5月31日(木)

 村上春樹『ねじまき鳥クロニクル』の第二巻を読み終へる。何だかあまり面白くない。話は全然進まない。どうなってゐるのか。

 マーク・チャドボーン『ワールズ・エンド』(木村京子訳/国書刊行会)をご恵贈賜りました。ありがたうございました。しかし、それにしても大きい。これでは通勤電車の中で、片手で読めさうにない。まあ、両手で読めばいいだけなのだが。

 今月は本の購入数が僅か十冊だった。いったいどうしたといふのか。信じられない。電子化数は九冊。何と云ふことだ。これでは一冊書棚の負担が増えてしまったといふことか。許し難い。来月はもっともっと本を買って、本を電子化しよう。


5月30日(水)

 Eric Papeの挿絵が入ってゐるはずの本が届いたが、留守にしてゐて受け取れたのは不在連絡票だけだった。土曜日の夜に再配達を依頼する。今度は受け取れますやうに。いや、今度はEric Papeの挿絵が入ってゐますように。

 村上春樹『ねじまき鳥クロニクル』を読みながら出勤。ちょっといろいろ具合が悪いから、ちゃうどいいのだ。しかし、もっと調子が悪くなってきたら、ディックを読まなければなるまい。フィリップ・K・ディックである。

 今日も何度も意識を失なってゐる。もう寝なければならないのか。いや、もう寝なければ。


5月29日(火)

 都合により一回休み。


5月28日(月)

 Eric Papeの挿絵入りといふLew Sallace The Fair Godが届いたのだが、挿絵なんて一枚も入ってゐない。どういふことなんだ! しかし、面倒臭いからきっと問ひ合はせなどはしない。
 しかし、楽しみにしてゐたのだが。もう一冊、Papeの挿絵入りの本を註文したはずなので、それが届くのを心待ちに過ごすことにしよう。今度はちゃんと挿絵が入ってゐますやうに!

   私が戻った頃には、看守たちはほとんど眠ってゐた。

5月27日(日)

 村上春樹『ねじまき鳥クロニクル 1』を読みながら電車にのる。まだ前に読んだところまで追ひつかない。

 帰りの電車の中に荷物を忘れてしまった。私は滅多に電車の中にものを忘れない。傘を忘れるのは10年に一回くらゐしかない。本を忘れたことは一回だけある。二十年くらゐ前に、古本屋で買った本を十冊ほど。文庫本ばかりだったと思ふ。まあ、いいけど。今回は食べ物。なくなって困るものではないが、勿体ないことをした。やれやれ。

 ある事情であまり時間がないので、今日はこれで。


5月26日(土)

アラン・ソーカル&ジャン・ブリクモン『「知」の欺瞞』(岩波現代文庫)[amazon.co.jp, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! boox]を読み終へる。出鱈目のポストモダン論文を投稿したら、まともな学術雑誌に掲載されてしまったといふ事件があった。それをきっかけにポストモダン思想の世界で人を惑はすのにどれほど妙な科学用語が氾濫してゐるかと教へてくれる。しかし、ラカンのやうな有名な学者まで! ひどいものである。
 今日気に入ったのは「科学は「テクスト」ではない」。科学の言葉はたとへ同じであっても日常で使ふ言葉とは本質的に異なってゐて、複雑に絡み合った理論や実験を知って初めて理解できるから、こういった言葉をメタファーとしてだけ用ゐると、容易に無意味な結論を下すことになってしまふ……といふところ。そして、「メタファーは馴染のない概念を馴染み深い概念と関連させることで説明するために使ふものであって、決して逆の状況では使はない」といふことなのだ。メタファーやアナロジーは危険なのだ。そして、科学に過剰な物語を見いだすことも。いろいろ書きたいこと、書かねばならないことはあるはずだが、今日はもう眠くて意識を保てないので、これで。

 他にもいろいろ書かうと思ってゐたのだが、何も覚えてゐない。やれやれ。


5月25日(金)

 アラン・ソーカル&ジャン・ブリクモン『「知」の欺瞞』(岩波現代文庫)[amazon.co.jp, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! boox]を読み始める。もっともらしい言葉を並べた出鱈目な論文を投稿したら学術雑誌に掲載されてしまったといふ「ソーカル」事件を発端に、ポストモダン思想における科学の濫用を追及した本。序文から面白いが序文が面白いだけなのかも知れない。とりあへず、先を読まう。

 SFマガジン7月号《特集:スチームパンク・レボリューション》[Amazon.co.jp] をいただきました。ありがたうございました。
 翻訳作品は、シオドラ・ゴス、シェリー・プリースト、ティム・プラット、ラヴィ・ティドハーら。早速、シオドラ・ゴスを読んでみたが、何だかよく判らなかった。いや、何を書いてゐることは判るのだが、何が面白いの判らない。これが歳をとるといふことなのか。
 特集解説ではしきりに「ネオ・スチームパンク」といふ言葉が出てきて、あたかも英語圏にかういふ言葉や概念、範疇があるやうに感じられてしまふところは些か納得できないところでもある。元祖スチームパンクについても、「ネオ」と対応するやうに何らかのまとまりのある運動のやうなものと読み取られかねないのもどうかと思ふ。

 それはそれとして、この特集で紹介されてゐる作家の本を何冊か持ってゐるのに、さっぱり読んでゐないことに気がついた。もっともっと読まなければ。深く反省する。


5月24日(木)

 タッド・ウィリアムズ『いばらの秘剣』(金子司訳/ハヤカワ文庫FT)[amazon.co.jp, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! boox]読了。主人公はちょっと鈍い少年だが、おそらく何か特別な能力を持った特別な血筋の人物であることが示唆される。で、話はまだ始まったばかり。続きは二ヶ月後らしいのだが、私の記憶力では二ヶ月後にはかなりの部分を忘れてゐるに違ひない。それならば、全巻刊行されたところでまとめて読めばいいのではないかといふ意見もあらうが、溜まると今度は読み始める気にならないのだ。我が儘なのである。字を小さくしてぎゅっと詰めて骰子のやうな文庫本にしてくれると(電子書籍ならなほよい)助かるのだが、そんなことをしたらきっと売れなくなる。なかなか難しい。

 電車に乗ってゐる途中で『いばらの秘剣』を読み終へてしまったので、Kindleに入ってゐる村上春樹『ねじまき鳥クロニクル』を読み始める。これで読み終へたら初めて最後まで読むことになる。村上春樹の長篇で読んでゐないのはこれくらゐだらうか。


5月23日(水)

 Fantasy & Science Fictionの定期購読を更新。全然読まないのに紙版。定期購読してゐるSF雑誌(小説誌)はこれくらゐだらう。定期購読してゐるSF情報誌はLocusだけ。しかも電子版。

 タッド・ウィリアムズ『いばらの秘剣』(金子司訳/ハヤカワ文庫FT)[Amazon. co.jp]を読み進める。話がなかなか進まない。しかし、もう眠くて何も書けさうもないので、もう寝る。

 今日の電子化本。
◆青木繁伸『Rによる統計解析』(オーム社/2009年)


5月22日(火)

 四半世紀ぶりくらゐに村上春樹『ダンス・ダンス・ダンス』を読んでゐたのだが、今日やうやく読み終へた。こんな話だったのか。ほとんど覚えてゐなかった。それにしてもよく判らないしあまり面白くない。ずいぶん何人も人が死んでゐるのだが、そんなことでいいのか。結局主人公に誰かが伝えようとしていたメッセージはどうなったんだろうとか、何だかさっぱりである。解釈しなくても物語を楽しめばいいと村上春樹は云ってゐたらしいが、解釈できなかったらあまり楽しめない。というか判らない。主人公は最後にユミヨシさんと寝て何もかも納得できたやうだが、私は納得できない。
 この作品は『ノルウェイの森』よりも前の作品だと思ひ込んでゐたのだが、発表はノルウェイの方が早い。ノルウェイ以降の村上春樹はどうもよく判らない。どうもよく判らないと云ひ続けながら四半世紀も読み続けてゐるのはなぜなのかよく判らない。なにもかもよく判らない。

 紀伊國屋書店から、木村誠『危ない私立大学残る私立大学』(朝日新書)[amazon.co.jp, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! boox]、マーセル・セロー『極北』(村上春樹訳/中央公論新社)[amazon.co.jp, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! boox]、久保田由希『ドイツのキッチンルール』(誠文堂新光社)[amazon.co.jp, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! boox]が届いた。

 ドイツのキッチンの本がなかなか面白い。部屋をどう使ふかといふのはなかなか興味深いし、他人がどんなふうに部屋を使ってゐるのかは面白い。直接自分の参考にはほとんどならないのは、部屋の作りも好みもまったく違ふのだから当然なのだが、それでも面白ければいいのだ。気がつかないところで参考になってゐるのかも知れないし。


5月21日(月)

 タッド・ウィリアムズ『いばらの秘剣』(金子司訳/ハヤカワ文庫FT)[Amazon. op]を読み始める。ちょっと頭が足りないのではないかと思はれてゐる少年が主人公。多分この少年が世界の命運を握ることになるのだらう。世界の地名や人名は、すでに我々の世界で馴染のある言葉や発音を利用してゐる。するとさういふ言葉の歴史的背景が気になって読みにくくなったりすることもあるのは否定できない。たとへば11月なんてどう考へても9月である。

 Fantasy & Science Fiction May/June 号が届いた。知らない作家ばかり。きっと読まない。
 さういへば定期購読更新のお知らせが届いてゐたのだった。きっと読まないけれど、定期購読は延長しなければ。死ぬまで更新すると心に決めてゐるのだ。たとへ読まなくても。たとへ読まなくても。

 初めて買ったアメリカのSF雑誌がこのFantasy & Science Fictionだった。当時は、"The magazine of" が頭についてゐた。池袋の芳林堂書店の洋書売り場で買った。確か洋書売り場は7階だったのではなからうか。バックナンバーも古書店にたくさん註文した。でも、ほとんど読んでゐない。さういふものだ。


5月20日(日)

 今日は日曜日だけど首に変な紐を巻いて仕事に行かなければならず荷物を持ちたくなかったのでkindleに入れた村上春樹『ダンス・ダンス・ダンス』を読みながら出勤。やれやれな仕事を終へて春風亭一之輔真打昇進披露公演を聴きに行く。

 今日の電子化本。
◆Pavel A.Pevzner『バイオインフォマティクスのためのアルゴリズム入門』(共立出版/2007年)

 数年ぶりの腹痛で三時間ほど動けなくなり、今日は早く寝ようと決意したので、これで。


5月19日(土)

 bk1がhontoに統合されたので、これまで使ってゐた新刊情報収集スクリプトの情報源がなくなってしまった。Amazon.co.jpとbk1の両方で入手可能になったらデータベースに取り込むやうにしてゐた文庫や新書もあって、さういふのはここ数日新刊情報が更新されない状態になってゐたわけだ。そして、primaryな項目をbk1のidにしてゐたので、ちょっと面倒臭いことになった。なぜかbk1のidは異なるのにisbnが同じものがあったりして、そんなものを整理するのに時間がかかる。やれやれ。
 何十といふファイルを書き換へておそらくこれでしばらくは安定して動くやうになったと思ふ。しばらく前から取りこぼしてゐたものが不意に入ってきたりしたものもある、すべてAmazon.co.jpからの情報取得に切り替へたのでそのうち安定してくると思ふ。暖かく見守ってゐていただければ幸ひである。

 タッド・ウィリアムズ『いばらの秘剣』(金子司訳/ハヤカワ文庫FT)をいただきました。ありがたうございました。《竜の玉座》の第一巻。このシリーズは番外編とでもいふべき短篇が発表されてゐる。2000年に出た『伝説は永遠に【3】』(ハヤカワ文庫FT/2000年)に収録されてゐて、その本の解説を書いたのは私だった。しかし、申し訳ないのだが話の内容はまったく覚えてゐない。失はれた記憶を取り戻すためにも明日から読むことにしよう。

 今日の電子化本。
◆EricE.Corn 『生化学』(東京化学同人/1988年)
◆竹原直道『口腔保健活動の現状と展開』(海鳥社/2003年)
◆Bryan Bergeron『バイオインフォマティクス・コンピューティング』(オーム社/2004年)
 この頃、電子化作業が全然進んでゐないが、購入量も少ないから、まあいいか。


5月18日(金)

 ロバート・チャールズ・ウィルスン『連環宇宙』(茂木健訳/創元SF文庫)[amazon.co.jp, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! boox]をやうやく読了。前の二作とはかなり雰囲気が異なってゐる。二つの話の流れがあって、それがどのやうに関連付けられるのかも楽しみに読み進めるわけだが、意外な形でその結びつきが明らかになる。膨大な時間の流れと生命・知性・意思とは何なのかといふ疑問に対する答への一つを、エントロピーが増大しきってしまった宇宙でのあまりにも悲しく虚しい未来とともに示してくれた。

 傑作である。

 bk1がhonto.jpに統合されて、膨大な数のリンク修正と新刊情報取得スクリプトの修正をしなくてはならなくなって、うんざりしてゐる金曜日の夜である。やれやれ。

 紀伊國屋書店に本を註文。
●木村誠『危ない私立大学残る私立大学』(朝日新書)[amazon.co.jp, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! boox]
●マーセル・セロー『極北』(村上春樹訳/中央公論新社)[amazon.co.jp, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! boox]
●久保田由希em><『ドイツのキッチンルール』(誠文堂新光社)[amazon.co.jp, 楽天, 紀伊國屋書店, Yahoo! boox]


5月17日(木)

 ロバート・チャールズ・ウィルスン『連環宇宙』(茂木健訳/創元SF文庫)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店]は残り100ページ。遅すぎるが明日には終はるはず。

 AbeBooks.comから一割引クーポンが来たので、先週から買はうか買ふまいか迷ってゐた、
○H. G. Wells The War in the Air
を$25.00(送料$17.00)で註文。Eric Papeの挿絵が入ってゐるのである。AbeBooks.comのクーポンを使ふの初めてかも。

 Amazon.comから2004年に註文した商品のキャンセルが完了したといふメールが来た。はて? 何のことかと思ひ、Amazon.comのトップページからアカウントを確認してみるとそんなものを註文した記録はない(だから当然キャンセルの記録もない)。メールのリンク先は表示とは異なるところへ誘導するもののやうで、多分怪しいサイトへとつれて行かれるのだらう。クリックしてしないから知らないが。


5月15日(火)

 ロバート・チャールズ・ウィルスン『連環宇宙』(茂木健訳/創元SF文庫)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店]を読みながら出勤。まだ、190ページ。遅すぎる。前はもっと早く本を読めたと思ふのだが。どうしてこんなに遅くなってしまったのか。年相応に生きなければならないといふことか。

 minusといふオンラインストレージのアカウントを作ってみたが、これは寧ろファイル共有のためのシステムのやうだ。でも、10 GB無料で使へるから、共有せずにファイル保存用として使ってみよう。どうしてこれに着目したかといふと、MacOSでもUbuntuでもアプリケーションがあるから。しかし、Macのメニューバーが溢れさうだ。

 今日の電子化本。
◆ Liane Reif-Lehrer Grant Application Writers Handbook, Fourth Edition (Jones and Bartlett Publishers, 2004)
 研究助成金の申請書の書き方の本。アメリカの助成金の話なのでそんなに役には立たない。

 今日はそんなに書くこともないので、これで。


5月14日(月)

 4日前に註文したHans Christian Andersen Fairy Tales and Stories (MacMillan, 1946)がキャンセルされた。理由は判らない。再度検索すると75ドルのと250ドルのしか出てこないので、やめておく。他に何かないかと思ったらH. G. WellsのThe War in the Airが比較的安く出てゐる。註文してしまはうか。

 今日の電子化本。
MySQL Clustering (MySQL Press)
『標準世界史地図』(吉川弘文館/1988年)

 世界史地図である。これは1992年頃買ったものなのだが、私は高校生のころから歴史地図を眺めるのが好きだった。休み時間に眺めてゐたら、本当に歴史地図好きだなあと莫迦にされたことを覚えてゐる。いいぢゃないか、好きなんだから。時の流れを見つめる楽しみといへばいいだらうか。国が興り版図を拡張してやがて消えて行く様子が面白くない訳がない。不思議なことに日本は消えないのだ。今までのところは。
 歴史地図を眺めてゐれば、次に思ふのは現代を通り過ぎてさらに先を眺めたいといふ欲求が湧いてくるのが当然だらう。それを楽しめるのはSFである。だから、私はSFを読むやうになったのだらう。

 などと書くともっともらしいが、多分関係ない。

 今日からロバート・チャールズ・ウィルスン『連環宇宙』(茂木健訳/創元SF文庫)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店]を読みながら出勤。てっきり原書で最初の方は読んでゐたと思ひ込んでゐたのだが、何とこれは本すら買ってゐなかったのだ。多分、電子書籍が購入できないので買ってゐなかったのだらう。この頃、もう私は英語の新刊書は電子書籍しか買はないのである。それはいいのだが、買って少し読んだと確信を抱いてゐた自分に驚いた。そこまで記憶が衰へてゐたのか。そのうち、訳してゐない本も訳して出したと思ふやうになるかも知れない。行ったことのないところに行ったと思ふやうになったり、存在しない家族がゐると思ひ込んだり。やれやれ。


5月13日(日)

 本棚に遮光カーテンをつけた。これで心配することなく部屋のカーテンを開けられる。ただ、購入したカーテンが思ひの他白くて何だか病院のカーテンみたいになってしまった。実際の病院では今はそんなカーテンは少ないやうだが。

 今日は荷物を持たずに外出したので、Kindleに入れた村上春樹『ダンス・ダンス・ダンス(上)』(新潮文庫)を読みながら電車に乗った。警察に調書を取られるところあたりまで。この場面は覚えてゐた。あるいは別の本の実体験を書いたところの方を覚えてゐたのか。

 ここで、先日再読を終へた『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』に戻るのだが、やみくろの住む世界は意外にパルプ雑誌っぽいところだったことにやうやく気がついたのだった。地下の奥深くに広大な空間があって、水が満ちてきたりして、そのやみくろの聖地なるところがあって、人々を襲って、そして魚臭いといふ。これだけ読むとホジスンの『異次元を覗く家』みたいではないか。ところが、不思議なことにまったくパルプ雑誌的、あるいはホジスン的(ホジスンはパルプ作家ではない)な闇の世界を感じさせないのである。読んだ人はみなさうだらうけど。どうしてかと考へてみると、やはり主人公の態度だらう。ホジスンの主人公は「やれやれ」などと云ったりしない。もっと真剣に闇に立ち向かふ。ラヴクラフトの登場人物ももっと真剣に、命を賭けて闇に立ち向かひ、そして破れる。村上春樹の主人公は切られた傷が痛むとか云ひながら、全然深刻に受け止めてゐない。何しろ「やれやれ」である。自分に残された時間が数時間しか残ってゐなくても、缶ビールを飲んでやれやれとか云ってゐるのだ。だが、村上春樹の登場人物はこの頃やれやれなんて云はなくなった。それは、もはや主人公が傍観者のやうな立場ではゐられなくなったからだと指摘したのは誰だったらうか。主人公はもっと自分のこととして真剣に世界に立ち向かふやうになったのだからと指摘したのはだれだらう。傍観者のやうに「やれやれ」などと云ってゐてはやみくろもあまり怖くはない。ならば、やれやれと云はなくなった主人公の闇に対する恐怖はホジスンのやうになっただらうか。全然そんあことはない。あり得ない。『風の歌を聴け』では、ハワードとしか思へないプルプ雑誌作家が重要な役割で登場するが、作品自体にパルプ臭は感じられない。どうしてかななどと思ひながら『ダンス・ダンス・ダンス(上)』を読み進めた。


5月12日(土)

 Notre Dame De Paris (Ives Washburn, 1928)がOld Book Shelfから届く。確かに大きくてEric Papeの挿絵がたくさん入ってゐるが、ちょっと自分の期待してゐたものとは違ってゐた。いくつかいい感じの絵もあるのだが、多くは小さなどうといふやうなこともないカットだったりした。

 シェリー・プリースト『ボーンシェイカー』(市田泉訳/ハヤカワ文庫SF)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店]を読み終へる。地下を高速で掘り進む掘削機が走り回ったせゐで毒ガスが発生し人々が死んでゾンビになって徘徊する塀で封鎖されたシアトルを舞台のスチームパンク。設定は面白い。ただ、母と息子の物語はどうも苦手である。息子が小さな少年ならいいのだが、もう十五歳である。母の愛と少年の成長は物語としては納得できるのだが、父と息子の物語に辟易してゐるからそれでいいのだ云っていいような気がするものの、先月途中まで読んだLucy ArlingtonのBuried in a Bookという出版エージェント・ミステリーも高校生の息子と母親(主人公)が登場していたところをみると流行りなのか。いや、二例だけで思ひ込んではならない。

 三省堂書店本店で、WIRED VOL.4 (GQ JAPAN2012年6月号増刊)日経Linux2012年6月号を購入。前者を買ひに五階に行ったときについ買ってしまったのが後者。どうして、Wiredをコンピュータ雑誌の場所に置くのか。おかげで余計なものを買ってしまった。ScanSnapってLinuxでも使へるのか。全然知らなかった! とか思った瞬間に一冊手に取ってレジに向ってゐた。


5月11日(金)

 Eric Papeの挿絵が入ってゐるといふ本を発作的に註文。
○Lew Wallace The Fair God or The Last of the 'Tzins: A Tale of the Conquest of Mexico (Houghton Mifflin, 1895)
Abebooks.comを通じてHarvest Book Companyに。本の価格は$5.84で送料が$12.50。この本は安いものが多いのだが、本当に1895年の本なのか。

 ロバート・チャールズ・ウィルスン『連環宇宙』(茂木健訳/創元SF文庫)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店]とパトリシア・A・マキリップ『アトリックス・ウルフの呪文書』(原島文世訳/創元推理文庫)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店]をお送りいただきました。ありがたうございました。

 マキリップは英語で何年か前に読んでゐる。ロバート・チャールズ・ウィルスンは英語で読み始めたことは覚えてゐるが読み終へた記憶がないので途中でやめてしまったのだらう。どちらも新鮮な気持ちで読めるに違ひないから明日から読み始めよう。

 紀伊國屋書店から倉橋由美子『完本酔郷譚』(河出文庫)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店]、澁澤龍彦『私の少年時代』(河出文庫)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店]、トマス・ピンチョン『LAヴァイス』(栩木玲子・佐藤良明訳訳/新潮社) [amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店]が届く。ああ、倉橋由美子は現代仮名遣ひなのか。それで前に買ってゐなかったのか。

 久しぶりに電子化。
◆田中亮三『図説 英国貴族の城館―カントリー・ハウスのすべて』(河出書房新社/2008年)
イギリスの城を紹介してくれる本。図書室の様子を知りたかったのだが、我が家の本棚の準備には役立たなかった。やはり城に住まないと駄目だ。


5月10日(木)

 シェリー・プリースト『ボーンシェイカー』(市田泉訳/ハヤカワ文庫SF)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店]はまだ400ページ。遅すぎる。遅すぎる。

 Eric Papeの挿絵がたくさん入ってゐるといふ、
Hans Christian Andersen Fairy Tales and Stories (MacMillan, 1946)
 アンデルセンの童話集にはさまざまな挿絵画家が挿絵を描いてきたわけだが、カイ・ニールセンくらゐになると、今さら買っても仕方がないやうな気がしてしまふのである。今回は本体価格が$40.00で、送料が$14.00。前回の買ひものよりも高いものになってしまった。

 Eric Papeの挿絵入りH. G. Wells The War in the Air (MacMillan, 1908) は150ドルもしたので註文できず。

 今月はまだ一冊も本を電子化してゐない。こんなことでいいのか。


5月9日(水)

 紀伊國屋書店に本を註文。
●倉橋由美子『完本酔郷譚』(河出文庫)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店]
●澁澤龍彦『私の少年時代』(河出文庫)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店]
●トマス・ピンチョン『LAヴァイス』(栩木玲子・佐藤良明訳訳/新潮社) [amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店]
以上3冊。この頃、時間に余裕がなくて本の電子化ができないから、もしかすると今月は購入超過状態になってしまふかも知れない。

 やうやく職場のUbuntuを12.04にアップグレードできた。詳細は別館で報告する予定。


5月8日(火)

 シェリー・プリースト『ボーンシェイカー』(市田泉訳/ハヤカワ文庫SF)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店]を読みながら出勤。まだ180ページ、遅くなった。遅すぎる、あまりにも。

 書棚用カーテンレールが届いた。カーテンはまだ来ない。

 はるこん事務局に、
●アレステア・レナルズ『武道館にて。』(ハルコン・SF・シリーズ No.2012)
を註文。

 Eric Papeの挿絵の入った本をもっと買ひたいのだが、註文する時間がない。金もない。


5月7日(月)

 シェリー・プリースト『ボーンシェイカー』(市田泉訳/ハヤカワ文庫SF)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店]を読み始める。怪しい掘削機のせゐでシアトルの大変がほぼ壊滅状態になって封鎖された世界の話。まだほんの冒頭。

 Eric Papeの挿絵がたくさん入ってゐるといふ
Notre Dame De Paris (Ives Washburn, 1928)
をAbebooks.com経由でThe Old Book Shelfに註文。15ドル。もっと安いのもあったが、状態が悪さうだったので、これに。送料が12ドル。サイン入りで番号が付された豪華版があるらしいが、まさかこれはさうではないだらう。挿絵リストだけで4ページもあるらしい。

 今日はあまり時間がないので、これで。


5月6日(日)

 本棚の組立に時間とい労力を費やし過ぎて疲れて眠い。

 シェリー・プリースト『ボーンシェイカー』(市田泉訳/ハヤカワ文庫SF)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店]を訳者の市田泉さんからいただきました。ありがたうございました。早速明日から読むことにします。市田さんは、『インクリングズ』の共訳者です。

 村上春樹『ダンス・ダンス・ダンス(上)』(新潮社)を手に取って電車に乗り外出。この作品では、「ほとんど」は「殆ど」だ。『羊をめぐる冒険』や『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』ではほとんど「殆んど」なのだが。


5月5日(土)

 村上春樹『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』を読み終へる。25年ぶりくらゐに読んだ。こんなに面白い本だったのか。結末も覚えてゐなかった。私たちの住む世界(ハードボイルド・ワンダーランド)と分割された主人公の意識によって創造された世界(世界の終り)とが交互に語られて行く形式は楽しいし、その関係が少しづつ明らかになっていく過程は本当にわくわくする。それなのに私は主人公が影と一緒に逃げたのか逃げなかったのかも忘れてゐた。こんな作品を書いた人が『ノルウェイの森』などといふつまらないものを書くやうになってしまったとは。あれだけ売れたから多くの人の心に訴えるものがあったのだらうが、私にはさっぱりよさが判らなかった。

 IKEAから本棚が届いて、その組立に時間を使ってしまった。詳細は別館で。これで少しは本の収納能力が増えたのだから、もう少し本を整理したい。ただ、本棚に突っ込んでおくだけではなく。

 本棚を眺めてゐたら、Eric Papeという挿絵画家の絵が入ったアラビアンナイトを見つけた。あまり有名な挿絵画家ではないやうだ。どうして買ったのかはよく判らない。フランク・パペと間違へたのか。でもなかなかよい雰囲気を醸しだしてゐるのだ。この画家の絵の入った本が他にも欲しくなった。


5月4日(金)

 内澤旬子『飼い喰い 三匹の豚とわたし』(岩波書店)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店]を読み終へる。三頭の豚を飼って、屠殺して、食肉にして、皆で食べると云ふ話である。面白い。家畜を育てて殺して食べるといふのはどういふことなのかが何となく判ってくる。もちろん、自分では体験してゐないわけだが、本を読むことでその片鱗くらゐは感じ取れるやうな気がする。そして、それでも私は死ぬまで肉を喰ひ続けるのだ。
 本書には写真は一枚しかなくて、その写真には生きてゐたときの豚は写ってゐない。豚の頭骨に手を添へた著者の写真である。それが、何ともいへない味はひを醸し出してゐる。動物の頭骨に手を添へる人はなかなかゐない。動物の頭骨といって私の頭に浮かぶのは村上春樹『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』に出てくる一角獣の頭骨である。一角獣の頭骨を磨いて手を添へて夢を読む。さういへば、『飼い喰い』に登場する三頭のうちの一頭の名前は「夢」だ。

 一時期はマンションの一室で飼へないかと考へたところがすごい。

 そんな訳で村上春樹『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』は八割くらゐまで進んだところ。記憶に残ってゐる以上にやみくろから逃げる話は長く続いてゐた。闇が意外にもホジスン的であった。ただ、登場人物の雰囲気がまったく違ふ。

 書棚にカーテンをつけるならカーテンレールが要るではないかといふことに気づき、早速Amazon.co.jpに角型伸縮カーテンレール 3mシングル (ブラウン)を註文した。<./p>

 明日は本棚が一つ届く日。緊張して今夜は眠れさうにもない……といふほどでもない。


5月2日(水)

 マーカス・ウォールセン『バイオパンク DIY科学者たちのDNAハック!』(矢野真千子訳/NHK出版)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店]読了。大学や企業の研究室ではなく、自宅で分子生物学実験を行なはうといふ人々のわくわくする感じが伝はってきて楽しいとはいへ、期待したほどでもなかった。残念ながら。遺伝子を操作するとはいっても、検査検出が主で、新しい機能や能力を附与した種を作らうといふ例は少ない。実際、自宅でそこまでやるのはなかなか難しいだらう。それにそこまでやると違法になりかねない。少なくとも日本では確実に違法だ。「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」に違反することになる。この法律は、カルタヘナ議定書の実行のために制定されたものだから、同議定書の締約国に入ってゐないアメリカ合衆国ではどうなのだらう。よく判らない。
 ところで一九〇ページ付近に出てくるホモシスチンといふのは正しくはホモシステインだらう。ホモシステインからメチオニンを作るときに葉酸を必要とする。この反応の話でなければ内容に合った説明にならない。

 いろいろ予定より大幅に遅れてゐるので連休中も仕事ができるやうに必要なファイルをGoogle DriveとDeopboxに入れた。これでいつでもどこでも仕事ができる。そんなに嬉しくもないが。

 どうやらLinux用Google Driveアプリケーションも近いうちに出るらしい。iOS版もはやく出て欲しいものだ。


5月1日(火)

 マーカス・ウォールセン『バイオパンク DIY科学者たちのDNAハック!』(矢野真千子訳/NHK出版)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店]を読み始める。自宅で組み換へDNA実験をしてしまはうといふ人たちの話。まあ、そのわくわくする感じは判らないでもない。「科学リテラシーがあれば、自身の健康や自分が飲む水、食べるもの、吸う空気に対して、主体的にかかわることができます。その他、周囲の複雑な世界についても、他人まかせにせずにすみます」といふパターソンの言葉は極めて重要な指摘だと思った。

 紀伊國屋書店から、大修館書店月刊「言語」編集部『「言語」セレクション 第1巻』(大修館書店)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店]、大修館書店月刊「言語」編集部『「言語」セレクション 第2巻』(大修館書店)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店]、大修館書店月刊「言語」編集部『「言語」セレクション 第3巻』(大修館書店)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店]、デイヴィッド・バーリンスキ『史上最大の発明アルゴリズム』(林大訳/ハヤカワ文庫NF)[amazon.co.jp, bk1, 楽天, 紀伊國屋書店]が届く。アルゴリズムの本が面白さう。もちろん、言語の本もだけど。


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