10月31日(月)

 Steve Jobsを読み始める。Kindleなので軽い。まだほんの最初のところ。養子の話とか。読みやすいのだが、最後まで読めるかどうかは判らない。途中で飽きるかも知れない。どうやら私は他人の人生にあまり関心が持てないやうだ。小説を読むといふことは、見知らぬ(虚構の)他人の人生を生きることだから、楽しめないはずはないのだが、実在の人物になると関心が薄れるといふことか。
 今日の朝と帰りの電車の中で全体の4%を読んだことになったやうだ。4%か。さうすると、この本を読み終はるのに25日もかかる寸法だ。そんなに朝晩ジョブズの話ばかり読む続けるのははっきり云ってつらい。もう読むのやめようかな。

 今日の電子化本。
◆宮田隆編『分子進化』(共立出版/1998年)
 この分野の進歩は速いのでいまからこの本を読むことがあるかどうかは判らない。

 今月は電子化作業が全然できなかった。電子化しやすい新書の作業が進んでしまって、作業に手間のかかるハードカバーに着手したといふことと、忙しくなってしまったといふことの両方だと思ふ。もっともっと本棚をすかすかにして、思ふ存分新しい本を買ひたいのだが。でも、よく見ると書棚のあちこちに隙間があるので、それなりに作業は進んでゐるのだらうが、まだまだ足りない。


10月30日(日)

『空の都の神々は』読了。スカイといふ都(むしろ城のやうな感じか)で行はれようとしてゐる最高権力の継承に思ひがけず巻き込まれた主人公の戦ひ。奴隷のやうな立場に置かれてゐる神々がゐて、その背景とさまざまな争ひが徐々に明らかになっていく。が、私にはどうもよく全体像が把握できないまま終はってしまったのであった。たぶん、私の頭が弱いからだらう。

 両親の住む実家に行って、処分対象になってゐる(と思はれる)本の中からつい何冊か取り出して帰ってきてしまった。柳田国男『日本の昔話』(新潮文庫)、安野光雅『旅のスケッチ/イギリスII』(文春絵はがき文庫)、村上春樹『風の歌を聴け』(講談社文庫)、『伊勢物語』(角川文庫)、アンデルセン『人魚の姫』(新潮文庫)、アンデルセン『絵のない絵本』(新潮文庫)の六冊。『風の歌を聴け』は持ってゐるのに。『絵のない絵本』は岩波文庫版を持ってゐる。また本を増やしてしまった。


10月29日(土)

 仕事の帰りに「神保町ブックフェスティバル」に寄ってみた。大変な混雑である。歩くのも困難なくらゐである(でも閑散としてゐるよりはずっといい)。神田古本まつりというのが二七日から来月三日まであって、その間の土日にこの「神保町ブックフェスティバル」が開催されるといふことなのか。やうやく判った。すずらん通りに並ぶワゴンには本だけでなく、いろいろな食べ物飲み物も売ってゐる。お祭りだから当然であらう。
 汚損本が半額程度、あるいはそれ以下で売られてゐる。サイン本は定価である。買ひたくなると困るのであまり熱心に本を覗かないやうに気をつけながらふらふらと歩いて回ってから、帰宅。Dojin選書が一冊五百円といふのに心惹かれたが、我慢して帰る。本を減らす努力をしてゐるところなので、今は我慢してゐるが、いつかがらがらになった書棚を埋めるべく、本を買ひまくってやらうと密かに心に誓ふ。


10月28日(金)

 紀伊國屋書店から、紀田順一郎『幻想怪奇譚の世界』(松籟社)[amazon.co.jp, bk1, 紀伊國屋書店]が届く。この一冊だけ時間がかかった。翻訳が三篇収録されてゐると何だか得した気分。

 今日の電子化本。
◆ギル・アメリオ『アップル薄氷の500日』(ソフトバンククリエイティブ/1998年)
 ジョブズの前のCEOがアップル社にやって来てからジョブズに追ひ出されるまでの500日を語った本である。危機的な状態にあったアップルでアメリオはよくやったと、この本を読むと思える。そして、アメリオがいい人に見える。それにしても、アメリオは精一杯のことをしながら常に戸惑ってゐたやうだ。その戸惑ひがどのページからも滲み出てゐる。もう一度やり直せても、どうすべきなのか今でも判らないなどとあまりにも正直に記してゐる。
 アメリオがゐなかったら、もしかしたらアップルはジョブズが来るまでもたなかったかも知れない。
 ジョブズについては、自分を追放した相手だから当然のことだからそんなに褒めてはゐない。折角自分が来て、混乱の極みだった社内を大企業に相応しいやり方を定着させてきたところなのに、零細企業のようにトップの直感や気分で方針を決める会社に戻ってしまったと残念な気持ちを語ってゐるが、それでアップルは躍進することになる。
 仕事を一緒にしなければならないのなら、私はジョブズよりもアメリオがいい。

 そんなわけでジョブズがアメリオを追放するところなどを読みたくなってしまひ、話題のジョブズ本を買ってしまった。金と書庫の空きが少ないのでKindle版である。
○Water Isaacson Steve Jobs (Simon & Schuster) [Amazon.com, Amazon.co.jp, 紀伊國屋]
 Kindle版なので、註文すると同時にダウンロードが始まって手元に届く。が、今すぐ読むわけでもない。もしかしたら読まないかも知れない。日本語版に比べるとずっと安いが、読まない本に使ったと思へば高い。さうならないやうにしたいものだが。


10月27日(水)

 今日も、N・K・ジェミシン『空の都の神々は』(佐田千織訳/ハヤカワ文庫FT) [amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店]を手に取って出勤。やうやく半分。迷路のやうな図書館の場面はなかなかいい。図書館が出てくればいつも喜ぶやうぢゃないかと指摘されたら、そのとほりだと認めざるを得ない。図書館が出てきて嬉しくない奴なんてゐるのか。

 話題のジョブズ本、皆が買ってゐるから買ふみたいで嫌なのだが、こっそりKindle版を買はうかと検討中。

 今日の電子化本。
◆斎藤貴男『安心のファシズム』(岩波新書/2004年)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店]
 この本、読んだ記録が残ってゐないのだが、まさか読んでゐないのだらう。内容の記憶がないのは、読んでゐないからなのか。読んだやうな気がするのだが……。
◆友野伸一郎『対決! 大学の教育力』(朝日新書/2010年)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店]
 これは読んだ記憶がある。

『インクリングズ』のゲラを少し見て寝る。副題がつくらしい。


10月26日(水)

 今日も、N・K・ジェミシン『空の都の神々は』(佐田千織訳/ハヤカワ文庫FT) [amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店]を手に取って出勤。まだ作品世界をうまく把握できてゐない。

 ハンフリー・カーペンター『インクリングズ』の訳者あとがきを書いて送信。昨夜、一度送ったのだが、大事なことを書いてゐないことに真夜中にふと気がついて慌てて、今日追加情報を足して再度送信。それにしても、『魔法使いになる14の方法』(創元推理文庫)にハンフリー・カーペンターの短篇が収録されてゐるなんて、全然気づいてゐなかった。持ってゐたのに、この本。マジェイカ先生といふ子供向けのシリーズ作品が人気は高い(もちろん、本国で)とか、知らなかったことばかり。ルイスとトールキンとウィリアムズのことばかり気になって、著者のことを蔑ろにしてゐたのだらうか。多分、さうなのだらう。

 そんなわけで、今日は少し早めに寝たい。


10月25日(火)

 N・K・ジェミシン『空の都の神々は』(佐田千織訳/ハヤカワ文庫FT) [amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店]を手に取って出勤。まだほんの冒頭。主人公が大国の最高権力継承者の一人に突然使命され、狼狽へながらも、何とか敵と味方を見分けるなどして、生き延びようとするところ。SFマガジンにも作品紹介があった。

 SFマガジン十二月号(早川書房)Amazon.co.jpをいただきました。ありがたうございました。特集は「The Best of 2005-2010」。なぜ英語なのかよく判らない。

 雑誌の十二月号が出る季節なのか。今年も終はりが近づいてきた。


10月24日(月)

 マイク・シェパード『防衛戦隊、出陣!』(中原尚哉訳/ハヤカワ文庫SF)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店]読了。軍隊系の話はあまり好きではないのだが、不本意ながら感動してしまった。能天気な戦闘SFではないので、戦ひの後は決して喜びと解放感は味はへない。他に道がないときに、行くべき道を行った者たちを描いたSFである。

 紀伊國屋書店から、バルガス=リョサ『密林の語り部』(西村英一郎訳/岩波文庫)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店]、松生恒夫『腸は第二の脳』(河出ブックス)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店]、中野三敏『和本のすすめ』(岩波新書)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店]、宮崎駿『本へのとびら』(岩波新書)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店]、浜本隆志『「窓」の思想史』(筑摩選書)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店]、N・K・ジェミシン『空の都の神々は』(佐田千織訳/ハヤカワ文庫FT) [amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店]が届く。あれ? 紀田順一郎『幻想怪奇譚の世界』(松籟社)[amazon.co.jp, bk1, 紀伊國屋書店]は?
 腸の本は期待してゐたものとは少し違った。まあ、少しは腸内細菌の話があるからいいか。窓の話が面白さう。いや、どれも面白さうだが。『空の都の神々は』はまたトールサイズ用のブックカバーに入らない。甚だ不愉快だが、明日から読むことにしよう。


10月23日(日)

 今日も、マイク・シェパード『防衛戦隊、出陣!』(中原尚哉訳/ハヤカワ文庫SF)を読みながら電車に乗る。電車に乗ってどこに行ったのかといふと、映画「ステキな金縛り」を観に行ったのである。場所は都内のとある大学。なぜか大学で今週末封切りの映画を上映したのだった。わざわざこの追ひつめられてゐるときに観に行ったのは、映画に私の住むマンションが登場するから。主人公が私が住んでゐる部屋に住んでゐるといふ設定になって、一年半くらゐ前にカーテンを付け替へたりベランダの鉢を入れ替へたりしてプロの照明を設置して撮影をしたのだった。私はゐなかったけど。仕事から帰ってきたらすべてが終はってゐた。詳細は別館で報告する予定。

 それから、平井呈一の土蔵も見に行った。

 サラ・ムリノフスキ『魔女のサマーキャンプ』(今泉敦子/創元推理文庫)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店]をいただきました。ありがたうございました。第二巻をまだ読んでゐなかったのだ。はやく読まなければ。確か、この机の背後にある書棚の上の方からいつになったら手に取るのかねと怖い目で睨みつけてゐるあの本だ。


10月22日(土)

 今日も、マイク・シェパード『防衛戦隊、出陣!』(中原尚哉訳/ハヤカワ文庫SF)を読みながら出勤。なかなか捗らない。きっと朝の電車の中にゐた鼾男のせゐだ。子供の泣き声は、自分が子供を育ててからは気にならなくなったが、鼾男の発する音には我慢できない。それは鼾男を育てれば不愉快でなくなるのか。でも、嫌だ。それだけは。そんなもの育てたくない。さういへば、まだ電車の中で鼾女には遭遇したことがない。鼾女には我慢できるのだらうか。目も眩むほどの美女の鼾なら我慢できるのか。検証してみないと判らないが、不愉快でなくても気になって読書の邪魔にはなるだらう。

 ハンフリー・カーペンター『インクリングズ』の後書きを書き終へようと思ったのだが、できなかった。あと五枚くらゐは書かなければ。まだ足りない。結局、私が有名作家の作品の解説/後書きを書くと、作者を崇拝するな自由に楽しめといふことを書いてしまふやうだ。気持ちに嘘偽りはないので、それでいいのだが、いつもそんな感じだと能がないではないか。あと、本文のゲラも届いてゐるので、それも直さなければ。


10月21日(金)

 マイク・シェパード『防衛戦隊、出陣!』(中原尚哉訳/ハヤカワ文庫SF)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店]一二〇ページくらゐまで読む。これは、前に買ったハヤカワ文庫トールサイズ用ブックカバーには分厚すぎて収まらないので実に読みにくい。中身は読みやすいけれども。

 久しぶりに紀伊國屋書店に本を註文。
●バルガス=リョサ『密林の語り部』(西村英一郎訳/岩波文庫)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店]
●松生恒夫『腸は第二の脳』(河出ブックス)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店]
●中野三敏『和本のすすめ』(岩波新書)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店]
●宮崎駿『本へのとびら』(岩波新書)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店]
●浜本隆志『「窓」の思想史』(筑摩選書)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店]
●N・K・ジェミシン『空の都の神々は』(佐田千織訳/ハヤカワ文庫FT) [amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店]
●紀田順一郎『幻想怪奇譚の世界』(松籟社)[amazon.co.jp, bk1, 紀伊國屋書店]
 以上七冊。ハヤカワ文庫の新刊とか、岩波新書の新刊。腸の本は題名がちょっと胡散臭い感じがするのだけど、思ひ切って買ってみた。

 今日の電子化本。
『ブースティング - 学習アルゴリズムの設計技法』(森北出版・2006)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店]
 どうしてこんな本を買ったのか。いや、理由は判ってゐるのだが、考へが薄かったのか、頭が悪かったのか、さっぱり理解できなかった。


10月20日(木)

 カサンドラ・クレア『シャドウハンター 骨の街 下』(創元推理文庫)読了。まだ長いシリーズの第一部だけなのだが。妖魔を狩る種族といふのはそんなに珍しくないがなかなか面白い。だんだん家族の物語になっていくところはちょっと苦手、特に私は父と息子の物語は好きではないのだ。続きはもう出てゐるけれども、少し休まう。

 マイク・シェパード『防衛船隊、出陣!』(中原尚哉訳/ハヤカワ文庫SF)[Amazon.co.jp]を読み始める。創元推理文庫のあとに、ハヤカワ文庫のトールサイズを読むと、妙に字が大きくて何だか読みにくい。文庫本には文庫本に相応しい大きさの字といふものがあるのではないだらうか。などといってゐられるのも今のうち。老眼になったらトールサイズを讃美するやうになるのかも。

 今日の電子化本。
◆ドン・タプスコット『デジタルネイティブが世界を変える』(翔泳社/2009年)
 物心ついた頃からインターネットを使ってゐる世代と、それ以前の世代とは情報の扱ひ方が違ふからまったく新しい社会を作っていくだらうといふやうな内容だったか。あまりよく覚えてゐない。自分の日記を読み返せば、ネット世代の八つの行動基準として、「自由」「カスタム化」「調査能力」「誠実性」「コラボレーション」「エンタテインメント」「スピード」「イノベーション」に着目してゐるらしい。当時の私はそれなりの高評価を与へてゐたやうだ。さっぱり覚えてゐないのが情けない。
 さういへば、紙の雑誌を手にした赤ん坊が、iPadを扱ふやうに熱心に指で弾いたり摘んだりしても全然動かなくて戸惑ふやうな映像を見た。なかなか面白い。でも、そんなに驚くやうなことでもないだらう。たかが赤ん坊の関違ひではないか。

 今日、この冬にもAmazon.co.jpでも電子書籍の扱ひが始まると報じられた。喜ばしいことである。やうやくここまできた。新書の類ひなどは積極的に電子書籍で購入したい。ファイル形式にも依るが。小説は電子版を買ふ気になるかどうかはまだよく判らない。洋書の場合は、送料とか輸送の時間を大幅に節約できるから、迷ふことなく電子版だが、和書の場合この二つはあまり大きな意味を持たない。意味があるのは体積と重量をほぼゼロにできるといふところだ。あとは、検索が可能だといふ点。それが、紙の本を手に取ってページをめくるといふ魅力を上回る力を持つかどうかである。どうだらうか……


10月19日(水)

 心願社から、C・S・ルイス『偉大なる奇跡 C・S・ルイス宗教著作集別巻1』(新教出版社/一九九八年)が届く。数箇所確認。何だかそんなつもりもなかったのに、ルイス宗教著作集をずいぶん買ってしまった。こんなことなら最初に全部揃へればよかった。必要になるかも知れない資料はとりあへず全部買っておけといふことだ。

 マイク・シェパード『防衛船隊、出陣!』(中原尚哉訳/ハヤカワ文庫SF)[Amazon.co.jp]をいただきました。ありがたうございました。
 これは宇宙軍の話なのに珍しく私が読んでゐるシリーズ。表紙の主人公の顔がこれまでと違ふやうに見えるのは気のせゐか。

 今日の電子化本。
◆J・K・ローリング『ハリー・ポッターと死の秘宝(上・下)』(松岡佑子訳/静山社)
 これでハリー・ポッターは全部電子化が完了。かなり書棚があいた。このシリーズは実は最後まで読んでゐない。映画は最初の二作ほどは観た。
 初めてこのシリーズを知ったのは、SF情報誌Locusの新刊紹介欄だったか。後ろの方のページに載ってゐるベストセラー・リストにも毎回のように上位に名前があった。そこで、そんなに面白いのかと興味を抱いて読んでみたら面白かった。何も新しいところはないような気がしたが、それでも面白いとは思った。そこで、これは日本で出しても売れるのではないかと思い、こんなのがあるのだが出せませんかとある出版社の人に云ってみたら、ああ、それはもうどこかが取ったよと教えてくれた。うちも取ろうとはしたんだけどね、何だかあまり翻訳小説の分野では耳にしない出版社に決まったよと。何だそうかと云って、翻訳が出てから少し読んだけれども、どんどん分厚くなっていつの間にか読まなくなった。それは、SFマガジンで新刊紹介をしなくてよくなったからかも知れない。といふ話は前にも書いた。


10月18日(火)

 カサンドラ・クレア『シャドウハンター 骨の街 下』(創元推理文庫)を読み進める。十五歳の恋の物語(的側面)は退屈。さっさと先に進んでほしいものである。

 C・S・ルイス『被告席に立つ神 C・S・ルイス宗教著作集別巻2』(新教出版社/一九九八年)が届く。調べものができるが、今日はその元気がない。


10月17日(月)

 カサンドラ・クレア『シャドウハンター 骨の街 上』(創元推理文庫)を読み終へ、下巻へ。ありがちな設定で(今のところ)ありがちな展開だけど面白い。
 異界の生き物たちを狩るシャドウハンターを目撃して(実は普通の人間には見えない)その世界に巻き込まれていく少女が主人公。実は身を隠してゐたシャドウハンターだったといふ話。友達が吸血鬼たちに攫われたりして、友人や母を助けに行こうと奮闘する訳である。

 そろそろ資料以外の本も註文したい。

 紀田順一郎『幻想怪奇譚の世界』(松籟社)や若島正『乱視読者のSF講義』(国書刊行会)が出てからでもいいか。とすると一週間後だ。家計には優しいが面白くはない。


10月16日(日)

 カサンドラ・クレア『シャドウハンター 骨の街 上』(創元推理文庫)を読みながら外出。あまり期待せず読み始めたのだが、なかなか面白い。そんなに独創的なところもないような気がするけれども面白い。

 天井のクロス貼替えのために外した書棚を戻す。ついでに歪んでゐる書棚の位置を直す。そのために本棚から本をとりだしたり。小さな本棚だと思ってゐるものでも、全部出して積み上げると意外に多くて驚くものである。今、改めて驚いたところ。結局今日は半分も戻せそうにない。まあ、少しづつ元に戻す。

 埼玉の実家に行って、1983〜1984年のFantasy Review誌を見つけ、6冊持って帰る。明日以降電子化作業を行おう。

 今日も疲れてゐるのでこれで。


10月15日(土)

 今日は天井のクロス貼替へ工事。本を移動させたり手間がかかったが(まだ元に戻してゐない)、一年ぶりに書斎の机の上に照明が戻った。

 工事の後、トールキン関係の会に出席。二五年振りに会ふ人たちもゐる。

 この期に及んでさらに確認しなければならないことが出てきて、C・S・ルイスの本を二冊註文。一冊は「日本の古本屋」で検索して、心願社に註文。
●C・S・ルイス『偉大なる奇跡 C・S・ルイス宗教著作集別巻1』(新教出版社/一九九八年)
●C・S・ルイス『被告席に立つ神 C・S・ルイス宗教著作集別巻2』(新教出版社/一九九八年)
はAmazon.co.jpの中古品出品者から購入

 今日は疲れて時間もないのでこれで。


10月14日(金)

 鴻巣友季子『全身翻訳家』(ちくま文庫)読了。真面目な翻訳にかんする話もよいが、やはり私はちょっと変な話に引き寄せられる。穴に落ちる話とか、後ろ向きに歩く老婆たちの話とか。
 後ろ向きに歩く健康法なんてあるのかなと思ってネット検索してみると本当にあるではないか。しかし、私はいまだに後ろ向きに歩く老人たちを目撃したことがない。今なら予備知識があるからそんなに驚かないかも知れないが、何も知らずに後ろ向きに歩く老婆が向かうから歩いてくるのを目にしたら、恐怖のあまり気が狂ってしまってゐたに違ひない。この本を読んでよかった

 昨日のiOS5に続いて今日はUbuntu 11.10のアップグレードで時間を使ってしまふ。

 今日の電子化本。
◆李昌桓『Amazon Cloudテクニカルガイド』(インプレスジャパン)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店]
 各種Amazon Web Serviceの使ひ方の本。
 今晩は、これから書斎の天井近くの本を出して書棚を外さなければならない。眠いが明日の工事に備へなければならないのだ。


10月13日(木)

 Amazon.co.jpからC・S・ルイス『天国と地獄の離婚―ひとつの夢』(柳生直行・中村妙子訳/新教出版社)[amazon.co.jp, bk1, 紀伊國屋書店]が届いたが、もはや何を確認したくて註文したのか思ひ出せない。やれやれ。

 今日はMac OS XとiOSのアップデートでほとんど潰れてしまった。バックアップと再構成を忘れ、iPad2からpdfファイルがほとんど消えた。iCloudにはiDiskのやうな自分の好きなファイルを好きなやうに保存できる機能がないことが判り、愕然とする。iCloudメール(旧MobileMeメール)のパスワードがときどき拒否される。iBooksの本はiCloudでバックアップできないのか。ありさうなことが書かれてゐるのだが、それらしい設定が見当たらない。
 よかったのは、ZumoDriveが普通に使へるやうになったところ。

 Ubuntu 10.10が出てゐる。が、今日は我慢して寝る。いや寝る前にやらなければならない作業があるのだった。

 明後日には書斎の天井のクロスの貼り替へ工事が予定されてゐる。そのためには天上に密着してゐる書棚を動かさなければならないのである。今晩と明日で何とかしようと決意する。工事の人たち、いい人たちなのだが、本の扱ひを私が満足するやうなやり方でやってくれるかどかは判らない。多分、してくれない。だから、自分で動かしておかなければ。


10月12日(水)

 鴻巣友季子『全身翻訳家』(ちくま文庫)を読みながら出勤。短いエッセイがたくさん入ってゐる。面白い。でも、続けて読んでゐるとちょっと飽きてくるかも(とか勝手なことを云ってみる)。

 紀伊國屋書店から、阿部重夫『パターン認識のためのサポートベクトルマシン入門』(森北出版)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店]が届く。

 Amazon.co.jpから、C・S・ルイス『ルイス宗教著作集〈4〉 キリスト教の精髄』(柳生直行訳/新教出版社)[amazon.co.jp, bk1, 紀伊國屋書店]とC・S・ルイス『ルイス宗教著作集〈8〉栄光の重み』(西村徹訳/新教出版社)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店]が届く。

 三冊註文したうちの二冊しか届かなかった。でも、これで収録作品がかなり判ったので、『インクリングズ』の補遺Bの訳稿をとあえず送信。危機的状況は脱したといっていいのか。後は、あとがきとゲラの直しである。

 今日、銀行に行くために珍しく地下鉄丸ノ内線に乗った。『全身翻訳家』を読みながら立ってゐたのだが、ふと目をあげると車両には私ともう一人の二人しかゐない。この時間はこんなに乗客が少ないものなのかと思ったが、両隣の車両を覗いてみると、それなりに乗客がゐるやうだ。なぜこの車両にはゐないのか。私か、もう一人か、どちらかが避けられてゐるのか。心配になってもう一人を見てみたところ……(続く)


10月11日(火)

 ジャック・ヴァンス『奇跡なす者たち』(浅倉久志・酒井昭伸訳/国書刊行会)amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店]読了。「月の蛾」「最後の城」表題作の順でよかった。音楽言語とか、仮面で顔で人が識別できない社会とか、いろいろ「月の蛾」は面白い。他の二つは、変化を讃美するところが如何にもSFだが、表題作は変化の方向に対する評価が普通と逆なところがいい。前半の小品たちは、まあどうでもいい感じ。どれも面白いのではあるが、やはり古さは否めない。

 昨日から非常事態なので電子化作業は休み。日記もこれで。

 非常事態の中身はウィリアムズの項が終わったところ。後はいろいろな参考書の類ひ。


10月10日(月)

 ジャック・ヴァンス『奇跡なす者たち』(浅倉久志・酒井昭伸訳/国書刊行会)amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店]を読み進める。「月の蛾」は、楽器を奏でて言葉を交はすといふのがどこかで読んだことがあると記憶の奥底から微かな声が聞こえてくるのだがそれが何だったのか思ひ出せない苛立ちを感じながら楽しく読んだ。楽器によって態度や丁寧さが変はるといふのも面白い。バッハの曲では、ヴァイオリンが平民的な旋律を奏で、トランペットが神々しい旋律を奏でるやうだが、まあそれとは関係のない話だらう。結末も意外な展開でほのぼの可笑しい。

 トールキンの『サンタクロースからの手紙』が見つからなくて困る。確認したいことがあるのだが。それにしても、日本語版『サンタクロースの手紙』には版がいろいろあって判りにくい関係になってゐることを今日初めて知った。うちにあるのは、昔私が娘に買ってやったもの。娘が大きくなったときに、幼い頃の思い出の品だが私が没収した。もう大人になったから要らないだらう子供の本は。父は仕事で必要としてゐるのだ。どちらが手元に置くかは明らかではないか。と云ったかどうかは覚えてゐない。

『インクリングズ』の翻訳の確認のためにルイスの本を三冊註文。
○C・S・ルイス『ルイス宗教著作集〈4〉 キリスト教の精髄』(柳生直行訳/新教出版社)[amazon.co.jp, bk1, 紀伊國屋書店]
○C・S・ルイス『天国と地獄の離婚―ひとつの夢』(柳生直行・中村妙子訳/新教出版社)[amazon.co.jp, bk1, 紀伊國屋書店]
○C・S・ルイス『ルイス宗教著作集〈8〉栄光の重み』(西村徹訳/新教出版社)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店]
 以上三冊。ルイスは邦訳が多くて大変だ。


10月9日(日)

 ジャック・ヴァンス『奇跡なす者たち』(浅倉久志・酒井昭伸訳/国書刊行会)amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店]を読み進める。「奇跡なす者たち」は、私たちの住むこの世界の、科学的・魔術的の概念が逆転してゐる世界の話。古くて迷信のやうな扱ひを受けてゐる科学に基づく考へに着目した若者が、年老いた妖術師たちの支配する世界を変へていくのではないかと仄めかして終はる。この新しい世界への転換を歓迎する物語はSFの魂ともいへると私は信じてゐるのだが、その見方が逆転した世界を描いてゐるところが独特の世界と物語を生み出してゐる(と思ふ)。次は「月の蛾」。

 妹が実家に置いてあった本を処分すると聞いたので、捨てるなら欲しいといって何冊かもらってきた。J・D・サリンジャー『ライ麦畑でつかまえて』(白水社)、井上ひさし『家庭口論』(中公文庫)、シュトルム『みずうみ』(新潮文庫)、ゲーテ『若きウェルテルの悩み』(新潮文庫)、ヘミングウェイ『武器よさらば』(新潮文庫)、ヘミングウェイ『老人と海』(新潮文庫)、多田道太郎『日本語の作法』(角川文庫)、『グリム童話集(一)』(岩波文庫)、『グリム童話集(二)』(岩波文庫)、ヴォルテール『カンディード』(岩波文庫)、ホフマン『黄金の壺』(岩波文庫)、フーケー『水妖記』(岩波文庫)、ソポクレス『オイディプス王』(岩波文庫)、『ホフマン短篇集』(岩波文庫)、コンスタン『アドルフ』(岩波文庫)、リルケ『マルテの手記』(岩波文庫)、ショーペンハウエル『知性について』(岩波文庫)、ショウペンハウエル『自殺について』(岩波文庫)、セネカ『人生の短さについて』(岩波文庫)、カント『啓蒙とは何か』(岩波文庫)、渡辺一夫・鈴木力衛『フランス文学案内』(岩波文庫別冊)である。よくよく見れば、持ってゐる本もかなり入ってゐる。岩波文庫に多い。こんなに毎日書棚の本を減らす努力をしてゐるのに、また読みさうもない本を増やしてしまった。やれやれ。

 今日の電子化本。
『フランス語手紙の書き方』(大学書林/昭和52年)
『ドイツ語で手紙を書こう』(三修社/1990年)
そんなにフランス語やドイツ語で手紙を書きたかったのだらうか。多分、フランス語は、Fiction誌の定期購読を申し込んだときか。ドイツ語は何のときだらう。ドイツに旅行に行く前か。何れにせよ、今後はあまり使ひさうにない。そこで、pdf化して保存。

 

10月8日(土)

 ジャック・ヴァンス『奇跡なす者たち』(浅倉久志・酒井昭伸訳/国書刊行会)amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店]を読み進めるがあまり捗らない。「奇跡なす者たち」の途中。遅すぎる。

 今日も電子化作業をする余裕がなかった。余裕のない生活が続く。

『インクリングズ』の後書きや補遺Bもなかなか捗らない。では、一体何なら捗ってゐるといふのか。何も捗ってゐない。何も。

 何も捗らないので腹立ち紛れに本を註文してしまった。紀伊國屋書店に、
●阿部重夫『パターン認識のためのサポートベクトルマシン入門』(森北出版)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店]
を註文。無性にかういふ本が欲しくなる瞬間があるのだ。これさへあればすべて解決するみたいな気分になるのである。そんなときに註文する本は大抵難しすぎてうまく使へない。


10月7日(金)

 ジャック・ヴァンス『奇跡なす者たち』(浅倉久志・酒井昭伸訳/国書刊行会)amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店]を読みながら出勤。144ページまで。最初の三篇、すなはち「フィルクスの陶匠」「音」「保護色」は面白いが古めかしさは否めない。一方、「ミトル」と「無因果世界」はあまりにも独特で古めかしさを感じない。古めかしさを感じない方が優れた作品であるかどうかは判らないが、私の心の中での評価は後者の方が高い。明日も読み続けやう。

 Tweetボタン(一部ドイツ語版あり)やFacebookいいねボタン、Google+1ボタンを配置したり位置を変へたりしてゐる。ちょっとうるさく感じられることもあるかも知れないが、まあ、さういふ年頃なので仕方がない。そっと見守っておいていただきたい。

 今日は電子化する時間も心の余裕もなかった。


10月6日(木)

 ジャック・ヴァンス『奇跡なす者たち』(浅倉久志・酒井昭伸訳/国書刊行会)amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店]を読みながら出勤。まだ最初の二篇。

 この年末か年明けに出さうなハンフリー・カーペンター『インクリングズ』(河出書房新社)の訳者後書きをどうしようか悩んで補遺Bの分担がまさか自分だとは思ってゐなくて完全に放置してゐたことが発覚し、激しく狼狽へる木曜の夜。

 今日の電子化本。
◆島田裕巳『無宗教こそ日本人の宗教である』(角川Oneテーマ21)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店]
◆太田直子『字幕屋は銀幕の片隅で日本語が変だと叫ぶ』(光文社新書)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店]
 字幕の本は期待して買って読んだのに、全然覚えてゐない。いつかもう一度読んでみようか。でも、『指輪物語』読者のことを莫迦にしたやうなことを書いてゐたから、読まないかも。


10月5日(水)

 松崎有理『あがり』(東京創元社)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店]読了。最後の作品は少年少女が主人公で、研究者の生々しい日常が描かれてゐないので安心して読めた。他の作品とは違って幻想的な雰囲気を湛へてゐる。
 全体的に見れば、大学の科学者(研究者)たちの生活が描かれゐて、そこのさまざまな問題は、この世界に似た別世界の話ではあるけれども、現実の問題をかなり色濃く反映してゐる。短期的な論文の量が要求され、数年以内に論文が書けるやうな細切れの研究ばかりになってしまふとか、論文は質より量といふ状況とか、学位を取っても短期契約の仕事を渡り歩いて喰ひつなぐ生活を余儀なくされることとか、研究費のこととか、impact factorに対する過剰な評価とか、いろいろである。そんな独特の世界を舞台に謎めいた事件が起こったり、恋が育まれたり破れたりする。科学的な発想としては無茶なものが多く、なるほどさういふこともあるかもと思へるものはないのだが、そこが作品の評価すべきところではないので、それはそれで構はないだらう。ただ、さういふ世界は、馴染のない人には面白いのだらうが、私にとってはあまりにも生々しい日常である。小説を読むときまで浸りたくない世界である。

 菊池誠・他『もうダマされないための「科学」講義』(光文社新書)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店]読了。菊池誠・松永和紀両氏については、著書を読んだりしてゐたので、新しく得られるものは少なかった。科学哲学の話はよく判らなかった。期待して読んだのは平川秀幸の科学技術コミュニケーションの章。欠如モデルとその問題といった基本的なことから説明してくれる。私は結局は欠如は埋めなくてはならないのではないかと思ふのだが、まづ埋めようといふ態度では駄目なやうだ。その章の最後で指摘されてゐる社会の分断は、今の情報をどう扱へるかといふことで生じてゐる格差の固定化の問題と共通するところもあるだらう(佐々木俊尚氏らがこのところよく云ってゐる)。どうやってその溝を埋めていくか、あいだに橋を架けていくかは、科学者のコミュニケーション能力を高めるといふのも一つの考へ方だらうが、、それは科学者には過酷な要求にも思へるのである。科学者は相手の気持ちを慮るとか共感するとかは苦手なことだと思ふ。共感しろとか気持ちに寄り沿へとか、それは科学者にサッカー選手になれとか野球選手になれとかいふくらゐ困難な要求ではあるまいか。科学技術コミュニケーションの専門家が間に入ってもらふのがいいと思ふのだが、さういふ人を数多く育てることはできるのだらうか。

 今日の電子化本。
◆V. V. ヴァジラーニ『近似アルゴリズム』(浅野孝夫訳/シュプリンガー・ジャパン[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店]
「近似アルゴリズム理論の最新の成果を、系統的に直観的にわかりやすくまとめた解説書」といふことなのだが、私には難しくてよく判らなかった。よくこんな高い本かったなあと今となっては思ふのである。
◆Bob Stayton DocBook XSL (Sagehill Enterprises) [Amazon.co.jp, 紀伊國屋
 DocBookといふ規格がどうもよく判らないままである。


10月4日(火)

 昨日、Fantasy and Science FictionのSept/Oct号が届いたのを報告するのを忘れてゐた。ジェフ・ライマン、ジョン・アームストロング、エスター・フリースナー、M・リッカートらの作品が載ってゐる。心惹かれる作家の名前もあるが、たぶん読まない。

 物珍しいものはつい触ってみたくなるので、Facebookの「いいねボタン」とかGoogle+ボタンとか付けてみたくなった。思い通りに並べるのは意外に難しい。ここではまあ何とか並んだけど、別館の方はどうしても横に並ばない。表構造にするときれいに並ぶのだが、表の線をなくすことができない。全体を制御しているCSSで指定されてゐるのだらうか。そんなことばかりしてゐるわけにはいかないので、今日のところはこれくらゐにしておくが、決して諦めたわけではない。

 松崎有理『あがり』(東京創元社)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店]をうっかり読み始めてしまって、他にいろいろやらなければならないことがあるのに、つい三分の二くらゐまで進んでしまった。あまり好きではない言葉だが「理系SF」といふので買ってみた。帯の「大学の研究室は、今日もSFの舞台に」なんて言葉が禍々しい。
 表題作は遺伝子をどんどん増幅していって生物が本来持てる遺伝子量を上回るほど溜め込んだら、生物は競争を放棄するといふ突拍子もない考へに基づいて実験をする若い研究者の話。その発想はいくら何でも無理だらうといふ感じ。最後は「百匹目の猿」みたいな感じだし。二つ目「ぼくの手のなかでしずかに」は、これもまた無理のあるアイディア。「代書屋ミクラの幸運」も登場する論文の内容自体はあまりにも荒唐無稽。しかし、論文とは科学者にとって何なのか、それが今どのやうに評価されてゐるのかが、代書屋といふ架空の職業とともに面白く描かれてゐる。主人公の崇めるアカラさまとか、丸くて小さい仙人掌も素晴らしい。その次の「不可能もなく裏切りもなく」では、さらに論文の生々しい話が繰り広げられていく。インパクトファクターのこととか、それを崇拝する科学者たちが愛でるNature/Science/Cellといった学術誌の名前とか。科学者の生活が生々しすぎる。もう読み続けられないかも知れないのだ。


10月3日(月)

 菊池誠・他『もうダマされないための「科学」講義』(光文社新書)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店]を読み始める。1章の「科学と科学でないもの(菊池誠)」は、全体の導入として何が問題なのかを示してくれてゐる。この人の意見や考へを私はすでによく読んでゐるので、自分にとって目新しいことはほとんどなかった。56ページの2×2の表は慣れてゐる人には当たり前過ぎるものではあるけれども、もしもまだ知らない人がゐればこれほど大事なことはないといふ表である。この章の最後、「理解してゐるが納得はできてゐない」ことに起因する不安は、いくら理屈を説明しても改称されないといふのは科学コミュニケーションにおいて重要な問題といへよう。しかし、私にはこの状態が理解できないので、科学コミュニケーションの実践者としては失格といふことになるだらう。でも、判らないものは判らないのだ。納得するのに理解以外の何が必要なのか、何を提供すればいいのか理解できない。理解できないが納得はできるといふことになるともう微塵も想像できないのだ。私にとっては理屈による理解ほど不安を解消してくれるものはない(もちろん、理屈による理解で危険が示されたらそれは怖い)。
 2章の「科学の拡大と科学哲学の使い方」はよく判らなかった。モード1科学とかモード2科学とか云はれてもさっぱりである。モード2科学って結局「技術」のことぢゃないのか? とか思ってしまふ。科学と技術の間もすっきり切り分けられず、連続的に科学らしい科学から技術らしい技術へと並べることが可能なのだらうが。3章「報道はどのように科学をゆがめるのか」を今読んでゐるところ。

 高野史緒編『時間はだれも待ってくれない』(東京創元社)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店]をいただきました。ありがたうございました。

 紀伊國屋書店から、高野史緒編『時間はだれも待ってくれない』(東京創元社)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店]、松崎有理『あがり』(東京創元社)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店]、『英和ブランド名辞典』(研究社)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店]が届く。『時間はだれも待ってくれない』が二冊になってしまった……。
『英和ブランド名辞典』は紙がそんなに薄っぺらでもないので、これはスキャンできないものか。さうしてOCR処理して検索できるやうになると便利なのだが。ただ、今は日英混合文の文字認識がAcrobatではまともにできない(日本語か英語かどちらかなら精度が高いのに!)ので、それが問題である。認識精度が高かったら迷はず切ってゐたところだ。

 今日の電子化本。
◆門倉多仁亜タニアのドイツ式部屋づくり(ソフトバンククリエイティブ)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店]
 この本は引っ越し前に買って、いろいろ参考にしたいと思った本。住宅事情のまったく異なるドイツの住まひの紹介ばかりだとどうにもならないのだけど(それはそれで楽しいが)、日本の住宅に住んでゐる人の本なので参考になるかと思ったのだ。実際には、そのまま真似はできないが、役立つところは少なくなかった。書棚も素敵な写真が載ってゐる。しかし、これでは本が日に焼けないかと心配になるのだった。


10月2日(日)

 J. B. Priestleyの"Guest of Honour"を読む。ある晩餐会(とは違ふかも)で来賓スピーチを依頼されて喜びながらも緊張して出かけたときに、渋滞にはまってしまって遅刻しさうになってゐたときに、外国人風の老人が道に飛びだしてきて車が急ブレーキをかけたので、思はず腹をたてて大声で罵ってしまふ。すると老人は睨み返して呪ひのやうな言葉を吐く。そして、主人公が晩餐会に行って体験するのは悪夢のやうな世界だった……といふ話で、結末は呆気ない感じ。悪夢の中にも仄かな可笑しさが漂ってゐる。如何にも私が好みさうな作品。楽しく読めた。

 毎日新聞の書評欄に岸田一隆『科学コミュニケーション』(平凡社新書)の書評が載ってゐた。この本を読んだときの驚きが再び心に甦ってきたので、また一言書いて心を落ち着かせようか。「常識が「わかる」というとき、それはたんに頭で理解するだけではなく、共感をこめて納得することを意味している。一方、科学が「わかる」というのは、情報を純粋に理性的に把握することであり、そのために最大限に数学に頼って現象を記述することである。」といふことが、私が本書を読んで最も驚いたことである。物語で世界を理解するのが一般人だといふのと同じくらゐ。「共感をこめて納得する」といふのが全く理解できない。「共感」といふのは人と人の間に成り立つことであって、物事を理解するのにどう関係するのだらうか。私にとって物事の理解とは、共感とか物語とかを削ぎ落としていって、法則とか成り立ちとかを抽出できたときに理解に達する。抽出化に最も有効なのが数式である。そこに共感とか云はれても私にはどうしたらいいか判らない。さういふ理解は私には全く理解できない理解である。ただ呆然とするしかない。だから、残念ながら、さういふ理解を助けるために何かをすることは私にはできないと知ったのである。理解できない理解をどう助ければいいのか。だから、もう沈黙するしかない。理解と共感の狭間で。


10月1日(土)

 一昨日届いたPriestleyのThe Other Place収録のStatuesを読む。場所はロンドン。新聞記者の主人公はある日突然バスの外に巨人を目撃する。慌ててバスを降りてさっき巨人が見えた辺りに行くが、その姿はもう見えない。どういふことか。しばらくしてまた別の巨人の像を目撃する。思いひんである日同僚に相談する……といふやうに進んいき、最後はあっといふやうな結末ではなく、ちょっと呆気ない結末になる。え、結局何だったのか……とい感じは実は嫌ひではないのだ。これでいいのだ。読んでゐない人には何だか判らない書き方で申し訳ないがさういふことなのだ。

 紀伊國屋書店に本を註文。
●高野史緒編『時間はだれも待ってくれない』(東京創元社)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店]
●松崎有理『あがり』(東京創元社)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店]
『英和ブランド名辞典』(研究社)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店]
 以上三冊。最初のは東欧SF傑作選。松崎有理といふ人は私は全然知らなかったのだが、第一回創元SF短編賞を受賞した人だといふ。「大学研究室を舞台にした新しい『理系SF』」といふ。理系とか文系とかいふ考へ方は嫌ひなのだが、話は面白さうなので買ってみることにした。「理系女子ならではの、大胆にして繊細な奇想SF連作」らしいのだが、理系女子といふ言葉も嫌ひである。嫌ひ嫌ひと云ひながら買ってみるのである。最後の辞書は「ブランド〈名辞典〉」ではなく「〈ブランド名〉辞典」である。今年の八月に新版が出たのだが、やうやく買へた。

 今日は電子化作業ができなかった。頭が痛くて午後は寝てしまったのである。


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