12月31日(木)

 今日も十時間ほど本の箱詰め。やうやく百箱である。私は大晦日とか元日とかに何ら特別の意味が感じられないので、今日も明日もただただ本の箱詰めである。年が明けて何がめでたいのかよく判らない。昨日と今日、今日と明日に何の違ひがあるのかもよく判らない。

 でも、2009年といふ区切りで何かを集計することはできる。この日記はMySQLで保存されてゐるから、集計は簡単である。今日と明日の違ひを理解できなくても、SQL文は書けるのだ。2009年に和書は293冊、洋書は44冊(合計337冊)買ったらしい。何かの間違ひではないだらうか。293冊も。でも、去年は「和書が267冊、洋書が72冊、合計339冊」と日記に書いてあるから、まあそんなものなのか。

 ちゃうど一年前の日記を読んでみたら、「直截」の読み方のことが書いてあった。十日前にも全く同じことを書いた。全然進歩してゐないことがよく判る。


12月30日(水)

 朝から晩まで本の箱詰めである。本を読む暇も買ふ暇もないので、ここで報告するやうなことは何もない。

 昨日ロバート・ファン・ヒューリックのシリーズを途中から読んでも大丈夫だらうかと書いたら、訳者の和爾桃子さんから、ほぼ大丈夫だといふご返事をいただきました。前にも一冊いただいてゐるので、私は二冊、このシリーズを持ってゐることになる。引っ越したらぜひ読みたいけれども、引越し後も当分は荷物整理に明け暮れるだらうから、本をゆっくり読めるやうになるのはかなり先になりさうである。
 そんなことより、昨日の日記を読み返して驚いた。何と失礼なことにこの本をいただいた和爾桃子さんの名前を呼び捨てにしてゐたのだ。訳者名をコピー&ペーストで貼り付けてから(変換間違ひなどを避けるために人名や書名は極力手で打たないやうにしてゐる)、そのまま「さん」を付けるのを忘れて続きを書いてゐたのだ。本当に失礼しました。

 この頃、この欄を書いてゐると眠くて書きながら眠ってしまふことが多い。指は惰性(か何か)で動き続けてゐるので、何とも妙な文を書き連ねてゐる。あまりにも妙な文だと途中で気がつくが、ちょっと変なだけだと気付かないことも多い。昨日も何ヶ所か間違ひがあった。一昨日も、その前も。翌日、あるいは数日後に気がついたら直すやうにはしてゐる。が、きっと直し漏れもあるに違ひない。今回のやうな失礼な書き忘れが放置されたままのものもあるかも知れないと思ふと、何もかも嫌になってくる。


12月29日(火)

 ロバート・ファン・ヒューリック『螺鈿の四季』(和爾桃子訳/1300円+税/ハヤカワ・ポケット・ミステリ)[amazon.co.jp, bk1]を訳者の和爾桃子さんからいただきました。ありがたうございました。これまで全然このシリーズを読んでゐないのだけれども、これだけ読んで面白いのだらうか。これでシリーズ全長篇の新訳刊行が完成したといふのに。

 関電工品質工事管理部『絵とき 百万人の電気工事』(1800円+税/オーム社)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books]がAmazon.co.jpから届く。面白い。線の繋ぎ方といった基本的なことから載ってゐる。実際にここに書いてある作業は一般の人には関係なささうなものがほとんど。「特殊場所の工事」などといふのは爆発の恐れのある場所での作業である。尤も、「照明器具の取り付け」のやうな普通の人でもできさうな作業でも、ここに載ってゐる工事は電気工事士の資格がなければやってはならないものばかりである。

 今日は一日引越し荷物の箱詰めをした。七時間くらゐ。30箱まで本を詰めることができたが、十分の一も進んだ気がしない。終はるのだらうか。
 といふわけで、この年末年始は本を読む時間もないので、本欄もあまり書くことがないやうな予感がする。引越しの詳細は別館の方で報告する予定である。


12月28日(月)

 ジャクリーン・ケアリー『クシエルの使徒1 深紅の衣』(和爾桃子訳/880円+税/ハヤカワ文庫FT)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books]を読む。変態嗜好はますます強まる。話はなかなか進まず、その一方で敵味方の識別が困難になり何だかよく判らなくなってくる。宮廷陰謀劇だから、当然なのだが。ナーマー様とかクシエル様とかエルーア様とか、次第に神々なのか人間なのかよく判らなくなってくるし、もう誰が誰だか記憶容量の小さい私には厳しいものがあるのだ(人間との間に子孫を残しているやうなので、区別ができなくなってもいいのかも)。現存の神話や伝説、民族などとの関係を含めて全体像を把握しておけば理解しやすいのだらうが、次の巻が出るときには忘れてしまって混乱のまま読み終へることになる。と云ひながらも、他に類を見ない閨房SMファンタジイなので、最後まで読むつもりである。


12月27日(日)

 昨日は寝ぼけてゐて、RSSのタイトルになる一文が本文の冒頭に入ってしまってゐた。ここを読んでゐるほとんどの方には何だか判らなかっただらう。たうとう頭が弱ってきたかと思はれたのではないかとちょっと期待してゐる。

 内田樹『日本辺境論』(740円+税/新潮新書)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books]を読む。面白い。これは面白い。日本人は辺境人であり、それ以外の自分たちを想像もできない。世界標準から遅れた辺境人として生き延びてきたし、それこそが日本人が立脚してゐる根本的な位置なのだといふ。常々、他所から押し付けられた「世界標準」に嬉々として自分たちの規則を変更してまでも合はせていく日本の態度に疑問を抱いてゐたのだが、さういふことだったのかと、頭の中が整理された感じがする。
 細かいことを一つ。「間髪を容れず」といふ言葉が172ページ辺りから何度か出てくるのだが、そこで、「間髪」なるものがあるやうに書いてゐる。「「間髪」というのは、情報の入力があって、変換装置で解釈し、適切な対応を出力するという継時的な過程のことです」と記されてゐるのだが、「間髪」といふ「過程」があるといふのだらうか。私にはそんなふうに読める。これは、「かん、はつをいれず」と読むはづの言葉だから、「間には髪も入らない」といふくらゐ間のないことを表現するものである。だから、そんな過程の話をされてもよく判らない。まあ、第3部は全体的によく判らなかったのだが。この間髪は多分、「綺羅星」のやうなものだらう。本来「綺羅、星の如く」といふやうに区切る表現で、「美しい衣装(綺羅)はあたかも星のやうである」といふ意味で、「綺羅星」といふ美しい星々がある訳ではないのだ。でも、この頃はあるらしい。だから、この頃は「間髪」といふ過程もあるといふことなのか。

Amazon.co.jpから、トーマス・C・フォスター『大学教授のように小説を読む方法』(矢倉尚子訳/2800円+税/白水社)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books]と高橋秀憲『配線器具入門 』(2000円+税/オーム社)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books]が届く。小説を読む方法は面白さうなのだが、先に配線器具の本を手に取ってしまふ。これが面白いのだ。この際、第二種電気工事士の資格を取らうかといふ気分になってくる。この本を読むと露出型コンセントやローゼットの接続・交換は一般人でもしていい範囲に読める。それなら資格は要らないか。

 ブラック&デッカー 【BLACK&DECKER】スマートドリルドライバー KR111RE[ブラック&デッカー] ドリル・スクリュードライバービット23本セット [15095] がDIY-TOOL STORE楽天店から届く。こちらは電気機器と関係のない工具。大量の棚の組立に対応するために購入したのだ。嬉しい。


12月26日(土)

 今日もジャクリーン・ケアリー『クシエルの使徒1 深紅の衣』(和爾桃子訳/880円+税/ハヤカワ文庫FT)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books]を読みながら出勤。なかなか進まない。

 どうしても年内に読んでおきたい本があるので、池袋東武七階の旭屋書店で本を購入。
●内田樹『日本辺境論』(740円+税/新潮新書)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books]
●菅原琢『世論の曲解』(820円+税/光文社新書)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books]
●大森望責任編集『NOVA 1』(950円+税/河出文庫)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books]
以上三冊。もう眠いので今日はとりあへずここまで。


12月25日(金)

 ダグラス・C.メリル&ジェイムズ・A.マーティン『グーグル時代の情報整理術』(千葉敏生訳/1300円+税/ハヤカワ新書juice)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books]を読む。もう情報整理の本はうんざりするくらゐ読んでゐるが、ついつい手に取ってしまふ。とりたてて画期的な内容ではないが、Googleにゐた人が書いてゐるから、さういふ意味で興味深い。子供の頃から失読症で苦しんだとか。整理法は人それぞれ最適な方法は違ふから、画一的にかうしなさいとルールを決めることはできないといふ。当然である。その上で何かと便利な道具を示してくれる。職歴から当然Google製のものが多いが、Appleのものも紹介してゐる。簡単にいふと、分類を考へて整理するより検索機能を活用してあまり分類に頭を使はない方が効率的だとか、ネット上での共有機能を利用することとか、Google DocsやZoho.comで文書(ファイル)もなるべくネットの向かう側に保存し手元に置かないようにすることで、いつでもどこでも仕事ができるやうになるし、ハードディスクの管理に時間と手間を使はなくていいし、検索機能も効率的に活用できるやうになる……といふやうなことである。そんな使ひ方があったのか! と驚くやうなことはなかったが、自分が何を重視してどう情報や仕事を管理していけばいいかは改めて納得できる。
 この本を読んでゐたら「間逆」といふ語が出てきた。何なんだこれは。「真逆」と書きたかったのか。いづれにせよ私の大嫌ひな言葉である。「正反対」の謂だらう。今の若い人は知らないかもしれないが、「真逆」は「まさか」と読むのだ。だから、古い変換辞書でも「まさか」と打って変換すれば単語登録せずに漢字を出せる。私は使はないけど。全然関係ないが、「口腔」といふ漢字が出ないと思ってゐる医学・歯学系の人は「こうこう」と打って変換すれば単語登録せずに済む。本来これは「こうこう」と読むのだ。

 この頃、毎朝起きるのが遅くて以前よりも一本遅い電車で出勤してゐる。有楽町線直通新木場行きに乗って、途中で東上線池袋行き急行に乗り換へるのだが、有楽町線で鼾男に遭遇し、すぐに乗り換へるのだからと思って三駅我慢し、急行に乗り換へたらまた鼾男が待ち構へてゐた。三駅ほど先で別の車両に移動したのだが、本当に鼾男は多い。さういふ時代なのか。帰りの電車内にゐたりするともううんざりである。車両を移動するにしても、それまでは気になって本が読めないから、大迷惑である。電車内での鼾は法律で禁じてほしいものだ。車内放送もくだらない優先席のことや携帯電話のこととか、中で待てとかベルが鳴り終わったら発車するとかどうでもいいようなことよりも、鼾は他の乗客に迷惑をかけるから控えるように警告すべきである。さういへば、鼾女には遭遇したことがない。目を瞠るやうな若い美女が電車内で大鼾をかいて寝てゐたりすることは絶対にない(と信じたい)。若い鼾男もゐない。鼾の発生源は、中年以降の太り気味の男が顔を前に埋めるやうな姿勢で寝てゐるか、太ってゐなくても首を仰け反らせるやうにして眠ってゐる場合かである。世の中に太ったおばさんはたくさんゐるが、電車内で鼾はかかない。不思議である。


12月24日(木)

 新城カズマ『15 x 24 link four Riders of the Mark City』(638円+税/集英社スーパーダッシュ文庫)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books]読了。意外な過去やいきさつ、真相などが明らかになったりならなかったり。あと二巻出て完結だといふ。多分明日あたり。しかし、私の場合またこれは福岡に送られてくるのだらうか。さうするとそれを受け取るのは二月末の引越しのときである。きっと登場人物のことなどすっかり忘れてゐるに違ひない。

 ジャクリーン・ケアリー『クシエルの使徒1 深紅の衣』(和爾桃子訳/880円+税/ハヤカワ文庫FT)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books]を読み始める。今のところ穏やかに話は進んでゐるが、やはり閨房ファンタジイなのだらう。

 紀伊國屋書店から、ダグラス・C・メリル&ジェイムズ・A・マーティン『グーグル時代の情報整理術』(千葉敏生訳/1300円+税/ハヤカワ新書juice)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books]、ジャクリーン・ケアリー『クシエルの使徒1 深紅の衣』(和爾桃子訳/880円+税/ハヤカワ文庫FT)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books]、D・ショーカー『Rグラフィックス自由自在』(4700円+税/シュプリンガー・ジャパン)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books]が届く。一冊は今読んでゐる本。『グーグル時代の』は面白さう。この手の本の抗い難い力には逆らへないので、明日にも読んでしまふかも知れない。

 早川書房から、SFマガジン2010年2月号Amazon.co.jp , bk1]をいただきました。ありがたうございました。今号は、創刊50周年記念特大号PART II 日本SF篇である。

 年末なので、Amazon.co.jpに本を註文。
●トーマス・C・フォスター『大学教授のように小説を読む方法』(矢倉尚子訳/2800円+税/白水社)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books]
●関電工品質工事管理部『絵とき 百万人の電気工事』(1800円+税/オーム社)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books]
●高橋秀憲『配線器具入門 』(2000円+税/オーム社)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books]
を註文。なぜか突然、電気関係の本。来月末に引越しをするから、いろいろ確認したいことがあるのだ。工事は本当は電気工事士の資格がないと違法工事になってしまふのだが、私はあまりさういふことは気にしないのだ。

 それよりも、引越し時には本棚をたくさん組み立てなくてはならない。大量の螺子をねじ込まなくてはならないことに気がついた。いつもは手動でぐりぐりとねじ込んでゐたのだが、もうそんなに若くないのだし、機械の手を借りてもいい頃合ひだらうと思った。そこで、電気の力で螺子を回したり、ドリルで穴を開けたりする機械であるブラック&デッカー 【BLACK&DECKER】スマートドリルドライバー KR111REをDIY-TOOL STORE楽天店に註文した。一緒にドリルやドライバーの交換部品セットも註文。[ブラック&デッカー] ドリル・スクリュードライバービット23本セット [15095] である。これでいくら螺子があっても疲れないだらう。たくさん本棚を組み立てて本を収納しよう。
 工具を買ふとなぜか妙に嬉しい。


12月23日(水)

 新城カズマ『15 x 24 link four Riders of the Mark City』(638円+税/集英社スーパーダッシュ文庫)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books]を読みながら外出。登場人物が15人もゐるから、誰が何をしてゐたのか思ひ出せない。みんなは判るのだらうか。忘れないのだらうか。何となく思ひ出しながら先を進める。面白い。ときどき出てくる所謂「ら抜き言葉」以外は。映像的なので頭の中に情景が浮かんできてどんどん読み進められる。それでも、少し残ってしまった。続きはまた明日。

 ジャクリーン・ケアリー『クシエルの使徒1 深紅の衣』(和爾桃子訳/880円+税/ハヤカワ文庫FT)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books]を訳者の和爾桃子さんからいただきました。ありがたうございました。一昨日に註文してしまったけれども。たぶん、そちらは明日にでも届くだらう。

 今日は来年一月末に予定する引越しに関する見積もりを依頼した。本は段ボール箱200個くらゐでせうと云はれる。そんなものかと思ふ。今週末から箱詰め作業が始まる。


12月22日(火)

 長山靖生『日本SF精神史』(1200円+税/河出ブックス)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books]を読む。これは面白い。明治、大正から、『日本沈没』刊行年と昭和50年の「浸透と拡散」までのおよそ150年の歴史を辿る内容である。ちゃうど私がSFを読み始める頃までの歴史を教へてくれるのだ。ほとんど馴染みのなかった明治期のSF小説が、所謂第一世代のSF作家たちへとつながる流れは見事である。このやうに全体を見る視点で物事を見るのは意外に難しいことなのだ。SFを読む者はみな本書を読んだ方がいいと思ふ。


12月21日(月)

 また福岡の住所に送られた本が福岡の別の住所に転送されてゐて、それを昨日やうやく受け取ることができた。新城カズマ『15 x 24 link four Riders of the Mark City』(638円+税/集英社スーパーダッシュ文庫)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books]である。ありがたうございました。でも、やはり私に送ってくれる理由が判らない。

 デイヴィッド・ウェーバー『オペレーション・アーク 2』(矢口悟訳/880円+税/ハヤカワ文庫SF)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books]を読み終へる。長い『闇よ落ちるなかれ』みたいな感じである。最初に、こんな変はった世界になった理由があったはづなのだけれども、忘れてしまったではないか。
 この本の中で「直截」に「ちょくさい」といふ振り仮名を振ってゐたのだけれど、これは「ちょくせつ」と読むのではなかったか。


12月20日(日)

 今日はまたリフォーム会社との打ち合はせである。最終回となる予定で、次回以降は工事進行中の確認作業で会ふことになる。金がかかって大変である。

 デイヴィッド・ウェーバー『オペレーション・アーク 2』(矢口悟訳/880円+税/ハヤカワ文庫SF)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books]を読みながら出かける。最初、第一巻の内容を忘れてしまってゐて、ちょっと戸惑ふ。つい先日読んだばかりだといふのに。この人名の独特のカタカナ表記がかなり読みづらい。どうしても気になってしまふのだ。ノォオルマァンとか。小さい母音は子音と母音を分離して書けない日本語で新たな子音と母音の組み合はせを表現するために使ふものだといふ認識がある。だから、フォとか、ドゥとかは判るのだが、ノォは判らない。foとduの伝でいけばnoとなってノではないかと思ふわけだ。

 日曜日に出かけると疲れる。さういふ問題ではなく打ち合はせで疲れただけかも知れないが。仕方がないので、本を註文する。疲れたときには本を註文しなければならない。さういふものだ。
●ダグラス・C・メリル&ジェイムズ・A・マーティン『グーグル時代の情報整理術』(千葉敏生訳/1300円+税/ハヤカワ新書juice)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books]
●ジャクリーン・ケアリー『クシエルの使徒1 深紅の衣』(和爾桃子訳/880円+税/ハヤカワ文庫FT)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books]
●D・ショーカー『Rグラフィックス自由自在』(4700円+税/シュプリンガー・ジャパン)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books]
以上三冊。いつものやうに関係の本は高い。

 今日は疲れたからもう寝よう。


12月19日(土)

 中原英臣『数字のウソを見破る』(PHP新書/700円+税)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books]読了。ごく真当なことが書いてある。健康診断の検査項目の「正常範囲」の数値にほとんど意味がないといふことや、医師不足の問題は医学部の定員増では解決しないといふことや、テレビの視聴率を1%以下の数値の変動に一喜一憂しても何の意味もないことなどを丁寧に説明してくれる。意外性はあまりない。

 新しい住まひでガスファンヒータと電気セラミックファンヒータを受け取る。ガス栓の新型への交換工事も済んで、やうやく暖房ができるやうになった。待ってゐるときが寒かった。

 帰りの電車の中で読む本がなくなってしまったので、慌てて池袋東武の旭屋書店で本を購入。
●デイヴィッド・ウェーバー『オペレーション・アーク 2』(矢口悟訳/880円+税/ハヤカワ文庫SF)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books]
●ダン・シモンズ『ヘリックスの孤児』(酒井昭伸・嶋田洋一訳/900円+税/ハヤカワ文庫SF[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books]
そのついでにBRUTUS 2010年 1/15号も購入。「本が人をつくる。」といふ特集だったからだ。

 昨日届いたLocus 12月号を眺めてゐたら、本を買ひたくなったので、紀伊國屋書店に註文。
○James P. Blaylock The Shadow on the Doorstep (ISFiC Press, November 13, 2009) [Amazon.com, 紀伊國屋]
○Daryl Gregoory The Devil's Alphabet (Del Rey, November 24, 2009) [Amazon.co.jp, 紀伊國屋]
○Jonathan Strahan, ed. Eclipse 3: New Science Fiction and Fantasy (Nghtshade Bookk, October 2009) [Amazon.co.jp, 紀伊國屋]
○Jasper Fforde Shades of Grey (Viking, December 2009) [Amazon.co.jp, 紀伊國屋]
 ブレイロックのは短篇集。どこかで見かけた作品ばかりのやうな気がする。ジャスパー・フォードは今までのシリーズ作品とは別のものだといふので註文してみた。社会的な階層によって見える色の数が違ふ世界(?)らしい。

 ちょっとこの頃、本を買ひすぎてしまったやうな気がする。


12月18日(金)

 コッパード 『天来の美酒/消えちゃった』(南條竹則訳/648円+税/光文社古典新訳文庫)[Amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books]を読み終へる。コッパードは短篇の神様である。神様だから失敗はない。でも、神様のことだから、私の理解を越えている作品もあるやうだ。
 不思議なことや妙なことが起こりさうな雰囲気で話が進んでいくと本当に不思議なことや妙なことが起こる。人が消えるとか、擦れ違ふ夫婦とか、叔母が死んだら飲まうと思ってゐた酒を飲んでしまったときのこととか、墓場の死人たちの生活とか、この世の終はりに悩む暦博士とか、余計な説明はなく、呆気なく、身も蓋もないといふか、あまりにもまっすぐに話が進んでそれが逆に驚きをもたらしたり、コッパードにしか書くことのできない短篇小説である。
 私は何を読んで感激したのか全然覚えてゐないものの、随分前からコッパードが好きで、短篇集はほとんど持ってゐる。でも、好きだといふくせにほとんど読んではゐないのだった。コッパードの英語はちょっと難しいのだ。買ひ集めた本はいつか何かに役立てたいものだ。

 河本敏浩『名ばかり大学生』(740円+税/光文社新書)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books]を読む。学生の学力低下が問題にされるこの頃だが、本当に大学生全体の学力が低下したのか、「ゆとり教育」が悪かったのか、これからどうすべきなのかといったことを考へる本である。いろいろ知らなかったことや気付かなかったことが判り、私にとっては収穫の多い本であった。昔から愛知県は特殊だからと聞いてゐたが、何がどう特殊だったのか初めて知った。浪人生が少なくなった理由として、まったく気付いてもゐなかった背景があるのに驚いた。それは、難関校の入学試験に対応するには、一年二年浪人したからといって逆転できなくなってゐるのだといふ。もう、中学受験の頃にはカードが配られてゐると著者はいふ。その頃から大学入学試験にも劣らないやうな試験を受けてゐる子供たちだけが難関校に入れるのだから。なるほどさういふことなのか。大学入学のみを勉強の動機付けとしてゐる高校生にとって、一部の難関校を諦めた瞬間に、勉強をせずに大学に入り卒業することが約束される(経済的に許されればの話だが)ので、といふよりさういふ大学にしか入れなくなるので、勉強をする気を失ふのだ。もううんざりするほど聞かされてゐることだが、出来る学生と出来ない学生が二極化し、その格差は親の収入と意識に大きく依存してゐることや、何もかも親に指示されないとできなくなってゐることなどが、その原因や背景とともに判りやすく説明されてゐる。さっきも書いたが、私にとっては大きな収穫となった内容であった。

 アメリカのSF情報Locusの12月号が届く。

 なぜか不意にテリー・プラチェットのディスクワールトを読みたくなったので、紀伊國屋書店に何冊か註文。
○Terry Pratchett The Light Fantastic (HarperTorch) [Amazon.co.jp, 紀伊國屋]
○Terry Pratchett Hogfather (Harper) [Amazon.co.jp, 紀伊國屋]
○Terry Pratchett Men At Arms (HarperTorch) [Amazon.co.jp, 紀伊國屋]
○Terry Pratchett The Truth (HarperTorch) [Amazon.co.jp, 紀伊國屋]
○Terry Pratchet Moving Pictures (HarperTorch) [Amazon.co.jp, 紀伊國屋]
○Terry Pratchett Guards! Guards! (HarperTorch) [Amazon.co.jp, 紀伊國屋]
以上である。読むのかね、本当に。


12月17日(金)

 コッパード 『天来の美酒/消えちゃった』(南條竹則訳/648円+税/光文社古典新訳文庫)[Amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books]はもう少しで読み終はるが、勿体ないのでゆっくり読む。

 今日は疲れてゐたので、池袋東武の旭屋書店で、
●長山靖生『日本SF精神史』(1200円+税/河出ブックス)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books]
●河本敏浩『名ばかり大学生』(740円+税/光文社新書)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books]
●中原英臣『数字のウソを見破る』(PHP新書/700円+税)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books]
を買ふ。眠い、もう駄目だ。


12月16日(水)

 姜尚中『悩む力』(680円+税/集英社新書)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books]を読む。2009年のベストセラーに名を連ねてゐるので、何となく気が進まないが手に取った。もっと売れてゐなければ早く買へたのに……と思ひながら。自分の知性を信じて悩み抜くべきだといふことと云ってよいだらうか。そこで、知性とは何かといふやうなことも考へながら「私」「金」「青春」「信じる者」「愛」「働くこと」「生と死」「老いること」などを取り上げていく。これらを考へる手がかりに夏目漱石とマックス・ウェーバーを使ふところが古くて気持ちがいい。新しければいいってものではないのだ。どれもが独創的な発想ばかりといふ訳でもないが、終章「老いて最強たれ」は新鮮だった。老人の今からの力は「攪乱する力だといふ。死を引き受けて最強になれといふ。私はこの著者よりも13歳若いが、今から最強になる準備をしようと思ふ。この頃たしかに「小」とか「プチ」とかがつく、ちまちましたものが多すぎる。「ちょい悪おやぢ」なんか死んでしまへばいいのだ。新しい破壊力を身に付け、横着で怠惰で偏屈な老人にならうと思ふ。まあ、この本を読む前からそのつもりだったのだが。

 コッパード 『天来の美酒/消えちゃった』(南條竹則訳/648円+税/光文社古典新訳文庫)[Amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books]を読み始める。素晴らしい。これこそ短編小説の味はひである。

 今度の週末に新しい住まひで寒くて暗い気持ちにならないやうに電球を買った。紙袋いっぱいに買ったら1万円を超えてしまった。今回は電球型蛍光灯が多いからだ。本を一万円買っても何ともないのに、電球を一万円買ふと買ひ過ぎてしまったやうな気になるのはなぜだらうか。照明がなければ夜に本を読むこともできないのに。


12月15日(火)

 メリッサ・マール『妖精の女王』(相山夏奏訳/1060円+税/創元推理文庫)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books]を読み終へる。結末は意外な方向へ展開し、思ひのほか楽しめた。全体的にはかなり甘い雰囲気で、サマークイーンになるべき女性に近寄るサマーキングと、その女性を愛する若者と、サマーキングを恨むと同時に愛するウィンターガールと、いろいろ愛憎渦巻くファンタジイなのだ。読み終へて、これが全四巻本の第一巻だと知って驚く。単発だと思って抱いてゐた好印象が少し減ってしまった。

 ドン・アスレット『アメリカ・ナンバーワン最強整理術』(嘉山由美子訳/1300円+税/トランスワールドジャパン)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books]を読む。何なんだ、この本は。どうしようもなく当たり前のことが書き並べてあるだけの本。どうしてこれが売れるのか、どうしてこの著者がアメリカ1の「掃除の達人」なのか。アメリカ人はそんなに掃除や整理が苦手なのだらうか。よくあるがらくたを捨てない理由を列挙してそれが如何にくだらないことかを示し、必要のないものを捨てる基準を示し、残したものの整理方法を考え、自分の基準を作って今すぐがらくた処分を始めよと激励してくれる。間違ったことは云ってゐない。「もったいなくて使へないやうなものは持つな」といふ言葉には強く共感できるが、私はすでにさう思ってゐるのだから、もったいなくて使へないやうなものは持ってゐない。十年以上前の年賀状や娘が幼かった頃の絵画などを捨てない妻にどう対処したらいいかとか、ゴミにしか見えないがらくたを貯め込む娘にどう対処したらいいかは書いてゐない。
 ときには興味深いことも書いてある。印象に残ったのは「モノが多い人は、自尊心が低い」というもの。なるほど、今度誰かに云ってみようか。怒らせさうだけど。

 電車の中で心安らかに本を読むのはなかなか難しい今日この頃である。今日は前に立ってゐた若い男のイヤホンから漏れてくる音が気になって本に気持ちが集中できなかった。漏れてくる音は決まってカシャカシャと聞こえる。高音が漏れてくるからだらう。ずーんずーんと響くやうな音は漏れてこない。
 もう一つ気になり始めると困るのが、車内の案内放送である。発車前の電車の中で、「まもなく発車します。ご乗車のままでお待ちください」とかいふ言葉が、私は気になって仕方がないのだ。まもなく発車する列車の乗客にそのまま車内にいることを要請する必要がどうしてあるのか。あと2分で発車だと判った途端に皆がホームに走り出て、売店で買ひものをしたり、時刻表を読んだりして、発車直前の駆け込むなんて状況は私は見たこともないし、これから起こることは到底想像もできない。まもなく発車すると案内したからといって誰も車外には出て行かないのだ。どうしてあんなにしつこく車内から出ずに待てと云ふのか。やはり、もう諦めて外へカシャカシャと音盛れする程の音量で音楽を聴いて案内放送を耳から締め出すべきなのだらうか。本を読むために。


12月14日(月)

 メリッサ・マール『妖精の女王』(相山夏奏訳/1060円+税/創元推理文庫)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books]を手に取って出勤。妖精の王に目をつけられた、妖精が見える女の子の話。順調に読み進めるが、ときどき入ってくる斜体が読みにくい。別の書体にするとか何とかすればいいのに。

 紀伊國屋書店から、畝山智香子『ほんとうの「食の安全」を考える』(1600円+税/化学同人)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books]、コッパード 『天来の美酒/消えちゃった』(南條竹則訳/648円+税/光文社古典新訳文庫)[Amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books]、福島正実『未踏の時代』(720円+税/ハヤカワ文庫JA)[Amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books]、ドン・アスレット『アメリカ・ナンバーワン最強整理術』(嘉山由美子訳/1300円+税/トランスワールドジャパン)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books]、姜尚中『悩む力』(680円+税/集英社新書)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books]が届く。

 夕方から頭が痛くなってくる。普段より二時間くらゐ早く帰る。頭が痛いときは、匂ひや音、光に敏感になる。主に不快な刺激に対して。電車の中が臭く感じられて気分が悪くなるが、駅で降りて家へ向かって急いで歩いてゐるときに、歩き煙草の男のそばを通ったりするともう吐きさうになる。心の中で煙草を咽喉に詰まらせて死んでしまへと呪っておいたので、今ごろ苦しんでゐるに違ひない。
 くだらないことを書いてゐないで、もう寝なければ。


12月13日(日)

 マイク・シェパード『新任少尉、出撃!』(中原尚哉訳/1000円+税/ハヤカワ文庫SF)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books]読了。面白い。息もつかせぬ展開で最後まで進んでいく。軍隊SFは苦手なのだが。苦手といっても読めば面白い。軍隊が舞台だから、主人公がいろいろな試練を乗り越えて成長するものだし、仲間との連帯感、隊への所属意識は否応なく高まると決まってゐる。それが嫌だなどといふ捻くれ者は少ないだらうが、私は成長と変かが嫌ひだったりする。困難に立ち向かふのも嫌だ。単なる怠け者である。
 本の帯に「美貌の海軍士官の華麗なる戦い!」なんて書いてあるが、主人公の容姿に関してはほとんど描写がなかったような気がするのだが、私が忘れっぽいだけだらうか。華麗なる戦ひといふのも、そんな印象はなかったのだが。泥まみれになって、地雷原や増水した川を進むばかりでどこが華麗なんだか。かういふのをこの頃は華麗といふのか。戦ひに華麗なものなどないと私は思ふし、この本でも華麗なものだとして描いてはゐないと思ふ。

 昨日は内装工事前の何もない部屋でリフォーム業者との打ち合はせ後、宅配便でガスファンヒータが届くのを待ってゐたのに全然来なくて、寒くて暗くて風邪が悪化してしまったやうだ。日曜日はほとんど寝て過ごした。


12月11日(金)

 風邪をひいてしまった。止めどなく鼻水が垂れてきて本が読みにくくてかなはない。仕方がないので、もう寝る。本が読めなかったら起きてゐても仕方がないから。


12月10日(木)

 紀伊國屋書店に本を註文
●畝山智香子『ほんとうの「食の安全」を考える』(1600円+税/化学同人)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books]
●コッパード 『天来の美酒/消えちゃった』(南條竹則訳/648円+税/光文社古典新訳文庫)[Amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books]
●福島正実『未踏の時代』(720円+税/ハヤカワ文庫JA)[Amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books]
●ドン・アスレット『アメリカ・ナンバーワン最強整理術』(嘉山由美子訳/1300円+税/トランスワールドジャパン)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books]
●姜尚中『悩む力』(680円+税/集英社新書)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books]
 コッパードは最も好きな短篇作家の一人。期待して註文。『未踏の時代』は昔ハードカバーを買ったはづだがどこにあるか判らないので買ってみた。
 再び胡散臭い本を買ひたい気分になったので、整理術の本を註文してみた。それにしても夥しい数の整理術の本が出てゐるものだ。今まで知らなかったのだが、整理術に風水とかスピリチュアル系の胡散臭さ最強の本がたくさん出てゐるのだ。さすがにそんなものは買ふ気にならないので、普通の最強整理術にしてみた。実は私はきちんと整理できる方なので、整理法には全然困ってゐないのである。我ながらこんなに机の上をすっきりさせてゐる人も珍しいと思ふくらゐなので、自分で書けるんぢゃないかと思へるほどだ。そのときに備へてときどき整理術の本を買ってみるのである。次に最強に胡散臭い自己啓発本を買ってみようと思ったのだが、結構まともな本を註文してしまった。姜尚中である。もっと胡散臭い本にすればよかったかも。

 マイク・シェパード『新任少尉、出撃!』(中原尚哉訳/1000円+税/ハヤカワ文庫SF)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books]の続き。今朝は鼾男に遭遇しなかったので、快適な読書ができた。ところが、帰宅時の電車の中で大鼾に襲はれた。やむなく次の駅で隣の車両に移った。でも、あれで10ページくらゐ読むのが遅れたやうな気がする。

 東京創元社から、メリッサ・マール『妖精の女王』(相山夏奏訳/1060円+税/創元推理文庫)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books]が届きました。ありがたうございました。新しいロマンス/ファンタジーの新シリーズ第一巻だといふ。


12月9日(水)

『フリー』(1800円+税/日本放送協会)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books]を手に取って出勤。また電車の中に鼾男が! 前に座ってゐる男のイヤホンからかしゃかしゃいふ音が漏れてきてゐる。社内放送は全く耳に入らなくなったから(そのせゐで乗り替へ案内を聞き逃してしまふほどである)何の支障もないのだが、鼾と音楽の音漏れだけは意識の中へ深く侵入してくる。決して防ぐことができない。耳をこじ開け、意識の奥深くへ。でも、終点で電車を降りるとき、密かに呪って置いたから、きっと今ごろ不愉快な思ひをしてゐるはづである。
 いや、『フリー』の話だった。無料経済の話は興味深いが、特に15章の最初の方はSF作品における無料経済や評判経済の例を挙げてゐるのは面白い。フォースター、クラーク、ドクトロウ、スティーヴンスンの小説が紹介されてゐる。ドクトロウ『マジックキングダムで落ちぶれて』では、まさに評判経済で動く世界が描かれてゐたことをやうやく思ひだした。チャールズ・ストロスも『アッチェレランド』で恵与経済(『フリー』では贈与経済)を詳細に描いてゐる。SFといふと科学や技術の未来を描くことが多かったが、それに伴ふ社会や経済に注目すると面白いと思ふのだが、私はその分野は少々苦手である。だからこそ、かういふ本を読んで時代の流れを読み誤らないやうにしようと心がけてゐるわけだが。

 帰りはマイク・シェパード『新任少尉、出撃!』(中原尚哉訳/1000円+税/ハヤカワ文庫SF)を読みながら。これも長いシリーズなのか。ハヤカワ文庫SFは戦争SFのシリーズばかりになってしまひさうではないか。

 職場で縦書き文書を作らうとして驚いた。何を使へばいいのだらうか。今、簡単に入手できる縦書き対応のワープロソフトがないことに気がついた。TeXで作ってみようとしたけれど、うまく出来なかった。困ったものだ。


12月8日(火)

『フリー』(1800円+税/日本放送協会)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books]を手に取って出勤。まだ読み終はらない。特に関心があるのが評判経済なのだが、そこに出てきた一つの例を読んで、自分は何年もの間、評判市場において懸命に活動してきたことを知ったのである。学術論文における被引用件数に基づくインパクトファクターがそれだ。その数値が高いほど研究者の社会の中で高い評価を得たといふ指標となる。その数値を積み重ねて、さまざまな助成金の申請や新しい仕事を探すのに利用してきた(というか必要になっていた)。二十年以上も前から評判経済の中で生きてきた地球人はそんなに多くないはづだ。

 ここ数日朝晩はずいぶん寒くなってきた。30分近く最寄り駅まで歩いてから電車に乗って出勤するので、今週からコートを着て家を出ることになった。歩いてゐるときはそれでちゃうどいいのだが、電車に乗ると暖房が入ってゐるやうで、かなり暖かい。暖かいとどうなるかといふと、眠くなる。20分もすると眠くて倒れさうになってくる。とても本を読める状態ではない。そんなわけで、一日20分ほどの読書時間が暖房による睡眠誘発によって失はれてゐる今日この頃なのだ。

 マイク・シェパード『新任少尉、出撃!』(中原尚哉訳/1000円+税/ハヤカワ文庫SF)を訳者の中原尚哉氏からいただきました。ありがたうございました。若いヒロインの活躍する戦争SFである。それにしても、最近ハヤカワ文庫SFは戦争SFが多くないか。


12月7日(月)

 クリス・アンダーソン『フリー』(1800円+税/日本放送協会)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books]を手に取って出勤。早速電車の中で読み始めたのだが、なんと今日も鼾をかいてゐる奴が電車の中にゐた。なぜなんだ。次第に、鼾男を送り込まれてゐるやうな気分になってくる。どうして私と同じ電車に鼾男がいつもゐるのか。それは陰謀だからに違ひない。鼾男達の陰謀である。鼾男の陰謀のせゐで私は今眠くて仕方がない。恐るべし、鼾男。


12月6日(日)

 トマス・J・スタンリー『なぜ、この人たちは金持ちになったのか』(838円+税/日本経済新聞出版社)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books]を読み終へる。住宅に関しては日米で状況の異なることもあるのでそのまま適応はできないだらうが、概ね日本でも同様に考へていいのかも知れない。まあ、私は大金持ちになったことはないので、自分の体験で検証することはできないのだが。億万長者になるには、人とうまくやっていくことが一番大事らしい。この本によれば。そして、運動が好きなのだといふ。誰ともうまくやっていけず、運動嫌ひな私は金持ちになれさうにない。それ以前に、固定給料で収入を得てゐては駄目なのだ。組織の中で他人の下で働くことは金持ちにはなれないといふことである。中には私の考へと一致するものもある。たとへば、ステータスシンボルを所有するのに大金を使ったり、それに喜びを感じることはないこととか。いづれにせよ、私はこの手の本を読んで自分の生活態度を改めようといふ気が微塵もないので、その時点でもうこのやうな本に書いてある方法では金持ちになれないのである。

 それにしても、どうしてこの手の金持ち本を読んで自分が面白さを感じるのかどうもよく判らない。

 二ヶ月くらゐ前に受け取ってゐて、やうやく昨日手にした新城カズマ『15×24 link one せめて明日まで、と彼女は言った』(638円+税/集英社スーパーダッシュ文庫)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books]、『15×24 link two 大人はわかっちゃくれない』(667円+税/集英社スーパーダッシュ文庫)[Amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books], 『15×24 link three 裏切者!』(533円+税/集英社スーパーダッシュ文庫)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books]を読んでみた。頻出する所謂「ら抜き言葉」に苦しみながら。自殺で知りあった人と一緒に死ぬ約束をする少年が登場するところから話は始まって、何だかいろんな人が出てきて、いろいろな事件と話が絡みあって、夥しい数の登場人物がとにかく走り回って、私の頭では対応できなくなってくる。誰がどこにゐたのか、何をしてゐたのか、まったく把握できてゐない。が、勢ひに押されて最後まで読む。とはいっても、三巻では完結してゐないのだが。
 とにかく登場人物が走り回ってすれ違ひ続ける話は読んでゐてちょっと疲れてしまふ。コニー・ウィリスの作品のやうに。疲れるけれども、決してそれは不快な疲れではなく、読み終へたあとに心地よさを残してくれる疲れである。普通なら、四巻以降は自分で買って読みたいと思ふところだけれども、頻出する所謂「ら抜き言葉」がつらいので、多分買はない。


12月5日(土)

 ハーブ・エッカー『ミリオネア・マインド大金持ちになれる人』(571円+税/知的生きかた文庫)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books]を読む。そんな気の持ちやうで金持ちになれるかと思ったが、読んでみれば、生き方とか仕事に対する態度とかそんな話なので、内容自体はそんなに間違ってはゐないと思ふ。ただ、それだけで金持ちになれる訳ではないだらう。金持ちがさういふ考へであることが多いからといって、それが金持ちである理由だとは限らない。何かと何かの間に関係があるからといって、片方がもう片方の理由であるとは限らないのだ。結果であるかも知れないのである。つまり、金持ちになったからこそ、さういふ考へを持てるやうになった可能性はある。たとへば、「金持ちになれる人は「成功した人」と付き合ひ、お金に縁のない人は「失敗続きの人」と付き合ふ」といふのがあるのだが、金持ちになったから「成功した人」と付き合ふやうになれた可能性はないのか。そもそも相関関係があるからといって因果関係があるとは限らないのだ。どちらがどちらの原因なのかを検証するのはまた別の解析が必要だ。
 このとほりに生きてゐても大金持ちになれない人もゐるに違ひない。いや、さういふ人はこのとほりにできなかったのだと云はれるかも知れない。かういふことは、まったく同じ条件下での対照実験を実行できないから検証するのは難しいし、同時に否定するのも難しい。「さうとは限らないかも知れない」とは云へても「さうではない」と断言はできないのだ。
 そんなふうに「本当かね」と疑ひながら最後まで読んでしまふ。さういふ疑ひこそが、本書に書いてあることを実行できない原因である、だからこそ大金持ちになれないのだと、この本の信奉者なら考へるだらう。そんなわけで、私は相変はらず金持ちになれてゐない。

 ずいぶん前に福岡の住所に送られてきた新城カズマ『15×24 link one せめて明日まで、と彼女は言った』(638円+税/集英社スーパーダッシュ文庫)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books]、『15×24 link two 大人はわかっちゃくれない』(667円+税/集英社スーパーダッシュ文庫)[Amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books], 『15×24 link three 裏切者!』(533円+税/集英社スーパーダッシュ文庫)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books]をやうやく受け取る。ありがたうございました。それにしても、著者の方とはまったく面識はないし、私の得意とする分野の本でもなささう。読んでみれば判るかも知れないから、読んでみよう。


12月4日(金)

 遠田潤子『月桃夜』(1400円+税/新潮社)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books]読了。二組の兄と妹の物語である。結末はちょっと説教臭い。奄美の奴隷の如きヤンチュの運命は山の神によって残酷なまでに定められてゐた。妹は自分の命で兄を助け、兄は鳥になって世界の終はりがやって来るまで海の上を飛び続ける。希望と絶望の物語なのだ。

 紀伊國屋書店から、井田彰『新書1冊を15分で読む技術』(760円+税/祥伝社新書)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books]、トマス・J・スタンリー『なぜ、この人たちは金持ちになったのか』(838円+税/日本経済新聞出版社)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books]、ハーブ・エッカー『ミリオネア・マインド大金持ちになれる人』(571円+税/知的生きかた文庫)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books]、クリス・アンダーソン『フリー』(1800円+税/日本放送協会)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books]が届いた。まづは、『新書1冊を15分で読む技術』を読んでみた。15分もかからずに読み終はってしまって、大損した気分である。気持ちを集中して、文字を一文字づつ追ふのではなく、数個の塊として目にとらへ内容を把握する訓練をせよといふ内容である。その練習のための道具が多数印刷されてゐる。だから、すぐに読み終はってしまふわけだが。呼吸法の解説もある。でも、判ったやうな判らないやうな説明が続いてゐて、結局は練習に必要な教材は別に購入せよなんていふ本に比べれば良心的なのかも知れない。
 姿勢とか呼吸法とかいろいろ書いてあるが、読書時間のほとんどは電車の中だからそんなことをしてゐる余裕はないし、呼吸くらゐ好きなやうにしたいものである。そんな訳で、内容自体は目新しいものでもなく、なるほどねと思って本を閉じる。

 アメリカのSF情報誌Locusの11月号が届く。今日はもう目を通す時間はないから明日にでも読むことにしよう。


12月3日(木)

 遠田潤子『月桃夜』(1400円+税/新潮社)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books]を手に取って出勤。奄美の海を漂ひながら怪鳥から聞かされる物語は不思議な響きを持ってゐるやうだ。ちゃうど半分辺り。

 紀伊國屋の書店員が推薦するキノベス09が発表された。トップ10の中で読んだのは森見登美彦『宵山万華鏡』だけである。もう少し読んでゐてもいいのではないかと思ふ。30位までだと、読んだのが四作品。買ったけれども読んでゐないのが、二作品である。まあ、こんなものかも知れない。
 同時に年間ベストセラーも公表されてゐる。総合(文庫・コミック・学習参考書をのぞく)では、村上春樹と香山リカのみ。文庫では、村上春樹と森見登美彦しか読んだことがない。しかし、村上春樹『ノルウェイの森』は20年くらゐ前に読んだもの。別にベストセラーと読みたいとは思はないから、構はないけれども。

 眠くてときどき意識がなくなるやうになってきた。今日はもう寝よう


12月2日(水)

 ル=グウィン『ギフト』(谷垣暁美訳/1600円+税/河出書房新社)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books]読了。これが昨日『ヴォイス』に出てきたオレックとグライが若いときの物語なのかと思ひながら読む。文字と本はここでも個人的な事柄ながらも重要な役割を果たす。人は物語を生きるのだといふことがよく判る作品である。

 紀伊國屋書店から、『住まいの収納300の知恵 改訂新版』(2381円+税/ニューハウス出版)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books]、『大人の上質インテリア』(1300円+税/エクスナレッジ)[Amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books]、『大人の洗練インテリア』(1300円+税/エクスナレッジ)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books]、ピアズ・アンソニイ『魔王とひとしずくの涙』(山田順子訳/980円+税/ハヤカワ文庫FT)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books]が届く。註文したときにこのピアズ・アンソニイの本を書くのを忘れてゐた。

 収納の本に載ってゐる壁面書棚は、やはり文庫本の上にそのまま文庫本を載せてゐる。これはひどい。一体何を考へてゐるのか。いくら立派な書棚を作っても、こんな本の突っ込み方をしてゐては、書物の神の稲妻に貫かれても仕方があるまい。幸ひなことに、本の収納についてはさまざまな例が紹介されてゐて、どれもがこのやうな本の並べ方をしてゐるわけではない。いろいろな書棚を眺めながら、自分の生き方を考へてみる。

 私はあまり縁のない「上質」とか「洗練」に密接な関係のあるインテリアの例が紹介されてゐる本二冊は、ぱらぱらとページを捲ってみると、意外に書棚の例が出てくることに気付く。世の中、そんなに本の収納に困ってゐる人が多いのか。それとも「上質」で「洗練」された住まひに暮らす人は本が好きだといふことなのか。よく判らない。

 書棚の他には長い食卓に興味を惹かれつつ、今日はもう寝る。


12月1日(火)

 ル=グウィン『ヴォイス』(谷垣暁美訳/1600円+税/河出書房新社)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books]読了。言葉と文字と書物に愛と敬意に満ちたファンタジイである。不思議な力を持つ書物にはもっと活躍してもらいたかった。いや、あまり本が活躍すると怖い小説になってしまふから駄目だ。人の本質と未来を告げる力を持つ書物が人々を操る! みたいな下品な話になってしまひかねない。

 この本がよかったので、やはり第一巻を買って読まねばなるまいと思ったら、訳者の谷垣さんが一冊送ってくださったのだ。ありがたうございました! 早速明日から読むことにしよう。

 胡散臭い本を数冊、紀伊國屋書店に註文。
●井田彰『新書1冊を15分で読む技術』(760円+税/祥伝社新書)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books]
●トマス・J・スタンリー『なぜ、この人たちは金持ちになったのか』(838円+税/日本経済新聞出版社)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books]
●ハーブ・エッカー『ミリオネア・マインド大金持ちになれる人』(571円+税/知的生きかた文庫)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books]
●クリス・アンダーソン『フリー』(1800円+税/日本放送協会)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! Books]
以上四冊。『フリー』は胡散臭い本としてではなく、本当に「〈無料〉からお金を生みだす新戦略」に関心があったから。
 胡散臭い本はたくさんある。スピリチュアル系の本はもちろん、ニセ科学とか、あるいは妙に人々の不安を煽るやうな健康関連図書とか。私が嫌ひなのは、自己啓発本と金儲け本。お前は何も判ってゐない、ものの見方を変へ、生活習慣を改め、自分の目標と生き方を見出し、それに向かって弛まず努力すれば必ず展望は開けると云ふ。仕事ができる人間になり、金は貯まり、人生は楽しくなると。私はそんな自己啓発本と金儲け本を買って読むのが好きだ。そして、絶対に変はるまいと決意を新たにするのである。金持ちになるのは実は嫌ではないのだが、自分を変へるのは真っ平ご免である。変はれと囁く悪魔はどこに潜んでゐるか判らない。学校の先生だったり、職場の上司だったり、もしかしたら先輩だったり同僚(同級生)だったりするかも知れない。あるいは家族だったり恋人だったりするかも知れない。自分に合った生き方を見つけてそれに向かって真剣に努力すれば願ひは必ず叶ふなどと無責任な言葉を真に受けて若者が自分探しの旅に出かけて闇の中へ消えていったりするのである。人の話に耳を傾けず、頑なに自分の主張にしがみつき、どうでもいいことに執着する偏屈な老人になりたい。もう十分偏屈なのかも知れないが、油断すると「変はりなさい」といふ甘い囁きに心が動いてしまふか判らない。疲れてゐるときとか、迷ってゐるときに、そんな言葉は心の隙間に忍び込んでくるのだ。だから、敵のやり口を知るためにも、自己啓発本と金儲け本をときどき読んで備へておかなくてはならない。
 二冊は金持ち本。如何にも胡散臭さうでよい。いや、本当はそんなに胡散臭い本ではないやうな気もするのだが、この際いいことにしよう。もう一冊は速読本。一冊15分で新書が読めて何が嬉しいのか私にはよく判らない。今の新書は大抵薄くて文字も大きいから、速読を知らなくても30分くらゐで読めるではないか。30分を15分に縮めて何が嬉しいのか。これを読めばラーメンを一分半で食べられるやうになる! みたいなものではないか。普段から私は三分で食べてゐますよといふことになりかねない。寧ろ私は五分かけて味はってラーメンを食べる方法が書いてある本を読みたい。さうではないか。どちらが美味いかと考へれば、誰も一分半を選ばないに違ひない。それに、そんなに早く新書が読めたら金がかかって仕方がない。


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