク・アシュトン・スミス『魔術師の帝国《２ ハイパーボリア篇》』（安田均編／アトリエサード）ご恵贈賜りました。ありがたうございました。
パトリック・ロスファス『風の名前１』（山形浩生・渡辺智江・守岡桜訳／ハヤカワ文庫ＦＴ）ご恵贈賜りました。ありがたうございました。
キャンデス・フレミング『ぼくが死んだ日』（三辺律子訳／創元推理文庫）と宮内悠介『カブールの園』を読んだ。
あと、「学鐙 春号」を買った。創刊120周年記念の夏目漱石特集。
キャンデス・フレミング『ぼくが死んだ日』（三辺律子訳／創元推理文庫）ご恵贈賜りました。ありがたうございました。表紙・装幀に強く心惹かれる。
千野帽子『人はなぜ物語を求めるのか』（ちくまプリマー新書）と瀬戸賢一『時間の言語学』（ちくま新書）を読んだ。実に面白かった。特に因果関係と物語について考へるところが興味深い。
明日から学会出張なので、本の註文ができなかった。出張にはどの本を持っていくか。
今週買った本。
●『新編 日本幻想文学集成５』（国書刊行会）は、江戸川乱歩、佐藤春夫、宇野浩二、稲垣足穂の巻。
●鹿島茂『神田神保町書肆街考』（筑摩書房）
●千野帽子『人はなぜ物語を求めるのか』（ちくまプリマー新書）
●瀬戸賢一『時間の言語学』（ちくま新書）
●『アレイスター・クロウリー著作集３ 麻薬常用者の日記』（国書刊行会）
を購入。
ダリル・グレゴリイ『迷宮の天使（上・下）』（小野田和子訳／創元ＳＦ文庫）と佐藤さくら『魔道の福音』（創元推理文庫）ご恵贈賜りました。
丸善丸の内本店でNightLand Quarterly Vol. 08を購入。
Amazon.co.jpで、Kindle版
●ゴードン・マカルパイン『青鉛筆の女』（古賀弥生訳／創元推理文庫）
を購入。
村上春樹『騎士団長殺し』を読み終へた。結末は何だか判ったやうな判らないやうな感じ（←判ってゐない）。いつもこんな感じで、はっきり結末として私が納得できたのは『世界の終りとハードボイルドワンダーランド』くらゐだからもう慣れてしまった。前にも書いたが、これまでの村上春樹らしいところを集めてきた感じがするので読んでゐて楽しく先に進める。それがいいことかどうかは判らないが。一ヶ所だけ出てきたといふ「やれやれ」を見逃してしまったことだけが悔やまれる。